氏作。Part30スレより。





雨音が強まる中、遭遇した神殿騎士団の小隊と交戦するラムザアグリアス
「命脈は無常にして惜しむるべからず……葬る! 不動無明剣!」
「青き水の牙、青き鎧打ち鳴らして汚れ清めたまえ! リバイアサン!」
五人ほどの手段がリバイアサンのダイダルウェイブに押し流される。
本音を言えばラムウを使いたいが、雷雨ではないため雷を使えば居場所が知れてしまう。
そのためアグリアスも無双稲妻突きのように目立つ技は使えなかった。
「ハァッ、ハァッ、アグリアスさん……MPがそろそろ限界です」
「解った。……むんっ、チャクラ!」
アグリアスの力強い気が二人の消耗を回復する。
冷たい雨の中、チャクラのぬくもりが心地よかった。


   聖夜―HOLY NIGHT―
   中編 クリスマスに雪は降らない


聖アジョラの第一使徒であるバリアスが帝国の追手から逃れるために隠れた不毛な谷。
異端者ラムザアグリアスは、神殿騎士団の追っ手から逃れるため、
今まさにその因縁深い谷に隠れていた。


捜索隊と思われる一団に見つかり、仕方なく殲滅させた。
目立たぬよう技と魔法を選んでの戦いと、人数の差により、二人は酷く消耗してしまった。
そして雨雲の中から地平へと太陽が沈み、バリアスの谷は完全な闇に落とされる。
そんな中、広大な谷の一角、木々の影に小さな洞穴が隠れていた。
アグリアスが単身ライオネル城から逃げ出した時発見したものだった。
「ライオネルからの追っ手が迫るまで、私はここで雨をしのぎ休息を取っていた。
 ここを出てすぐ敵に見つかってしまったがな……。
 木立が視界の邪魔をしてくれるから焚き火を焚けるぞ」
「そうですね……雨と川でびしょ濡れ、それにこの気温……風邪を引くのは時間の問題か」


こうして追っ手から逃れた二人は、追っ手達がゴルゴラルダに向かってくれた事を祈りつつ、
焚き火の支度を始めた。が、すでに枝や葉は雨で湿り、焚き火の役割を果たせずにいた。
大人が寝そべると足が出てしまうような浅い洞穴に、
濡れたままの二人は身を縮ませて座り込み、身を震わせた。
「……このままでは冷えて体温を奪われてしまう。
 アグリアスさん、鞄に毛布がありましたね? 出しましょう」
「あ、ああ。しかし……私の鞄は、川を渡る際の戦闘で水に一度浸かってしまっている。
 毛布は……やはりか、すっかり湿っていて使い物にならん」
「じゃあ、使える毛布は僕の一枚だけか……アグリアスさん、こっちへ」
毛布をまといながら、ラムザアグリアスの肩を抱いて寄せた。
「あ、ああ。すまんな……」
毛布のぬくもりを感じながらも、アグリアスは未だ寒さに震えている。
額に張りつく濡れた前髪を横にのけたアグリアスは、
自分の長い後ろ髪がじっとりと毛布を湿らせ出している事に気づき、毛布を振り払った。
「駄目だ。こんなに濡れた状態で毛布に包まっては、毛布まで濡れてしまう」
「しかし、このままという訳には……」
ラムザは自分の肌に張りつく服の鬱陶しさに苛立ちながら、洞穴の外を降る雨に目を向ける。
雨は一向に止む気配は無い。残念ながらホワイトクリスマスすら迎えられなかった訳だ。
「……クシュンッ」
アグリアスのくしゃみを聞き、ラムザは身体を冷やす一番の原因を口にした。
「今は……濡れた服では、体温を奪われるだけです」
「なっ……ぬ、脱げというのか?」
「こう真っ暗なら、何も見えませんよ」
「しかし……うむ、そうだが……わ、解った」
「剣を洞穴の壁に刺して、物干し竿にしましょう。先に脱がせていただきます」
言って、ラムザは呪縛刀二本を壁に刺すと、びしょ濡れの黒装束を脱いでそれにかけた。
真冬の低温がじかに肌に触れ、ラムザは一瞬ゾッとしたが、濡れた服のままよりはマシだと思い直した。
「さあ、アグリアスさんも」
「う、うむ。……壁を見ていろよ」
「だから、こう暗くっちゃ見えませんって」
一人先に毛布をかぶり、そのあたたかさと素肌に触れるくすぐったさににラムザは安堵を覚えた。
「毛布、あたたかいですよ」
「そ、そうか……」
暗闇の中、ラムザが服を脱ぐ姿は確かに見えなかったが、
濡れた服が脱ぐ過程で生じる水音がやけに大きく感じられた。
自分が脱ぐ時も同じような音がして、脱いでいる様をラムザに聞き取られるのだろうかと思うと、
恥ずかしさに頬が染まり、どうせならこのまま体温が上がって服を脱ぐ必要が無くなればいいのにと思う。
だが、そういう訳にもいかず、アグリアスは恐る恐る黒のローブに手をかけた。
濡れたローブが肌をする感触が気持ち悪い。しかし、鼓動が高鳴る。
黒のローブを脱いでから、アグリアスはまだ剣を壁に刺してなかった事を思い出し、
ローブを膝の上に置いて、アイスブランドを壁に突き刺した。
そして物干し竿の代用品となったアイスブランドに黒のローブをかける。
それから、濡れて胸にぴったりと張りついたさらしを解きアイスブランドにかける。
続いてゲルミナスブーツを脱ぎ、それを引っくり返して靴底に溜まっていた水を出すと、
自分の足元に置いて今度はズボンに手をかけ、ついにショーツ一枚となってしまう。
ショーツもやはりぐっしょりと濡れて、お尻のラインまで解るほど張りついていたが、
さすがにこればっかりは脱ぐ事をためらわれた。
「ぬ……脱いだぞ」
ラムザに胸が触れないようにと、アグリアスは胸の前で腕を組んだ。
するとすぐラムザアグリアスをあたためるため、毛布を広げてアグリアスの肩を抱く。
「ん……あたたかいな」
毛布のあたたかさより、ラムザの冷えた手や脇腹が自分の肌に密着する感触に気持ちが集中する。


「すみません。一人用の毛布ですから、くっつかないと……」
「う、うむ。解っている」
アグリアスも、逃げてしまっては迷惑だろうと思いラムザの腕の中に入り、抱かれる形となった。
「…………」
「…………」
雨音だけが響く。人の気配は、隣にいる人物のみ。呼吸が、鼓動が伝わる。
それが次第に高鳴っていくのを、二人は互いに感じ取っていた。
「ん……」
風向きが変わったのか、わずかに洞穴に差し込んだ雨粒を避けてアグリアスは身をよじった。
すると、ラムザの身体の正確な位置がつかめなかったために、
覆っていた右胸の上半分がラムザの胸に触れた。
刹那、アグリアスは身を引いた。
「す、すまん」
「あ、いえ……離れちゃ寒いですよ」
暗闇の中、アグリアスに手を伸ばすラムザ。それが彼女の頬を撫でた。
ラムザの指の感触にビクンと身体を震わせ、アグリアスは胸を押さえていた腕を下ろした。
刹那、雷光。
互いの裸身が、互いの瞳に。
「あぐっ、うあ……」
小さな悲鳴を上げて、アグリアスは自分の胸を抱きしめてうずくまった。
ラムザは刹那の間にまぶたにまで焼きついた光景に生唾を飲み込む。
「あ、アグリアスさん……」
続く雨音。ラムザが再びアグリアスに手を伸ばした途端、それを制止するように雷音が遅れて響いた。
慌てて引っ込めた手が、偶然アグリアスの肩にかかり引っ張り寄せる形になってしまった。
「あ……」
「キャッ……」
アグリアスらしくない女らしい悲鳴と共に、彼女の体温が胸の中に飛び込んでくる。
「あ、アグリアス……さん……」
「ラ、ムザ……」
互いの吐息を求め、暗闇の中で首を動かす二人。吐息同士が触れ合う場所を見つけ、二人は固まった。
ドクン。ドクン。ドクン。雨音より、雷鳴より、響く心音。
吐息が――ふさがれる。
唇から伝わる互いのあたたかさ。
自らキスをしたのはラムザだったのか、アグリアスだったのか、本人同士にも解らなかった。
もしかしたら二人同時に唇を寄せたのかもしれない。
「むぐっ……ん……」
「ちゅぷっ……んむっ、ふあぁ……」
互いの吐息を交換し合う中、ラムザアグリアスの肩を、今度は自らの意思で抱きしめた。
「んんっ……」
いっそう唇を強く押しつけられ、アグリアスはうめいた。
柔らかな双丘がラムザの硬い胸元に挟まれてグニャリと潰される。
ラムザは空いている左手でアグリアスの頬を撫で、もう一方の右手は肩から腰のくびれへと落ち、
そして後ろに回り桃のよう美しくに割れた柔肉を鷲掴みにする。
「んあっ……!」
唇が離れる。直後、呼吸を忘れていた二人の息遣いが荒れる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……アグ、リアス、さん……」
「はっ、はっ、は……ら、ラムザ……」
頬を撫でていた左手が、涙のように頬を伝い落ち、あごから首へ、鎖骨へと流れ――。


「あっ……」
ふくらみを掴んで、狭い洞穴の中に押し倒す。
アグリアスの背中に、髪越しではあるが冷たい地面の感触が伝わった。
「ぼ、僕は……」
ラムザ……今日は、クリスマスイブだったな……」
アグリアスの手が、ラムザの頬に伸び、優しく包んで引き寄せる。
「私からの……プレゼント、受け取ってくれ……」
「…………はい……」
尻肉を掴んでいた右手が、冷たく濡れたショーツを膝まで引きずりおろす。
アグリアスの手に引き寄せられたラムザの唇が、アグリアスの唇に再び触れた。
直後、ラムザの舌が唇を割って入り、アグリアスの歯茎を舐めた。
「んあ……」
思わず身をよじり、膝を立てた拍子にショーツが足首にまでストンと落ちる。
アグリアスは口を開き、ラムザの舌を迎え入れ、己の舌を絡めた。
「あむっ……んちゅ、あふっ……ラムザ……来て……」
夜の闇、雷雲の闇、洞穴の闇、深い闇の中で、二人はひとつになった。
時折起こる雷光により、感情を抑え込むようなラムザの顔が、切なそうにあえぐアグリアスの顔が見えた。
クリスマスイブに雪は降らず、雨と雷が鳴り響く中、二人は結ばれた。



   to be continued……