氏作。Part32スレより。




 広葉樹の根元、アグリアスは、ラムザを庇いながら地面に座っていた。
「痛っ……!?」
 アグリアスの腿の上に頭を乗せているラムザが呻いた。
「じっとしていろ」
 アグリアスは、ラムザが失っていた意識を回復したことに安堵しつつ、なるべく冷静に告げる。
「ぼくは……ああ……ごめんなさい……」
 ラムザが、嗄れた声で詫びてきた。
「なぜ、無茶をした?」
 厳しい口調になるのを抑えずに訊く。
 戦場で、力を誤って行使すれば、記憶を刻んだ剣と技を託した石を残して朽ちるのが、戦士の定めである。
 それは、戦士ならば誰もが理解していることだ。
「ぼくは……ぼくは……焦っていた……焦っていたんです……」
 悪夢に魘されるようにたどたどしく答えてきた、ラムザの目が潤んでいる。
 アグリアスは、自らのしくじりを悟った。アグリアスが思っていたよりも、ラムザは、傷つき、疲れていた。
 右手で顔を覆い、ラムザは続けてくる。
「最も愚かなのは、ぼくだったんです。ぼくさえ強ければ、ぼくだけ戦えば、みんなは死なないって考えていた」
「もう、いい。もう、いいんだ」
「それは、傲慢でしかないのに――」
「もう、よせ……」
 ラムザの悲痛な告白を、アグリアスは遮った。
「おまえが強さを求めたことは、間違いではない」
「でも――」
「だが、おまえは独りではない。おまえに惹かれ、共に戦う者たちがいる」
「…………」
「わたしを……わたしたちを……信じてくれ」
 アグリアスの懇願に、ラムザが喘いだ。
 雨の降る音が、やけにはっきりと聞こえる。
「おまえが目を覚ますまで、わたしはここにいる。今は、眠れ」
 右手でラムザの髪を撫でながらアグリアスは言いつけた。
「母さ……ん……」
 リジェネの仄かな光に包まれて眠りに落ちる、ラムザの呟きは、なぜか、アグリアスの心を甘く擽った。