2006-01-01から1年間の記事一覧

氏作。SS投稿所より。

篭絡するのは簡単だった。 権力欲なし、金銭欲なし、酒も美食も無関心、 女もさっぱりの朴念仁とのお噂だ。 そうくれば、こういう環境に好んで身をおく人物は、 知識欲の奴隷ではなかろうか。 一見穏やかで子供好きな好々爺の老僧は、 オーボンヌ修道院長と…

氏作。Part30スレより。

AOI

今日もラムザとアグリアスさんは笑顔だった。 寒い夜だというのに、揃いの踊り子の衣装ではしゃいでいる。 ラムザはまぁいつも通りだから良いとしても、 問題は酔っ払い客たちの前で腹踊りを極めんとしている聖騎士殿の方だ。 ベルベニアにほど近い、とある…

氏作。Part30スレより。

自身の胸を寝床とするアグリアスが小さな寝返りを打った事で、ラムザは目を覚ました。 土で汚れた髪の下、白い肌が見えた。 「朝まで……眠ってしまっていたのか?」 ラムザが上半身を起こすと、アグリアスも目を覚まし同じように半身を起こした。 「あ……お、…

氏作。Part30スレより。

雨音が強まる中、遭遇した神殿騎士団の小隊と交戦するラムザとアグリアス。 「命脈は無常にして惜しむるべからず……葬る! 不動無明剣!」 「青き水の牙、青き鎧打ち鳴らして汚れ清めたまえ! リバイアサン!」 五人ほどの手段がリバイアサンのダイダルウェイ…

氏作。Part30スレより。

磨羯二日、クリスマス・イブ。誰もが聖誕祭の前祝いを楽しむ中、騎士の一団が武器を手に街を回る。 「探せー! 異端者ラムザ一味がこの街に潜伏しているはずだ! あらゆる宿や飲食店はもちろん、一般家屋までも徹底的に調査、見つけ出すのだ!」 ライオネル…

氏作。Part30スレより。

聖アジョラ聖誕祭前夜。 子供達はサンタクロースからのプレゼントを楽しみに夜を向かえ、 けれど夜更かしする子にはサンタさんは来ないよと親に言われ、 期待に胸膨らませながら床に着くのだった。 サンタクロース。 純真無垢な子供の所にだけやって来る。 …

氏作。Part30スレより。

とある街とある宿。 アグリアス・オークスは宿にある庭で剣の鍛錬をしていた。 当然消耗する。体力とか消耗する。するとお腹が空く。 「むっ……小腹が空いたな。何か食べる物はないか……」 今日泊まっている宿はまさに『泊まる事』のみに特化した宿であり、 食…

氏作。Part30スレより。

とある街とある宿、ラムザの部屋にアグリアスが訪れた。 「ラムザ。部隊の装備品の件で話が……ラムザ?」 机の上で何かを布巾で磨いていたラムザは、アグリアスの呼びかけに気づき振り向いた。 「あ、アグリアスさん。何か御用ですか?」 「ああ。装備品の件…

氏作。Part30スレより。

某月某日 天気/悪く無い 隊の士気/ゼッコーチョー 俺の調子/まあまあ リボンが手に入った。貴重な装備品に、隊の士気も上がっている。 「これで混乱したアグ姐の一撃を喰らわなくて済むのか」 と言ったムスタディオはアリシアに殴られて半泣き顔だし、 「…

氏作。Part30スレより。

酒場。酒場である。情報収集や儲け話のために寄る事もあるが、基本的に酒場である。 飲め! 酒!! 酒場なんだから当然飲むべきである。未成年でないのなら注文すべきである。 それなのにこの青年、とっくに二十歳すぎてるくせに何を言いのたまいますか。 「…

氏作。Part30スレより。

「私はおまえを信じる!」 …あの言葉は本心だった。 そう、ほんの少し前まで、私の中に存在した確固たる本心だった。 「どうしたんですか? アグリアスさん?」 その男の声は、いつものように穏やかで、まるでそこが戦場であることを忘れさせるような、 とて…

氏作。Part30スレより。

いきなりだがまず状況説明をすませとこうか。 ラムザとアルマはボコを連れて鴎国に渡った。たまに手紙を出してくる。 メリアドールは神殿騎士団の内部改革をしている。たまに手紙を出してくる。 ベイオウーフはレーゼを連れてハンター稼業に戻った。たまに手…

氏作。Part30スレより。

疲れきった体でドグーラ峠をようよう越えた矢先にキングベヒーモスに出くわしたのは 災難だったが、オルランドゥ伯のおかげで何とか撃退できた。 「ザーギドスでの楽しみができたぜ。いやいや、角はもっと根元から切るんだ。 太さで値段が決まるんだから」 …

氏作。Part30スレより。

視線を感じる。それも非常に熱いものを。 悪意や下心は感じないのでほうっておいたが、 やはりどうにも気になって仕様がない。 憧れの目線は知っている。同性、異性をとわずアグリアスに憧れる者は多い。 値踏みする目にさらされた経験もある。 小娘のくせに…

氏作。Part30スレより。

嬉しかった。 王家直属のルザリア聖近衛騎士団に入隊できた事が。 嬉しかった。 名誉ある王女オヴェリア護衛の任務を受けた事が。 嬉しかった。 憧れのホーリーナイト、アグリアス・オークスの部下になれた事が。 嬉しかった。 ラムザ・ベオルブと共に歴史の…

氏作。Part30スレより。

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「今さら疑うものか! 私はサンタを信じる!!」 アグリアス様がそんなことを言い出したのは、聖アジョラの聖誕祭の日のことだった。 私は今でもその時のアグリアス様の、めったに無いほど上気した顔を覚えている。 そのころの私たちは異端者の一味として追…

氏作。Part30スレより。

秋から冬へと変わる季節、ただでさえ風邪を引きやすい時期。 王女オヴェリアの窓の鍵がふとしたきっかけで壊れ、誰もそれに気づかず、 夜になってオヴェリアが寝静まってから夜風が強まり、 窓がキィと音を立てて開き寒風を室内に呼び込んでしまった。 結果…

氏作。Part30スレより。

ぎゅわん、と、重金属の塊がわたしたちめがけて突っ込んでくる。 曇天模様の雲を切り裂き、はるか天上から。 そう、そうくるの。あなたもなかなかガンコですこと。 「はいっ、ラムザ、こうたーい♪」 ラムザのでっかい背中を盾にしてわたしは引っ込む。 「う…

氏作。Part30スレより。

旅とか戦争は非常に長く続くものだ。 特に旅。酒場で仕事を探して財宝ゲットしたり秘境発見したり。 あと養殖。豚をはじめ、ドラゴンとかヒュドラとか、色々繁殖させて密漁して。 そんなこんなで色んな事を長い年月積み重ねて、ラムザ一行はすごいパーティー…

氏作。Part30スレより。

ここは、逃亡生活もかなり長くなってきた異端者ラムザ隊の宿泊する宿である。 このごろはさすがに教会の追っ手も見かけなくなってきたような気がするが、しかし 油断は禁物ということで、ひとつの町に長くとも二日しか逗留しないという暗黙の了解が 守られて…

氏作。Part29スレより。

ムスタディオは、きっちり一年分の記憶と歴史がなかった。 身に着けていたものは武器を含めてぜんぶあの日のままだった。 まさに、あの爆発の直後に工房の仮眠ベッドに姿を現したことになる。 そして、わたしが戻ってきたのがその二年後ちょっと過ぎ。 おか…

氏作。Part29スレより。

「なあ、ホントに今日出発でいいんだよな?」 「ん」 新年を過ごしたガルテナーハ一族の村から船旅で戻って日も浅いまま、 荷を解かずそのままわたしたちは新しい旅支度をする。 「あのさ、リリが確信してるのはいいとして、 その日じゃなかったらどうするん…

氏作。Part29スレより。

ラムザのアホ毛がピョコンと跳ねた。こういう時は、彼の視線を追うと大抵……居た。 育ちの良さそうな町娘、貿易都市ウォージリスらしく、彼女の髪飾りにはどこかしら異国情緒を感じ、 そしてそれがまた似合っている。 線の細い、けれど良く通る、綺麗な声を出…

氏作。Part29スレより。

「アグリアス!」 「私の名前をもう呼ばな・・・!」 今にも崩れ落ちてしまいそうなかすれた声は、 声の主ごと男の胸に抱きとめられて尻切れに終わる。 「ラムザ!」 ようやく男は自分の名前を呼んでもらえるものの、 渾身の力で突き放される。 「貴方はずるい…

氏作。part29スレより。

「おじいちゃん!!」 突如として飛びついてきた娘の声は、 あまりにも彼の妹の若いころの声と似ていた。 そしてこの子の瞳は、彼女とまったく同じ、 ちょっとだけ緑がまじった南国の空のようないろ。 まさか、と思いながらもかすかな期待を否定できない自分…

氏作。Part29スレより。

養母が教えてくれた、 美しい彼女にとって生涯ただ一度の恋のおはなし。 きのう、おなじ女である自分に、 はにかむような表情で聞かせてくれた物語。 唯一のひと、身も心も赦し愛した男性は最期の戦いから帰ってこなかったこと。 せめて季節が一巡するくらい…

氏作。Part29スレより。

ちょっと緑がまじった深い青い南方の空は、 わたしとおかあさんの目の色と同じいろ。 どこまでも続く背が高いひまわりの花は、 わたしが大好きなおかあさんの髪の毛と同じいろ。 わたしとおかあさんはおそろいの帽子を被ってどこまでも歩いていくの。 木陰で…

氏作。Part29スレより。

異端者ラムザ・ベオルブには多額の懸賞金が掛けられている。当然、その首を狙う輩も多い。 今日も今日とて、彼等のキャンプには賞金稼ぎがやってくる。その命、直ぐに散らす事になるとも知らずに。 シドルファス・オルランドゥ、雷神シドと恐れられたのは過…

氏作。Part29スレより。

轟々と降る雨の中、金色のきらめきが雨水を垂らして駆けていた。 それを発見したラムザ一行。 「あ! あれはライオネル城で別れたアグリアスさんだ。敵に追われている!? みんな、アグリアスさんを守るんだ! 行くぞッ!」 銀色のミスリル装備をしたラムザ…

氏作。Part29スレより。

「ラムザ、いるか? 入るぞ」 とある街のとある宿のとある夜、アグリアス・オークスがラムザの泊まる部屋を訪れた。 無用心にも鍵が開いていたので、勝手に入らせてもらう事にする。 「すまない、今日の戦闘で借りたカオスブレイドを返し忘れた。 明日は見習…