ふみんしょ

氏作。Part37スレより。

「暑いな」 初夏。太陽の季節。 頭上で猛威を振るう丸顔を、ラッドは忌々しそうに手で遮った。 「暑いね」 彼の呟きに同調したアリシアも、やはり同じように手を額に掲げている。 「疲れた?」 「ううん…」 ラッドが気遣うと、アリシアは笑顔で首を振った。…

氏作。Part32スレより。

【 はだかの王様 】 アグリアスさんとラムザさんは村一番のおしどり夫婦。 その日は二人そろってふもとの街へでかけました。 久しぶりのお出かけにご機嫌のアグリアスさん。 夫の腕に抱きついて、あっちこっちへ引っ張り回します。 やがて遠くの方から聴こえ…

氏作。Part24スレより。

やあラムザ。 こんな所に呼びつけて、私に何の用だ? ……なに、呼んでなどいないって? そんなはずはなかろう、先刻ラヴィアンがやってきて、お前が私を……。 ……ははあ、どうも私はまたからかわれたらしいな。 まったく、困った部下だ。何度言っても聞かぬのだ…

氏作。Part23スレより。

ここにいたのかラムザ。 うん、ちょっと、今日はお前にちょっといい話をしてやろうと思ってな。お前は今日がなんの 日だか知っているか? ………そうだ、聖バレンタインデー。世間では、なんだ、女が男にチョコレートなどを作って 渡したりといろいろあるようだ…

氏作。Part22スレより。

五十年戦争の終結以来、畏国のあらゆる場所を貧しさが覆い尽くし、潤いを求めて大小様々な 徒党が溢れ返るようになったが、その内情は実に様々だ。 利用するだけ利用され、終戦と共に切り捨てられた敗残兵たちの義賊もあれば、田畑を捨てた 元農夫の連中もい…

氏作。Part22スレより。

その日、アグリアスは粗末な宿の一室にひとり閉じこもっていた。 外は秋晴れの散歩日和。陽はうららかで風もやわらかく、健康なものならば誰しも外に出かけ たくなるだろう。そうでないものでも、せめて窓を開けて、表の陽気に触れようと思うはずだ。 だがア…

氏作。Part22スレより。

聖誕祭。 グレバドス教が崇める最高の聖人、聖アジョラがこの世に生を授かった日を讃える祝祭。 国中のあらゆる場所で灯の明かりが溢れかえり、イヴァリース全土がきらびやかな宝石を ちりばめたように輝く。その明るさときたら、夜空に踊る星々だって瞬きを…

氏作。Part21スレより。

ラムザ隊の、歩くうわさ話こと、ラヴィアンとアリシア。 ふたりは今日も忙しい。 「アリシア! 新しい情報が入ったわ!」 「流石ラヴィアン! で、重大な情報なんでしょうね?」 「重大も重大! 我らがアグリアス隊長の最新情報よ!」 「すンばらしいわ! と…

氏作。Part21スレより。

雲ひとつない夜だった。 のぼりきった月が、眠りについた街を照らしている。窓からの景色は妙に美しい。 安宿の一室。祖末なベッドに横たわりながら、私は首を持ち上げ、自分を抱いている男の顔を 見上げた。 ラムザが背中に這わせていた手を止めて、笑いか…

氏作。Patr21スレより。

よう、あんたら。 揃いも揃って不景気なツラ並べてやがんな。 そんなんじゃあせっかくのツキも逃げちまうぜ? 俺かい? 俺は勝負師、ギャンブラーさ。 このあたりじゃ「プレーン」って名で通ってる。 マンダリアのプレーンっていやあ、ちょいとばかし有名さ…

氏作。Part20スレより。

アグリアスは大変だ。 アグリアスの苦労は早朝から始まる。 「起きんか貴様らぁぁぁーー!!」 ラムザ隊の面々はひとりの例外も無く朝に弱い。 ジジイのくせにオルランドゥ伯すら。 早朝にひとり目覚めた彼女が片っ端から起こして回るのは大変なことなのだ。…

氏作。PArt19スレより。

巨蟹の月 25日 最近、アグリアスさんが珍しく「弓使い」なんかを修行しているなと思っていたが、 今日やっとその理由が分かった。 「あれ・・弓使いはやめちゃったんですか、アグリアスさん?」 出撃前、普段の薄着な軽装服ではなく、馴染み深いフルプレー…

氏作。Part17スレより。

1、2、3、4…………汚い壁だ。 ライオネル城。あてがわれた部屋でぼんやりと椅子にもたれながら、私は古びた石壁の染みを数えていた。 毎日が穏やかに過ぎていた。あまりにも平和な生活。自分の務めを忘れてしまいそうになるほど。 オヴェリア=アトカーシャ…

氏作。Part16スレより。

昨日のこと、道でうっかりして私は人にぶつかってしまいました。 相手は金色の長髪をなびかせる綺麗な女性で、どうやらどこぞの騎士様のようです。 ぶつかった弾みに、あれは誰かへの贈り物でしょうか、ケーキが下に落ちてしまいました。 謝ろうとしたらまず…

氏作。Part15スレより。

イヴァリースの四季は、どれもみな、それぞれに深い味わいを秘めていて、気の遠くなるような年月を 経ても色褪せることのないその美しさを、めぐる度に惜し気もなくわたし達に見せてくれます。 その中でも、わたしのお気に入りはやっぱり春でしょうか。清ら…

氏作。Part15スレより。

「あれっ?」 野営を設置し、荷物を探っていたラムザは間の抜けた声をだした。 「どうした、失せ物か?」聞き付けたアグリアスが声をかける。 「はあ…どうもそのようです」 「よく探してみたのか?」 「ええ…昨日はあったと思ったんですが……おかしいな」 ぶ…

氏作。Part15スレより。

陽が遠く地平線に顔をあらわした頃、アグリアスは静かに目覚めた。見なれた壁の風景。窓辺からは 鳥のさえずりが聴こえる。 ほんの少し寝床に未練を残しながらも、彼女はすぐさま毛布を払う。途端に部屋に立ち篭めていた 冷気が衣服の隙間から入り込み、彼女…

氏作。Part15スレより。

こんにちは皆さん。長かった冬が去り、今年もイヴァリースに春がやって来ました。 陽気に照らされると、無理矢理にでも元気にさせられてしまうのが春の魅力です。今日、 白羊の月の十日も、わたしにとってそんな春の訪れのような日でした。 あ、申し遅れまし…

氏作。Part14スレより。

夕暮れにさしかかり、人気の少ない通りをラムザとアグリアスは二人並んで 歩いていた。手一杯の荷物を持っているせいか、二人とも口数は少ない。街に 駐留する度に行う、物資の補給の帰りなのだ。 隣を歩くラムザの、ぽやんとした横顔を横目で眺めながらアグ…

氏作。Part13スレより。

なあメリアドール。どうやら世間では、明日バレンタインという催しがあるらしい。 女性から男性にチョコレートなどを作って…、 え、なに。そんなの知ってる?そ、そうか……。 うんそれで、そのバレンタインだが…なんだ。お前は誰かに渡すのか? …ほお、マラー…

氏作。Part13スレより。

むかしむかし、とても仲むつまじい夫婦がいました。 夫の名前はラムザ、妻の名前はアグリアスといいました。 ラムザさんは少し抜けたところがありましたが、穏やかで誰にでも好かれる優しい人でした。 アグリアスさんはとても美しいけれど、厳しくちょっぴり…

氏作。Part12スレより。

ラムザがでていってしまった。 きっかけは些細なことだった気がする。 話の最中に、いつの間にか言い争いになっていた。 私は興奮して、ラムザに非難を浴びせた。 いつもの様にラムザが折れて謝り、そんな彼を慰めてやって 優しくしてもらえるつもりだった。…

氏作。Part12スレより。

ー 処女の月 七日 ー 『 ここ数日は天候に恵まれ、魔物との遭遇もほとんどなく、思いのほか早くザランダに到着する事ができた。 先に派遣した武術大会に出場した者達の帰還を待つため、二日ほど滞在する…… ・ ・ スラスラと、端正な字で旅の行程を書き綴るア…

氏作。Part12スレより。

「アグリアスさん、お願いします!僕に、『女性』の事を教えて下さい!」 顔を赤くしながら、ビシっと腰を90度に頭を下げるラムザくん。 言われた方のアグリアスさんも、ぼんっ、と真っ赤になってしまいます。 さて、なんでこんなことになったのでしょうか…