行く人

氏作。Part31スレより。

もう一度めぐり合えたチャンス。 それでも抱かねばならない絶対的な絶望と後悔。 もし運命を司る神というものがあるのなら、それはきっととても残酷で冷徹。 やり直しなんていう都合のいい話に慈悲を与えず、さらなる悲劇を呼び寄せる。 ああ、神よ。運命と…

氏作。Part31スレより。

「驚いたでしょう? 髪が真っ白になってしまって……。 神殿騎士団に誘拐され、お兄さん達をみんな喪い、どれほどの苦労をしたか。 でもここにいる限りアルマは安全よ。それにアグリアスも来てくれた。 本当によかった……何もかも失ってしまったと思ったけれど…

氏作。Part31スレより。

五感を失い、漠然とだが、肉体だけがそこに在るとアグリアスは感じていた。 肉体を見下ろす精神。肉体と精神が一致しない違和感。 次第に精神が肉体という器に引っ張られ、中に引きずり込まれる。 精神と肉体が完全に一致した瞬間、アグリアスは覚醒した。 …

氏作。Part31スレより。

王妃オヴェリア死去。 そのニュースは瞬く間に畏国中へと広がった。 耳をふさがずとも畏国に住まう者なら必ず耳にした。 素性を隠し国を流浪する旅人にも。 リターン1 嘆き 貿易都市ザーギドスの古宿にアグリアス達は泊まっていた。 二日前から降り出した雨…

氏作。Part30スレより。

自身の胸を寝床とするアグリアスが小さな寝返りを打った事で、ラムザは目を覚ました。 土で汚れた髪の下、白い肌が見えた。 「朝まで……眠ってしまっていたのか?」 ラムザが上半身を起こすと、アグリアスも目を覚まし同じように半身を起こした。 「あ……お、…

氏作。Part30スレより。

雨音が強まる中、遭遇した神殿騎士団の小隊と交戦するラムザとアグリアス。 「命脈は無常にして惜しむるべからず……葬る! 不動無明剣!」 「青き水の牙、青き鎧打ち鳴らして汚れ清めたまえ! リバイアサン!」 五人ほどの手段がリバイアサンのダイダルウェイ…

氏作。Part30スレより。

磨羯二日、クリスマス・イブ。誰もが聖誕祭の前祝いを楽しむ中、騎士の一団が武器を手に街を回る。 「探せー! 異端者ラムザ一味がこの街に潜伏しているはずだ! あらゆる宿や飲食店はもちろん、一般家屋までも徹底的に調査、見つけ出すのだ!」 ライオネル…

氏作。Part30スレより。

聖アジョラ聖誕祭前夜。 子供達はサンタクロースからのプレゼントを楽しみに夜を向かえ、 けれど夜更かしする子にはサンタさんは来ないよと親に言われ、 期待に胸膨らませながら床に着くのだった。 サンタクロース。 純真無垢な子供の所にだけやって来る。 …

氏作。Part30スレより。

とある街とある宿。 アグリアス・オークスは宿にある庭で剣の鍛錬をしていた。 当然消耗する。体力とか消耗する。するとお腹が空く。 「むっ……小腹が空いたな。何か食べる物はないか……」 今日泊まっている宿はまさに『泊まる事』のみに特化した宿であり、 食…

氏作。Part30スレより。

とある街とある宿、ラムザの部屋にアグリアスが訪れた。 「ラムザ。部隊の装備品の件で話が……ラムザ?」 机の上で何かを布巾で磨いていたラムザは、アグリアスの呼びかけに気づき振り向いた。 「あ、アグリアスさん。何か御用ですか?」 「ああ。装備品の件…

氏作。Part30スレより。

酒場。酒場である。情報収集や儲け話のために寄る事もあるが、基本的に酒場である。 飲め! 酒!! 酒場なんだから当然飲むべきである。未成年でないのなら注文すべきである。 それなのにこの青年、とっくに二十歳すぎてるくせに何を言いのたまいますか。 「…

氏作。Part30スレより。

いきなりだがまず状況説明をすませとこうか。 ラムザとアルマはボコを連れて鴎国に渡った。たまに手紙を出してくる。 メリアドールは神殿騎士団の内部改革をしている。たまに手紙を出してくる。 ベイオウーフはレーゼを連れてハンター稼業に戻った。たまに手…

氏作。Part30スレより。

嬉しかった。 王家直属のルザリア聖近衛騎士団に入隊できた事が。 嬉しかった。 名誉ある王女オヴェリア護衛の任務を受けた事が。 嬉しかった。 憧れのホーリーナイト、アグリアス・オークスの部下になれた事が。 嬉しかった。 ラムザ・ベオルブと共に歴史の…

氏作。Part30スレより。

秋から冬へと変わる季節、ただでさえ風邪を引きやすい時期。 王女オヴェリアの窓の鍵がふとしたきっかけで壊れ、誰もそれに気づかず、 夜になってオヴェリアが寝静まってから夜風が強まり、 窓がキィと音を立てて開き寒風を室内に呼び込んでしまった。 結果…

氏作。Part30スレより。

旅とか戦争は非常に長く続くものだ。 特に旅。酒場で仕事を探して財宝ゲットしたり秘境発見したり。 あと養殖。豚をはじめ、ドラゴンとかヒュドラとか、色々繁殖させて密漁して。 そんなこんなで色んな事を長い年月積み重ねて、ラムザ一行はすごいパーティー…

氏作。Part29スレより。

轟々と降る雨の中、金色のきらめきが雨水を垂らして駆けていた。 それを発見したラムザ一行。 「あ! あれはライオネル城で別れたアグリアスさんだ。敵に追われている!? みんな、アグリアスさんを守るんだ! 行くぞッ!」 銀色のミスリル装備をしたラムザ…

氏作。Part29スレより。

「ラムザ、いるか? 入るぞ」 とある街のとある宿のとある夜、アグリアス・オークスがラムザの泊まる部屋を訪れた。 無用心にも鍵が開いていたので、勝手に入らせてもらう事にする。 「すまない、今日の戦闘で借りたカオスブレイドを返し忘れた。 明日は見習…

氏作。Part29スレより。

ネルベスカ神殿での戦いで聖石「キャンサー」を手に入れたラムザ一行。 ベイオウーフの悲願であったレーゼの呪いも解け、機工都市ゴーグへと帰還した。 天球儀を前に緊張の趣を隠せないムスタディオ。 労働八号起動の際の事件を思い出して身震いをする。 「…

氏作。Part29スレより。

ラムザです。 今、貿易都市ウォージリスにいます。貿易都市だけあって色々な品が目に止まります。 いつも戦いばかりなので今日はみんな自由行動って事にしてみました。 朝食の席で僕はラッドと一緒でした。 隣の席にはアグリアスさんがアリシアとラヴィアン…

氏作。Part29スレより。

陽射しは高く、けれど鮮烈で、地上にあるすべてのものを映し出す。 真っ青な空の下で真っ青な海が波打ち、その上を大きな帆船が駆けていた。 帆は強い風を受け、船を前へ前へと追いやる。 同様に風を受けて、彼女の日に焼けた金髪が腰の辺りで揺れていた。 …

氏作。Part29スレより。

「天駆ける風、力の根源へと我を導き、そを与えたまえ! エスナ!」 石化したラヴィアンとアリシアを治療するアグリアス。 ラヴィアンとアリシアは、アグリアスの勝利を信じていたため、勝利は当然と胸を張った。 そして未だ眠り続ける弓使いの暗殺者の手を…

氏作。Part29スレより。

ラヴィアンは対峙していた、弓使いの女と。 近づこうとすれば逃げられる。ジャンプすると回避に融通が利かず的になりかねない。 (とはいえ、このままジリ貧だと、弓で援護射撃される。イチかバチか!) 一足飛びに肉薄するラヴィアン。その直線的な機動に狙…

氏作。Part29スレより。

――闇があった。その中に、また、闇が居た。 「名前は」 「アグリアス・オークス。女だ。仲間が二人、詳細は不明」 「オークス? 聞いた名前ね」 「アレだ、異端者ラムザ一味の奴。でも死んだんだろ? 教会がそう発表した」 「暗殺の依頼が来たって事は、生き…

氏作。Part29スレより。

料理当番。人数抱えて旅をする一行に料理を得意とする者がいない場合、それは変わり続ける。 ラムザとラッドはガフガリオンの下働きをしたおかげで料理はそれなりに上手だ。 ムスタディオも独り者らしくそれなりに自炊はできる。 この前ラヴィアンが料理当番…

氏作。Part29スレより。

ゼルテニア城の教会跡。思い出の場所、悲しい場所。 行く義理はない。けれど未だ残るこの痛みを少しでも癒してくれるなら。 でも、この傷は癒えない。決して癒えない。 これからもずっと彼を苦しめ続ける、それが彼が彼女を愛していた証だから。 同様に彼女…

氏作。Part28スレより。

私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。 南天騎士団の男(名をディリータというらしい)にオヴェリア様が誘拐されたため、 私達は後を追うべく貿易都市ドーダーへ赴こうとした。 敵が待ち構えている可能性を考え、武器の手入れもしっか…

氏作。Part28スレより。

アグリアス・オークスは堅物だ。 どれくらい堅物かっていうとド田舎の深夜の赤信号でもちゃんと待つくらい堅物だ。 (赤信号なんてありませんよリアルやサイエンスじゃないんですから) そんなアグリアスだから、アウトローの仲間と、なかなかそりが合わない…

氏作。Part27スレより。

とある街のとある宿。 アグリアス・オークスはラヴィアンとアリシアの勧めで酒を飲み、いい感じにほろ酔い気分を楽しんだ。 「どうせなら、ラムザさんもお酒飲めるようになればいいのに」 「ですよねぇ。やっぱり殿方と一緒に飲むというのも、また……」 など…

氏作。Part27スレより。

手を伸ばした、けれど届かない。背伸びをした、でも届かない。 棒切れを拾って振り上げた、でも届かない。屋根に登った、でも届かない。 お姉ちゃんに訊いてみた。「どうやったら雲を掴めるの?」無邪気な笑顔で。 お姉ちゃんは訊いてきた。「どうしてそんな…

氏作。Part27スレより。

復讐……その甘美な言葉は心の隙間に忍び寄り、傷口を甘く熱く癒す。 その代償の恐ろしさを秘したまま……。 ああ、人の子よ。惑わされてはならぬ。復讐など人の手に余るものではない。 復讐の代償、その重みを実感した時はもう、手遅れなのだから。 Chapt…