2007-01-01から1年間の記事一覧

氏作。Part37スレより。

金牛の25日。 皮肉なまでに蒼い晴天。流れる雲は心なしか早足だった。 戦争は終わったのだ。このイヴァリースの地に深いつめあとを残した、長きに渡る獅子戦争の終結は、 多くの人々に笑顔を取り戻させ、安寧の平和の日々へと歩ませている。 教皇フューネラ…

氏作。Part37スレより。

「暑いな」 初夏。太陽の季節。 頭上で猛威を振るう丸顔を、ラッドは忌々しそうに手で遮った。 「暑いね」 彼の呟きに同調したアリシアも、やはり同じように手を額に掲げている。 「疲れた?」 「ううん…」 ラッドが気遣うと、アリシアは笑顔で首を振った。…

氏作。Part37スレより。

五人がバリアスの谷の外れにある、粗末な木賃宿に落ち着いた時には、 日もすでに暮れかかっていた。 「あー、疲れた。アグリアスさん、なんかメシ作ってくれよ」 ブーツを脱ぎ捨て、ベッドに体を投げ出すようにしてムスタディオがうめく。 ウォージリスで待…

氏作。Part36スレより。

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「あの、アグリアスさんはこの戦いが終わったらどうするつもりですか?」 先ほどまでの熱い情事の余韻を残した甘ったるい空気が残る中、突然ラムザに聞かれ、 私は何も漠然としたヴィジョンを持っていなかったことに改めて気づかされた・・・。 「そうね・・・特に…

氏作。Part36スレより。

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オーボンヌ修道院・・・歴史の表では決して語られない真の英雄が最後に戦った舞台。 久方ぶりの晴天に修道女達は沢山の洗濯物を干している。 そんな中、一人の年取った修道女がゆっくりと建物から出てきた。 それに気がついた一人の修道女は急いで彼女の元に駆…

氏作。Part36スレより。

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神殿騎士団との決戦は熾烈を極めた。 戦闘に参加したものは持てる力を遺憾なく発揮しあい、まさに剣技と剣技、魔法と魔法のぶつかり合いとなった。 しかし、戦闘において最も大切なファクターの一つが最後に戦ってからどれだけ時間が経ったかである。 戦いの…

氏作。Part36スレより。

434

もうすぐ最後の決戦場となるオーボンヌ修道院への突入に備え、 ラムザは最も近い町、貿易都市ドーターのなじみの酒場でにて英気を養おうと宴を催した。 (もうすぐ長く苦しかった戦いが終わり、自分達の努力が実る!) そう願ってか思ってか隊員の中からはハ…

氏作。Part36スレより。

バリアスの谷でアグリアスからもたらされた情報を元に、オヴェリアを救出に向かうための 準備を整える為に、 一旦ウォージリスに戻ったラムザ一行。 物資の調達を終えて、英気を養う為に各々宿へ向かう者や酒場へ向かう者がいるなかで、 合流を果たしたばか…

氏作。Part36スレより。

緩やかな白銀の軌跡を描く剣が、闇夜を彩る。 「ふ……」 舞踏を終え、アグリアスは軽く息を吐いた。 「踊ることでさえ剣に頼るわたしは滑稽だろう?」 アグリアスが苦笑して告げると、広葉樹の陰から、ラムザが拍手をしながら現れた。 「いいえ。綺麗です」 …

氏作。Part33スレより。

「すみません、一人にしてください。――半日でいいですから」 ラムザはそう言うと、宿の自室に篭ってしまった。 無理もなかった。ルカヴィと化したとはいえ、実兄たるダイスダーグを手にかけて しまったのだから。 かてて加えて、ラムザがもっとも信頼してい…

氏作。Part33スレより。

「えーっと、雑貨屋はこっちでいいんだっけか?」 「この街も久しぶりだけど、あんまり変わってないわねー」 街の喧騒の真ん中で、旅人らしき三人の男女が町並みをきょろきょろと見回している。 「あまりきょろきょろするな二人とも。不審がられるぞ」 「大…

氏作。Part33スレより。

彼女はまさしくあの女(ひと)の再来であった。 容貌や声のことをいっているのではない。魂が同質だった。 尤も、あのひとにしろ彼女にしろ、 誰にもよりかからず凛と一人立つ女性ゆえそのような言われ方は好まれまいが。 今にいたるまでオヴェリア様の護衛…

氏作。Part32スレより。

【 はだかの王様 】 アグリアスさんとラムザさんは村一番のおしどり夫婦。 その日は二人そろってふもとの街へでかけました。 久しぶりのお出かけにご機嫌のアグリアスさん。 夫の腕に抱きついて、あっちこっちへ引っ張り回します。 やがて遠くの方から聴こえ…

氏作。Part32スレより。

右手に持っていたオークスタッフを、右手首を返した勢いで、縦に回転させながら、呪文を唱える。 「聖石キャンサーの力を、マジカル・ホーリー・ナイトの意志に依って行使する! 光よ、貫け! 蟹・ホーリー!」 回転させていたオークスタッフを右手に持ち直…

氏作。Part32スレより。

広葉樹の根元、アグリアスは、ラムザを庇いながら地面に座っていた。 「痛っ……!?」 アグリアスの腿の上に頭を乗せているラムザが呻いた。 「じっとしていろ」 アグリアスは、ラムザが失っていた意識を回復したことに安堵しつつ、なるべく冷静に告げる。 「ぼ…

氏作。Part32スレより。

「ラムザ! 一緒に『共同戦線』やろうではないか!」 「えー、もう1時ですよ? それに明日も早―― あ、あぐりあす、さん?」 「……そうだな。貴公は私なんかと遊んでていい男ではないよな。 うん、そうだよな。一人で舞い上がって、私は馬鹿みたいだ…」 「い、い…

氏作。Part32スレより。

「いっそ、聖石の力を行使しますか?」 「……む?」 ラヴィアンに問われ、アグリアスは首を傾げた。 午後の間食の最中だが、迂濶にも転た寝をしていたので、話を理解できなかった。 (わたしは堕落している……) 小さく嘆息するアグリアスに、ラヴィアンは、苦…

氏作。Part31スレより。

昔々、ある国のお話。 ここの王には長い間子供がいませんでしたが、ある年、とうとう王妃が懐妊しました。 王はそれを喜び、王妃もまた喜びました。 そして月が満ちると、王妃はかわいらしい女の子を出産しました。 それから数年が経ち、白雪姫と言われた女…

氏作。Part31スレより。

廊下の、曲がり角の陰に身を隠しながら、アグリアスは嘆息した。 (わたしは、なにをしているのだ……?) 胸中で、自らに問うが、思いつく答えは、くだらないものばかりだった。 要するに、自分は、くだらないことをしているのだと、アグリアスは渋々と認めた…

氏作。Part31スレより。

アグリアスの部屋の中央、アリシアが入れた茶と菓子が置かれた卓を囲み、 アグリアスは俯き、ラヴィアンは卓に両腕で頬杖を突き、アリシアは姿勢を正し、椅子に座っていた。 「おまえたちに、相談したいことがある」 アグリアスが切りだすと、ラヴィアンが、…

氏作。Part31スレより。

「アグリアスさまは、やまびこ草の花言葉を知っていますか?」 アリシアが、アグリアスにやまびこ草を渡しながら訊いてきた。 沈黙の呪詛を受け、喋ることのできないアグリアスは、首を横に振り、否定を表す。 「なあに、空想家の、甘ったるい講釈?」 から…

氏作。Part31スレより。

放棄された要塞は、表立つ進軍のできない旅団が、嵐を凌ぐのには適していた。 自分以外は誰もいない、明かりの消えた会議室で、アグリアスは、腕を組み、壁に凭れていた。 既に失われた責を務める、古びた要塞を、強い風雨が叩いている。 嵐の中を無理矢理に…

氏作。Part31スレより。

扉を開けて部屋に入ると、ラムザが、なにやら面妖な工作をしている。 「なんですか、アグリアスさん?」 椅子に座ったまま上半身を捻ってこちらを向き、ラムザが訊いてきた。 「茶を入れた」 持っている盆の上の、湯気を立てる茶碗を、顎で示す。 「ありがと…

氏作。Part31スレより。

その祠は、人の干渉から逃れるように、森の深くにあった。 「取り敢えず、内部へ入ってみましょう」 「ああ」 ラムザの案に賛成し、アグリアスは、祠の扉を慎重に開けた。 石の擦れる重々しい音が終わると、封じられていた過去の空気と、現在の空気が、混じ…

氏作。Part31スレより。

もう一度めぐり合えたチャンス。 それでも抱かねばならない絶対的な絶望と後悔。 もし運命を司る神というものがあるのなら、それはきっととても残酷で冷徹。 やり直しなんていう都合のいい話に慈悲を与えず、さらなる悲劇を呼び寄せる。 ああ、神よ。運命と…

氏作。Part31スレより。

暗い部屋は、外の喧騒から隔絶され、闇の優しさを与えてくれていた。 寝台の感触は心地の好いものであったが、澱む思惟が、呼吸音と耳鳴りさえ苛立ちに換え、眠ることを妨げた。 仲間たちは、それぞれ、思うままの休日を過ごしているのだろう。 だが、アグリ…

氏作。Part31スレより。

202

「あたたたたたたたた!」 20代も中盤に差し掛かったお姐さんが部屋で剣を振り回して暴れている。 「ちょ、アグリアスさん何してるんですか!?」 「止めるな、ラムザ!・・・フフフ、おまえはもう、氏んでいる・・・・」 「誰かアグリアスさんを止めて〜!」 『タイ…

氏作。Part31スレより。

「驚いたでしょう? 髪が真っ白になってしまって……。 神殿騎士団に誘拐され、お兄さん達をみんな喪い、どれほどの苦労をしたか。 でもここにいる限りアルマは安全よ。それにアグリアスも来てくれた。 本当によかった……何もかも失ってしまったと思ったけれど…

氏作。Part31スレより。

五感を失い、漠然とだが、肉体だけがそこに在るとアグリアスは感じていた。 肉体を見下ろす精神。肉体と精神が一致しない違和感。 次第に精神が肉体という器に引っ張られ、中に引きずり込まれる。 精神と肉体が完全に一致した瞬間、アグリアスは覚醒した。 …

氏作。Part31スレより。

「オノレ……一度ナラズ……二度マデモッ!」 聖大天使アルテマの巨躯から、光が放たれる。爆散の前触れである。圧倒的な 魔力を誇る大天使も、ラムザと仲間達の猛攻にさらされ、ついに力尽きようとして いた。しかし―― 「コノママデハ終ワラヌ! 貴様ラモ、道連…