氏作。Part31スレより。




「あたたたたたたたた!」
20代も中盤に差し掛かったお姐さんが部屋で剣を振り回して暴れている。
「ちょ、アグリアスさん何してるんですか!?」
「止めるな、ラムザ!・・・フフフ、おまえはもう、氏んでいる・・・・」
「誰かアグリアスさんを止めて〜!」



『タイピングゲーム 北斗骨砕打!』


「ほ、北斗骨砕打!?」
「パソコンに慣れるいい機会です!
アグリアスさんならすぐに上達出来ますよ。ほら、さっそく!」


そもそもなぜこの人たちがパソコンをやっているのか?そこから説明しよう。
スタディオが発掘してきた物の中に、何やら薄くて平べったい機械があった。
この機械の事を知っていたクラウドに使い方を教えてもらい、「帳簿の整理に使える」という事でラムザが使い始めたのだ。以来、肌身放さず愛用している。
アグリアスさんもやってみませんか?」
「しかし、私にはどうもこういった機械は苦手で・・・」
「大丈夫です。2人で一緒に勉強しましょう。ね?」






なっ!?ラムザ、そんなに跳ね毛をピョコピョコさせて瞳をウルウルとさたら断れないではないか!う〜ん・・・
「そそ、そこまでい言うのであればよよよよ、よろしく頼む!」
「それじゃあ、僕の部屋に置いてあるのでそこでやりましょう!」
「え?!・・・ラムザの部屋!!?わ、わかった行こう」(ラムザの部屋で2人きり!?もしかしてもしかして?!)
残念ながら、もしかしませんでした。


 この後にラムザアグリアスにパソコンを手取り足取り(足は取らないか?)みっちり教える
ラムザアグリアスのドキドキパソコン教室』
があるのだが、それはまた別の話。思わず手が重なっちゃったりしてタハーッ!!ってな展開になる。
 他にもアグリアスが意を決してラムザにラブレターを打つのだが、プリンタがない事をクラウドに指摘され大暴走してし
まうのも別の話。


そして冒頭のセリフに戻る。
 ラムザが起動したのはタイピングゲーム。
楽しみながら上達できるからいいぞ、とクラウドがパソコンに入れてくれたのだ。
・・・おいおいクラウド、どこからそんなもん持ってきたんだ?


 ここでゲーム概要を説明しよう。
?様々なモンスターとタイプ対決をしてラスボスを目指す。
?敵ユニット(COM)との戦闘になると、詠唱タイプ勝負。相手に勝つと攻撃成功。
難易度に応じたダメージを与えることが出来る。回避も同じ。
つまり漢字表記の技が難しく、ダメージが大きいように調整されている。
?見事クリアするとお宝画像が!・・・おっと、鼻血が出ちまった。



キャラクターはもちろん自身を選択。
内容が内容なので普段から使い慣れた単語を打っていく。
自分が登場して活躍するだけに、次第にタイプする手に力が入る。
「不動無明剣!浮動無明剣!不動務明県!不動無病堅!」
う〜ん、間違ってますよと言いたそうな顔でラムザが心配そうに見ている。
ラムザ君、素直に言ってあげよう。
アグリアスさん、そんなに力を入れてもダメージは増えませんよ!むしろパソコンにダメージが・・・」
「あぐぅ・・・すまぬ、つい力が入ってしまった」
最初は「私は剣1本で戦ってきたのだ!だから指1本で戦う!(単なる言い訳)」とわけのわからない事を言って
本当に指1本でやっていたのだ(1本なのだが気持ち悪いほどのスピードでタイプしていた)。
これはこれでクリアできそうだったのだが、上達しないのでラムザに直される。
このゲームは詠唱の長い技、漢字表記の技が難しい。
徐々に敵も強くなり、焦りからミスも増えてきたが、タイプもみるみる上達していく(ラムザの「エール」のおかげ)。
アグリアスもテンションが上がってきたのか、敵を倒すたびラムザとハイタッチまでしている。遠くから見ていると変なカップ


に見える。大丈夫か、姐さん?
しかし、楽しんでいたのもここまで。次に登場した敵の放つ一言にアグリアスはブチ切れた。


メリアドール
『そんな指捌きで私の剛剣に勝てるの〜?あっ、Move3だもんね〜!ププっ
鈍足だし、もたもたしてるなら私がラムザを貰っちゃうわよ?
使い手がこんな女だから、実は聖剣技なんて大した事無いんじゃないの!?キャハハハハハ!』


やけに核心を突いた生温かいセリフである。次の瞬間、
ブチッ!



隣に居たラムザにも音が聞こえた。イヤな予感。
「あ、アグリアスさん?」
「なんだ?」
「あくまでもゲームですからね、演出ですからね」
「わかっておる!だが、あやつが我が剣を愚弄しておるのだ。奴は全力をもって叩き潰す!!」
(ムキーッ!!なめてるのかこの緑頭巾?!なめんじゃないわよ!貴様にラムザは絶対に渡さん!頃す、絶対こいつ頃す!!)
あ〜あ、多分わかってないよアグリアスさん。ラムザは目を閉じて天を仰いだ。もうだめだ、と。
しかしこの後、画面を見たアグリアスは顔面蒼白になる。


メリアドールが技を繰り出した!相手より早くタイプして技を回避しろ!
『赤き五月雨に地を染めろ 火喰い刀!塵地螺鈿飾剣!』


(何ぃい!?よ、・・・読めん!!そうだ、侍に・・・って侍が誰もおらん!!)
なす術もなく大ダメージを受ける。
「あぐぅ!」
アグリアスさん、しっかり!!」
「うむ、すまぬラムザ!」
アグリアスが画面に向かって叫ぶ。
「貴様、卑怯であるぞ!そんな技は使わなかったはずであろう!?」
当然パソコンはウンともスンとも言わない。代わりにやけにリアルなメッセージが出る。
『だっさ〜!こんなのも打てないの?あなたの聖剣技もそれまでだったようね。
大した事無かったわ。次で終わりよ!』
「貴様だけには・・・、貴様だけには屈したりはせぬ!そうであろう、ラムザ!?」
「えっ!?ええ・・・はい・・・」
なんなんだ、一体・・・。
ここから1人と1台の激しいバトルが始まる。
「命脈は無常にして惜しむるべからず…葬る!不動無明剣! 」
「我に合見えし不幸を呪うがよい 星よ降れ!星天爆撃打! 」
「乱命割殺打! 」
「強甲破点突き!」
「無双稲妻突き!」


 決着がなかなかつかない。アグリアスの指は恐ろしいスピードでキーを叩いていた。
叩きながらも画面に向かって叫んでいる。もちろん会話は成立していないが。
『ほらほら、もう疲れてきたんじゃないの〜?・・・さっさと諦めなさいよ!』
「・・・五月蝿い!貴様はここで倒さねば気が済まぬ!」
『大体ね、アンタはラムザにふさわしくないのよ!ラムザだってアンタじゃなくて私を選ぶはずよ!」
「今さら疑うものか!・・・私はラムザを信じる!」
・・・成立してますね。アグリアスの横ではラムザがとても嬉しそうに微笑んでいましたが、タイプに夢中で気付かず進展のきっかけにはなりませんでした。残念。
あ・・・アグリアスさん、目が血走ってますよ。
「聖光爆裂波!」
「咬撃氷狼破!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ?アグリアスさん?」
突然、アグリアスが席を立つ。驚くラムザ
部屋を飛び出して行ってしばらくして戻ってきた。
手にはセイブザクイーン。
画面には入力が無いので勝利を確信したのか、
『おやおや、手詰まりかな?それじゃぁ、私の勝ちかな♪』
と表示されている。
アグリアスは静かにパソコンに向かい語り始める。
「残念だったな・・・。手詰まりは貴様の方だ。剛剣の技は4種。我が聖剣技は5種。あと1つ残っているぞ」
ラムザは気付いてしまった。追加効果が即死のあの技を・・・。
しかしあのパソコンには大事な帳簿が・・・!しかし一歩遅かった。
 

「死兆の星の七つの影の 経路を断つ!北斗骨砕打!氏ねーーー!」



 ラムザの目の前でパソコンが即死した。尚も攻撃は続く!
「あたたたたたたたた!」
20代も中盤に差し掛かったお姐さんが部屋で剣を振り回して暴れている。
パソコンが滅多突きにされ四散して行く・・・。
呆然としていたラムザだったが、ふと現実に戻る。
「ちょ、アグリアスさん何してるんですか!?」
「止めるな、ラムザ!・・・フフフ、メリアドール。おまえはもう、氏んでいる・・・・」
「誰かアグリアスさんを止めて〜!」


 正気に戻ったアグリアスが、目の前にラムザがいる事に気付く。
周りを見る。粉々になったパソコンがラムザの部屋中に散らばっている。
「・・・やあ、ラムザ。天気がいいから少し外を歩かないか?」
その場に正座しつつ現実逃避してみる。しかし無駄な抵抗だった。
アグリアスさんが・・・僕が苦労して纏めた帳簿を・・・」
ふらふらと、ラムザアグリアスに近づいてゆく。
「ら、ラムザ?まあ・・落ち着いて話そうではないか? えっ、ちょっと、そんな、アッー!!」
アグリアスラムザにどんなお仕置きを受けたのか・・・。それは隊の誰も知らない。
北斗骨砕打が炸裂した瞬間、メリアドールの部屋からも謎の煙が出ていた事も、誰も知らない。


 結局帳簿は全て手書きで纏める事になり、ラムザアグリアスの2人は昼夜問わず作業に追われた。ん?
昼夜問わず2人きり!?果たして何かあったのかどうかは皆さんのご想像にお任せします。


 最後に、ゲームをクリアすると出てくるお宝画像なんですが、何とラムザとアグ姐さんがあんな事を・・・いかん、鼻血が出てしまった。
ん・・・待てよ?ラムザはクリアしてるから一度見ているのでは・・・・・・・・・アッー!!



Fin