氏作。Part36スレより。





「あの、アグリアスさんはこの戦いが終わったらどうするつもりですか?」
先ほどまでの熱い情事の余韻を残した甘ったるい空気が残る中、突然ラムザに聞かれ、
私は何も漠然としたヴィジョンを持っていなかったことに改めて気づかされた・・・。


「そうね・・・特にどうしようとか考えてはいないわ。今までは騎士として生きてきたから・・・。
騎士を辞めるなんて考えたことがなかったわね。」


「そうなんですか、じ、じゃあ・・・その・・・・僕と一緒に・・・僕のお嫁さんになってもらえませんか?」
顔を真っ赤にしながらもジッと私の目を見つめて小さい声ながらも彼は言い切った。
「・・・え、ラムザ・・・・今、なんて?」
思わずそう聞き返してしまいたい単語だった。
「こ、この戦いが終わったら僕と結婚して欲しいんです!アグリアスさん・・・いえ、アグリアス
僕と結婚してください!!」
「私、嫉妬深いから貴方が他の女性に挨拶しただけで怒るかもしれないわよ?」
「構いませんよ、僕だって十分嫉妬深いんです。お相子ですよ。」
「でも、私はあなたより5歳年上よ?それに・・・家事だって得意じゃないし・・・貴方を困らせちゃうかも
しれないわよ?」
「それでもいいんです!それに誰だって慣れない物はあります!一緒に得意になれば良いじゃないですか!」
真剣に私のことを愛してくれる彼、でも私なんかじゃ相応しくないのじゃないかという不安が消えない・・・。
「・・・でも・・・。」
「はぐらかさないでください!それとも・・・僕なんかじゃ便りがないんですか?」
なおも、弱気でいる私に対してラムザは自分が頼りないからではないかと勘違いをし出してしまった。
「そんなことないわ!貴方は私には勿体無さ過ぎるほど立派な人よ!」
「そんなこと関係ありません!僕はアグリアスという一人の愛する人と結婚したいんです!結婚してください!」
「はい・・・喜んで・・・」
結局彼の熱意と自分の気持ちに正直になることにした。
アグリアス、この世で一番愛してる・・・僕のアグリアス・・・」
「私も貴方をこの世で一番愛しているわ、ラムザ
私のそんな表情を見たラムザは再び私を求めてきた。
こうして私達はさらに幸せになった。



あれから2年の月日が流れた・・・。
結局、決戦は結果から言えば我々の完勝で終わった。
一人の犠牲もなく皆無事にそれぞれの世界に帰還していった。
私達も皆、一緒にゴーグの天球儀によって元の世界に戻れた。


「結婚に関してはお互い現在の生活に落ち着いてから」と誓ったのだが、しばらくして私とラムザ
同棲し始めた。
まぁ、無事に帰還から殆どお互いにあてがわれたコテージに出入りするのが億劫だったのが主な原因とも
いえるが他にも要因があった。
アルマ様やアリシアやラヴィアンからは「挙式は何時ですか」などとからかわれ、レーゼとベイオウーフには
「お互いの子供を許婚にしていい?」などと聞かれたりしたためだ。


同棲してしばらくしてラムザの子を懐妊した。
私としては別にこのまま出産してお互いに落ち着いてから結婚というのが良かったのだがラムザ
そうは思ってはいなかったようで、
アグリアスさん、決戦前の約束を果たしたい。だから僕と結婚しましょう!」
周りに煽られ続けたり人生初の妊娠という一大ハプニングもあってか私のほうとしても満更ではない
気分だったので
「・・・フッツカ者ですはありますが末永くよろしくお願い致します」



それから数年後・・・


「昔は雑用や買出しに喜びを覚えた事はなかった。
でもあの人のためと考えるとこういうのも不思議と嫌な気がしなくなった。
オヴェリア、貴方にもいつかそういう日が来るわ」
ある日、家事がちょっと嫌になって愚痴を言った私を母さまはそう諭した。


私、オヴェリアが生まれた頃から始めた貿易事業は軌道に乗り、今では国一番の大商会。
今日も父さまのかつての仲間たちが発見した新しい交易路の報告で港も酒場も市場もにぎわっている。


私のバスケットにはさっき市場で見つけて買った新鮮な山菜と鹿肉と魚肉と焼きたての美味しいパンが一杯。
「今日はさらに奮発して香辛料と高級料理酒も買いましょう。」と母さまは意気込んでる。


「父さまが大好きなコショウと塩で味付けした料理で新しい大利益の交易路開拓祝いだね。」
と私が言う。


「あら、あなたも少しは料理の心得について分かってきたのね」
と母さまが褒めてくれる。


「確かに新大陸からの珍しい食材を活かした料理もいいかもしれないけど、でもこういう時は慣れた料理の方が
美味しく感じるかもしれないね。」
最近、母さまのお手伝いをして少しだけ料理の心得が分かってきた私が言う。


「ふふふ・・・良いお嫁さんになれるわよ、オヴェリアは」
そう嬉しそうに微笑む母さまと家路につく。
バスケット一杯の荷物はちょっと重かったけどやっぱり母さまとの買い物は楽しい。


もうすぐ妹のティータも家事手伝いをし出す。
そしたらすぐに家事仕事を少し取られちゃうけど私はお姉ちゃんだから文句は言わない。
その分、父さまと母さまの剣術の訓練に時間を割いてもらおう〜っと。


そういえば、トリスタン君は元気かなぁ〜?
あ、トリスタン君っていうのはレーゼお姉さんとベイオウーフお兄さん(こういわないと二人ともすごい怖い
微笑みを浮かべて近づいてくる)のとこの一人っ子。


私とトリスタン君は同い年で許婚なんだってこの間レーゼお姉さんに教えてもらった。
生まれる前から決めたみたいなんだけど、それを抜きにしてもトリスタン君に私は好印象ばかり持っている。
彼はいつもさわやかな笑顔で私を不思議と安心させてくれる。


でもこの間までは私のほうが剣術もチョコボ乗鳥術も上手だったのに最近ではあまり差が無くなって来ちゃった。
いつかは守ってもらう方になっちゃうのかな〜・・・。


それに最近はオルランドゥおじちゃんの元で立派な『騎士』になるために修行をしてて、段々敵わなくなって
きちゃいそう。
一緒に近衛騎士団に入りたかったけど、ちょっと難しいかな・・・。
あ、でも来月の私の誕生日に祝いに来てくれると嬉しいな〜。
それからできれば一緒にアカデミーにはいって・・・一緒に叙任式を迎えて・・・それから・・・やっぱりお嫁さんに
してもらおうかな〜
今はそれが私の夢。


「オヴェリア、夜も遅いからそろそろ寝なさい。明日は久しぶりに剣術の訓練してあげるんだからね。」
は〜い、明日は楽しみにしてる週に3回の剣術訓練。
そういえばそのことを言ったら母さまや父さまたちからは若い頃の母さまに似ていると笑われた。
明日も良い日でありますように・・・。







日記を書いていた娘がやっと寝たのを確認して一息ついて、アグリアスは夫婦の寝室に戻っていく。


「オヴェリアはどうでした、アグリアス・・・」
「恋する乙女といった所ね・・・懐かしいわね・・・なんだか昔の自分を見ているようだわ。」
あはははと笑いながらラムザは最愛の妻と静かに寝床に横になる。


「明日は剣術訓練の日ですよ、師範様が寝不足じゃ弟子達に示しがつかないですよ。」
そういって、そっと抱きしめ、
「訓練が終わったら久しぶりに水入らずでデートしましょうね」
「ふふ・・・それも良いわね・・・一緒にあの劇でも見ましょうか。」
そうしてから静かにおやすみなさいを交換し、静かに寝息を立て始めた。



比翼の翼・・・それはお互いが相手にとってかげがえのない存在であるということ・・・。
決してかけてはならない存在。
いつか貴方にもそんな存在が見つかることを祈りつつ、筆をおくとしよう。