氏作。Part30スレより。
旅とか戦争は非常に長く続くものだ。
特に旅。酒場で仕事を探して財宝ゲットしたり秘境発見したり。
あと養殖。豚をはじめ、ドラゴンとかヒュドラとか、色々繁殖させて密漁して。
そんなこんなで色んな事を長い年月積み重ねて、ラムザ一行はすごいパーティーになっていた。
どれくらいすごいっていうかというと、まず全員レベル99。
某レベル上げ下げ方でドーピングもしまくりです。
で、全ジョブをマスター。ゾディアークも全員習得してます。
で、レアアイテムは源氏装備以外すべて入手済み。
しかも忍者が投げてくるレア武器は全部99個集まるまでキャッチ祭りとかした。
まさに最強、地上最強のパーティーである。
そこまで鍛え上げるのにかかった年数を計算するとだいたい10年近く経っていた。
そして迎えた巨蟹宮一日。
ラムザ一行の一軍、ホーリーナイトを務めるアグリアス・オークス。
30歳の誕生日です。
「――という訳で、ハッピーバースデイアグリアスさん!」
数多のバトルを繰り返し腐るほどお金を稼いで、刀全種99本購入しても余るほどの彼等は、
盛大にアグリアスの誕生パーティーを開いた。
まず高級ホテルを貸し切った。
垂れ幕にデカデカと『30歳おめでとう』と書いて会場に飾った。
そして色とりどりのディナーが並ぶ中、紅い薔薇の花束を受け渡されているアグリアス。
その笑顔、なぜかぎこちない。
だって、何か気の毒そうな笑顔を向けてらっしゃる方がいますもの。
特に女性陣から。
嗚呼……30にもなって未婚って、何ですか。婚期逃しまくりですか。
女盛りもそろそろ終わりを迎える年頃です。
歳の近いメリアドールとはお互い涙したりもした。2年後には彼女も仲間入りです。
ラファあたりは成熟した女性の魅力にあふれているものの、
やはりそろそろ歳を取る事に焦りを感じてきている。
ラヴィアンとアリシアも後数年で30歳だ。
野郎共はそんな乙女心を気にせず酒盛りを始めている。デリカシーの無い連中だ。
クラウド何かは精悍に成長した面持ちで「早く帰りたい……」と夜空を見て泣いている。
女性で一番年長のレーゼは未だ20台で通用する瑞々しさを持っていて不思議だ。
だから、レーゼと並んで年上に見られてしまうと屈辱だ。
だから最近アグリアスやメリアドールはレーゼの隣には立たない。
「いやぁ、それにしても終わらねぇなぁ。戦争」
「ホントホント。何年内輪もめやってりゃ気がすむんだか」
「そういや神殿騎士団の連中、オーボンヌ修道院で五年以上も何してるんだろうな」
「オーボンヌ修道院かぁ……懐かしいわね。ラムザ様とラッドに出会った思い出の場所よ」
「もうどんな所だったか思い出せないわ。あっはっはっ」
どうでもよさげに語り合う面々を見て、アグリアスは頭痛を感じた。
こんなノリだからいつまで経ってもオーボンヌ修道院に行かなければならない重要性を、
全力投球で忘れているのだ。
昔はルカヴィが出るたびに大騒ぎだったのに、今じゃルカヴィなんてただの雑魚扱い。
あんなのが12匹くらいいてもたいして問題無くね? とか、抜かしやがるのですよマラークあたりが。
それにアグリアス含め全員同意しちゃうから余計に困ってしまう。
だってルカヴィなんてアグリアス一人で軽く捻り殺せるんですもの。
99個集まったリボンひとつと、99本集まったエクスカリバー一本で戦場に出れば、もう負け無し。
実際はエスカッション(強)とかカエサルプレートとかベネチアプレートとか、
マクシミリアンにロードオブロードとラバーコンシャスも完備して、
香水特にシャンタージュなんかも99個集めちゃってますもので、
最強装備なんかした日にゃあルカヴィも裸足で逃げ出すってもんですよ。
「トホホ……こんなノリでいつまで我々は旅を続けるんだか」
「まあまあアグリアスさん、それなりに楽しくやってるんだからいいじゃないですか」
ラムザが気楽に慰めてくる。
出会って数年は互いのちょっとした仕草にときめいたりもしたけれど、
こう何年も連れ添っていると家族同然というか姉弟同然というか……。
何かもう『お互いをよく知りすぎていて恋愛感情まで発達しない幼馴染み』みたいな感じですよ。
結局パーティー公認のカップルはベイオウーフとレーゼだけですよ。
ラッドとアリシアが妖しい関係だという噂が流れた時もありましたが真相は闇の中ですよ。
もう恋愛沙汰とかやれる雰囲気じゃないんですよ。
アグリアスさん的にはその辺ちょっと悲しいんですよ。
一時は「この戦いが終わったら結婚しよう」な死亡フラグ的なもんも立ててたんですよ。
でもこの戦いいつまで経っても終わる気配が全然ちっとも微塵も無いんですよ。
「なあラムザ、なぜ我々はこんな旅を続けているのだろうな」
「さあ、何ででしょうねえ」
「アルマ様はご無事だろうか」
「僕の妹なんだから無事に決まってますよ。ルカヴィが出てきてもちょちょいのちょいですって」
「貴公は気楽でいいな」
「ははは。ディープダンジョンで100時間くらいずーっと戦ったり密漁したりしてるうちに、
心を楽にする方法に目覚めちゃいましたので。あはははは」
「そうか。ところでだなラムザ、私達ももういい歳なんだし……そろそろ……」
「そろそろオーボンヌ修道院行きましょうかねぇ……」
「…………そうだな……」
という訳で、アグリアスの誕生会の後、ようやく一行はオーボンヌ修道院へ到着。
そこではアルマが教会の人達と平和なティータイムをすごしていた。
「あら兄さん、お久し振り」
「ああ、アルマ。久し振りだね」
一緒にお茶を楽しむラムザ。他の面々も席に招待される。
困惑しながらアグリアスはアルマに訊いてみた。
「ちょっ、アルマ様……神殿騎士団はどうしたのですか……」
「んー、一人で延々マバリア唱えたりしてレベルを上げてるうちに、
あまりにも長々と機械的にレベル上げしていたせいか、
何か急にアルテマという魔法に目覚めちゃって、
それで神殿騎士団を三年くらいかけて掃討して、
去年からここで下働きに使っているわ」
と、そこに茶菓子として焼き立てのクッキーを持ってくるヴォルマルフ。
「お嬢様、どうぞお召し上がりを」
「ありがとうヴォルマルフ」
それを見てメリアドール呆然。そんな娘にヴォルマルフは語る。
「10年近くも時が流れれば人も変わるというものだ……」
「そうですか……」
そしてその日の夕刊でオリナス王子が戴冠したというニュースが報道されたりしました。
獅子戦争終了、ディリータは王女オヴェリアというカードを失って普通に失脚しましたとさ。
めでたしめでたし。
「ラムザ、我々の旅と戦いはいったい何だったのだろうな」
「極めプレイみたいなもんでしょうかねぇ……」
「8年くらい前に普通にオーボンヌ修道院に行ってたらどうなってただろうな」
「想像もつきませんねぇ……」
「そうだな……うう、私の春は無駄に終わったという事か……」
「じゃ、そろそろ結婚します?」
「え」