2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

氏作。Part31スレより。

放棄された要塞は、表立つ進軍のできない旅団が、嵐を凌ぐのには適していた。 自分以外は誰もいない、明かりの消えた会議室で、アグリアスは、腕を組み、壁に凭れていた。 既に失われた責を務める、古びた要塞を、強い風雨が叩いている。 嵐の中を無理矢理に…

氏作。Part31スレより。

扉を開けて部屋に入ると、ラムザが、なにやら面妖な工作をしている。 「なんですか、アグリアスさん?」 椅子に座ったまま上半身を捻ってこちらを向き、ラムザが訊いてきた。 「茶を入れた」 持っている盆の上の、湯気を立てる茶碗を、顎で示す。 「ありがと…

氏作。Part31スレより。

その祠は、人の干渉から逃れるように、森の深くにあった。 「取り敢えず、内部へ入ってみましょう」 「ああ」 ラムザの案に賛成し、アグリアスは、祠の扉を慎重に開けた。 石の擦れる重々しい音が終わると、封じられていた過去の空気と、現在の空気が、混じ…

氏作。Part31スレより。

もう一度めぐり合えたチャンス。 それでも抱かねばならない絶対的な絶望と後悔。 もし運命を司る神というものがあるのなら、それはきっととても残酷で冷徹。 やり直しなんていう都合のいい話に慈悲を与えず、さらなる悲劇を呼び寄せる。 ああ、神よ。運命と…

氏作。Part31スレより。

暗い部屋は、外の喧騒から隔絶され、闇の優しさを与えてくれていた。 寝台の感触は心地の好いものであったが、澱む思惟が、呼吸音と耳鳴りさえ苛立ちに換え、眠ることを妨げた。 仲間たちは、それぞれ、思うままの休日を過ごしているのだろう。 だが、アグリ…

氏作。Part31スレより。

202

「あたたたたたたたた!」 20代も中盤に差し掛かったお姐さんが部屋で剣を振り回して暴れている。 「ちょ、アグリアスさん何してるんですか!?」 「止めるな、ラムザ!・・・フフフ、おまえはもう、氏んでいる・・・・」 「誰かアグリアスさんを止めて〜!」 『タイ…

氏作。Part31スレより。

「驚いたでしょう? 髪が真っ白になってしまって……。 神殿騎士団に誘拐され、お兄さん達をみんな喪い、どれほどの苦労をしたか。 でもここにいる限りアルマは安全よ。それにアグリアスも来てくれた。 本当によかった……何もかも失ってしまったと思ったけれど…

氏作。Part31スレより。

五感を失い、漠然とだが、肉体だけがそこに在るとアグリアスは感じていた。 肉体を見下ろす精神。肉体と精神が一致しない違和感。 次第に精神が肉体という器に引っ張られ、中に引きずり込まれる。 精神と肉体が完全に一致した瞬間、アグリアスは覚醒した。 …

氏作。Part31スレより。

「オノレ……一度ナラズ……二度マデモッ!」 聖大天使アルテマの巨躯から、光が放たれる。爆散の前触れである。圧倒的な 魔力を誇る大天使も、ラムザと仲間達の猛攻にさらされ、ついに力尽きようとして いた。しかし―― 「コノママデハ終ワラヌ! 貴様ラモ、道連…

氏作。Part31スレより。

王妃オヴェリア死去。 そのニュースは瞬く間に畏国中へと広がった。 耳をふさがずとも畏国に住まう者なら必ず耳にした。 素性を隠し国を流浪する旅人にも。 リターン1 嘆き 貿易都市ザーギドスの古宿にアグリアス達は泊まっていた。 二日前から降り出した雨…

氏作。Part30スレより。

強くて綺麗で自分の考えがあって、誰にも頼らなくても生きていける。 そういう女だと周囲の誰もが思っていたし、アグリアス自身もそう生きてきた。 修道院の礼拝堂に控えていた女騎士は、海千山千のガフガリオン相手にも退かなかった。 カネを出すのはこちら…

氏作。Part30スレ時にSS投稿所へ投稿されたもの。

「今さら疑うものか! 私はおまえを信じる!!」 戦場で土埃と返り血にまみれてなお、彼女は美しかった。 いまは土に還ってしまったひと。永遠に失ってしまったひと。 彼女に笑みを返したかった。駆け寄って抱きしめたかった。 初めて出会ったときから愛して…

氏作。Part30スレより。

「ラヴィアン、確か午後から買い物に出ると言っていたな?」 革鎧のつくろいをする女騎士ラヴィアンの背後から、声をかけてくる者がいた。 振り向くまでもなく、声で誰かはわかっている。ちょうど手首の合わせのむずかしいところに かかっていたので、ラヴィ…

氏作。Part30スレより。

・ ・ ラム「明けましておめでとうございます、アグリアスさん」 アグ「フンフーン♪フフフンフーン♪フルルンフンルンルルルルルルン♪ …ハッ!!」 ラム「年の初めからまた、わかりやすいぐらいの浮かれっぷりですね」 アグ「おやっ、これはこれはラムザじゃないか!あけましておめでとう!」…

氏作。Part30スレより。

白銀の光を剣に宿し、闇夜ごと魔物を斬り裂く。 魔物の断末魔の悲鳴は、傷口に染み、アグリアスは顔を顰めた。 癒しの呪文を唱えようとしたが、頭痛にふらつくはめになった。 剣を鞘に収め、髪を掻き上げ、重い息を吐く。 味方も苦戦していたものの、負けは…

氏作。Part30スレより。

一人遊ぶは誰が為? 我がためか、彼が為か、あるいはそれに意味など無いか。 死より恐れるものはある。それは…。 夜は好きだった。 目を開ければ、懐かしい顔が見える。笑顔が見える。泣き顔も見える。 かけがえの無い日々が、目の前に浮かぶ。だから、夜と…

氏作。Part30スレより。

風に髪を靡かせ、アグリアスは曇天を見上げていた。 空を覆う雲は、決意を蝕んでくる。 剣では斬り払えない惑いは、身に纏った武装よりも重かった。 オヴェリアを政争の具から解放すること。闇に蠢く邪なものたちの企てを破ること。 自らに課した責務は、遅…