氏作。Part36スレより。




神殿騎士団との決戦は熾烈を極めた。
戦闘に参加したものは持てる力を遺憾なく発揮しあい、まさに剣技と剣技、魔法と魔法のぶつかり合いとなった。
しかし、戦闘において最も大切なファクターの一つが最後に戦ってからどれだけ時間が経ったかである。
戦いの勘というのは如何に戦いから戦いまでの合間が短いかによってキレが変わる。
そして、その点で言えば常時戦場に身を置いていたといっても良いラムザたちに軍配があがったのは
ある意味当然かもしれない。


結局ルカヴィたちとの決戦は時空の狭間にて古の遺物、飛空挺の上で行われ、聖天使の魔力の暴走により
飛空挺が崩壊、ゆがんだ時空に飲まれた一行はいつの間にかばらばらになってしまった。


ふと冷たい感触を頬に感じたアグリアスが目を開けるとそこはうっそうと茂る木々に覆われた
深い森のような場所だった。
小さな小川がそばにあるのか流水の音が耳に響く。
周囲を見回すが人の気配はなく、遠くで鳥達のさえずりが聞こえるほかは生物の気配はない。
周囲の安全を確認し、身につけているものに注意を向けると最終決戦のときのままであることに気がついた。


そして一行がバラバラになったことを思い出したアグリアスの胸に不安が徐々にではあるが広がり出した。
(もしかしたら・・・ラムザとは違う世界に飛ばされたのかもしれない!!)
そう思った彼女は居ても立ってもいられず、急いで森を抜けようと走り出した。


それから2時間が過ぎ、ようやく森の切れ目が見えたのでこれ幸いと、抜けると目の前には見覚えのある
修道院が建っていた。
否、見覚えどころではない。彼女とその最愛の人と仲間たちが最後の決戦へと訪れたあのオーボンヌ修道院
そのものだった。


呆然とする彼女に気付いたのかどこか見覚えのある人物が声を掛けてきた。
「まぁ、アグリアスさん!無事でしたの!?」
声の主を見てみるとそれはアルマだった。


「ほら、アリシアさん!ラヴィアンさん!アグリアスさんが帰還されましたよ!」
「え、アグリアス様!?ちょっと、ラヴィアン!ラッドといちゃついてないでこっち来なさいよ!
アグリアス様のご生還よ!」
「もう、良いところだったのに・・・ってアグリアス様!!ご無事でしたかっ!!よかった!!」
そういいながら抱きつき、感涙に咽ぶかつての部下達を愛子ながらふと、アグリアスの脳裏にある考えが浮かんだ・・・。
(今はあれからどれくらいの月日がたっているのだろうか・・・?それにラムザはどこに・・・・)
(!?・・・アルマ殿が無事であったということは・・・他の者も無事なのだろうか・・・そういえばラムザ
アルマ殿を助けるように飲まれていた・・・もしかしたら彼女はラムザの行方を知っているかも・・・)


「あ、あの・・・アルマ殿、あれからどれくらいの月日がたったのでしょうか?それにあの人は・・・ラムザ
どこにいるのですか?」
その言葉を聴いたアルマは一瞬ビクリと身をちぢめ、喜びを浮かべていた表情が一気に暗くなってしまった。
「え、えっと・・・その黙られても分からないのですが・・・」
困惑しながらもたずねるアグリアスにアルマの変わりにアリシアが悲痛な面持ちで答えた。
「実は・・・ラムザ様の行方は未だに掴めていないのです。私達がラムザさんを見たのはあの狭間に飲み込まれる直前で・・・それと、あの決戦から5年の月日が流れています。」
「それと、隊長には本当に言い辛い事実をもう一つお伝えしなければなりません。」
そう言葉を続けるラヴィアンの表情もまた悲痛だった。
「ラッドと私がこちらに戻った時、アルマさまとアリシアが先に戻っていました。それから少しずつ
仲間たちが戻り出しました。」
「そうなのか・・・そういえば、おまえはラッドとねんごろだったな。」
「は、話の腰を折らないでください!!」
「あ、すまん・・・続けてくれ。」
「・・・で、ですね・・・私達が戻った翌年、王都で盛大な結婚式と即位式が同時に行われたんです。
それと一つの重大発表が!!」



「なに!?結婚式と即位式が同時に挙式だと?だ、誰とオヴェリア様がご結婚されたのだ!それと発表とは何だ!?」
「そ、それがディリータという若い聖騎士で・・・アルマ様からお伺いしたお話ですとなんでもラムザ隊長の
ご親友だった方だったそうです。」
「そ、そうか・・・あの時の・・・ところでそれはオヴェリア様ご自身のご意思なのだろうか?それで肝心の発表は
何だったのだ?」
「発表に関してはラムザ一行への異端者の烙印を解除し、それぞれが今まで失った名誉を回復させる所存で
あるとのことです。」
「ええ、私達もそう聞いています。それと、去年には早くも皇太子様がご生誕されました。これでご夫婦仲も
ますます円満になりお二人の行く末も安泰と思われました。」
「思われました?ご夫婦仲が円満であるならば問題はないのではないか?」
そう言うアグリアスアリシアが悲痛だった表情を更に暗くして答えた。
「いえ、ところが半月前、王宮をかつての北天騎士団の残党が襲撃し、突然の襲撃により国王一家が倒れた
という悲報をいつも生活用品を届けてくれるドーターの酒場のマスターさんが伝えてくれました。」
「現在は国王のかつての副官である、バルなんとかという方が例のボケ王子を臨時の国王とし、摂政として
政事を執られているとのことです。」
その言葉を聴いた瞬間、アグリアスは一瞬で足元が消え、奈落の底に叩き落される感覚を味わった。


そんな馬鹿な!!・・・オヴェリア様が、あの美しいオヴェリア様がご崩御されたなんて・・・。
生まれてから15年もの間、修道院をたらい回しにされ、様々な政争に巻き込まれ、ようやく・・・ようやく手に入れた人としての幸せを奪われてしまわれた・・・。
不憫な・・・ああ、何と不憫な!!・・・神よ・・・貴方は本当に残酷だ!!私は・・・私は貴方をゆるせない!!絶対にぃっ!!



「まぁ、アリシア、ラヴィアン・・・二人とも困りまるわ!勝手に人を死者みたいに扱って!!」
「まぁまぁ、オヴェリア・・・彼女たちとて親愛なる元隊長閣下をからかいたいがためにやったいたずらだ少しは許してやれ。」
(へ?何でオヴェリア様とディリータ殿・・・いやディリータ様のお声が聞こえるんですか?)
「でもあなた、あの言い方じゃ私達が死んでしまったみたいな言い方じゃなありませんか・・・」
「お前だって相当ノリノリだったじゃないか・・・あまり強く言ってはかわいそうじゃないか?」
(なんでお二人が私の目の前でピンピンしてるんですか?)
「オヴェリエ様、アグリアスさんが固まっていますよ。そろそろネタバレして差し上げなくて
よろしいのですか?」
「アルマ、そういう堅苦しい言い方はよしてと何度言ったら分かるの?ああ、私は親友にも
可愛い近衛騎士たちのも堅苦しい呼ばれ方しなくちゃいけないのね・・・。」
(・・・なんで私は悲しい想いをし、怒りまで覚えたのでしょうか・・・)
「ところで、お前たち、そろそろアグリアスをこちらの世界に連れ戻さなくて良いのか?
馬鹿っ面晒してる上に相当顎が外れているぞ?」
「ああ、良いんですよ、隊長にはこれくらいしないと・・・今まで私達をヤキモキさせたお礼ですから!ねぇ、アリシア〜♪」
「そうね、ラヴィアン。でも、あんたとラッドのイチャイチャぶりをあてつけられる私の身にもなってよね!!」
(・・・なんでこの人たちはニヤニヤと私を見つめるのでしょうか?それとこの頭に溜まってきた
『怒り』ゲージというのを使ってみたくなってきたのは何ででしょうか?)


そんなアグリアスの視界の隅に見覚えのあるくせ毛が特徴の優しい表情の少年を背に乗せた
チョコボ(ボコ)彼女の愛鳥のカトリーヌ(赤チョコボ)が入ってきた。
「お〜い、アリシアさ〜ん!マスターからムスタディオからアリシアさん宛の手紙がたくさん
預かってるんですけど・・・。あと、それとアグリアスが還ってきたって本当ですか!?」
(な、ななななななな!ララララララララララムザ、なんでここに・・・。)
「げ・・・あ、ラムザ隊長!お帰りなさい〜。どうでした、毛皮とかの売り上げは〜?っとすごい荷物ですね、
運びますよ。」
「ありがとう。売り上げはまあまあだね。それととりあえずマスターが今月はぎっくり腰で届けれない
とのことなので今月の前期分を貰ってきたよ。」
「あら、兄さんの帰りなさい、こんなにたくさんですか?じゃあ、アグリアスさんのの帰還祝いに
ご馳走としましょうか」
暢気に戻ってくる兄を見て慌てて荷物を保存庫にしまいに向かうアルマとラッド。(逃げたとも言う)


「ああ、アグリアス!!よかった!!無事で・・・君が無事で本当に良かった!!(以下惚気三昧なので略」
突然ラムザに抱きつかれ、暫く慌てていたが次第に安堵感とともに冷静な思考が脳裏に帰ってくる・・・。
そして何故か途方もない怒りも・・・。
「あれ?アグリアス・・・俯いてどうしたの?どこか痛い所があるの?」
不安げに心配するラムザをそっと横にどけ、
「ふ・・・・フフフフフフフ・・・・キミタチ、カクゴハデキテマスDeathカ?」
っと見た者を魅了してやまないほどの美しいのだがどこか非常に恐ろしい微笑みを浮かべたアグリアスを見て
アリシアとラヴィアンは己の犯したミスに気がついた。
「へ?た、隊長・・・?なんか言葉が不自然なくらい怖いですよ・・・?ちょ、ちょっとしたオチャッピー(死語)
じゃないですか、あはははは」
といいながら、状況に気付いていない(気付こうとしなかったとも言う)ディリータ&オヴェリア夫妻を連れて
脱兎の如く修道院から逃げ出した。
ラムザ、そこで待っててください!すぐに彼らにお仕置きをして戻ってきますから!
それから・・・私の居ない空白の5年間、貴方が貯め続けてきた私への想いを受け止めさせてください!!」
そう伝えるとアグリアスは愛鳥カトリーヌに跨り大量の召喚獣を呼び出しつつ逃げた者たちを追いかけていった・・・
頬をほんのり朱に染めて。
「うん、分かった。でも殺しちゃダメだよ?僕も大切なアグリアスを騙した彼らにちょ〜っとベオルブ家に
伝わる120手のお仕置き術を使いたい気分だからね♪」
そう彼女の後姿に伝えながら、今はこれからどこでどうやって生活しようかと考えるとしよう・・・。


今、僕ら(私達)の後ろには沢山の道が広がっている・・・一つ一つが違う僕ら(私達)の道・・・でもこの道を歩けて僕(私)は幸せです。


Fin


「ところでメリアドール、このS