氏作。Part28スレより。
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
南天騎士団の男(名をディリータというらしい)にオヴェリア様が誘拐されたため、
私達は後を追うべく貿易都市ドーダーへ赴こうとした。
敵が待ち構えている可能性を考え、武器の手入れもしっかり――。
と、そこへラムザという若い傭兵がやってきた。どこかで会ったような、懐かしい雰囲気を持つ青年だ。
彼は言った。
「アグリアスさん、ちょっと裸になってもらえますか?」
………………言葉の意味を理解するのに、やや時間を要した。ふざけているのかラムザ・ルグリア?
「ああ、すみません、誤解を招く言い方をして……。装備を全部外してください」
………………装備をか? 装備の変更は大切だが、私はこの装備で十分に戦える。
「いえ、いいんです。今回の縛りプレイは『装備禁止』っていうか『あらゆるアイテム使用禁止』ですから」
………………縛りプレイ? 何の話だそれは。あ、こら、勝手に装備を剥がすな!
「装備は何があろうと無し。服系で一番弱い『服』も禁止です。ただの私服で戦ってもらいます」
アホか己は。そんな貧相な武装でオヴェリア様を救えると思っているのか!?
「平気平気。初回プレイでも詰まった所なんてウィーグラフ関連くらいでしたから」
何の話だ。こら、引っぺがした武器を全部売るんじゃない! ああ、もう……。
こうなったら素手で戦うしかないが、貴公、魔法は使えるか? 武器が使えぬなら魔法が頼りだ。
「ちなみに魔法も禁止です。サンダー系とか使い勝手抜群ですし、トードなんて反則ですよ。
ヘイストで圧倒したり、ホーリーで瞬殺したり、後半は算術で圧勝。これじゃギリギリ感が足りません」
おいぃぃぃぃぃぃっ!! 何だその訳の分からん制限と理由はぁぁぁぁぁぁっ!?
「さあアグリアスさん、出撃ですよ。ラッドもラヴィアンもアリシアも、ガフガリオンだって裸なんですから」
オーボンヌ修道院では全員装備しまくりだったろうがぁぁぁぁぁぁっ!!
「だってイベント戦闘だったんですもの、仕方ないじゃないですか。さ、出撃出撃〜」
オヴェリア様……もしかしたらお助けできないかもしれません。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
慣れぬ素手での戦いで敵を殲滅するのは苦行であった。
ラヴィアンとアリシアが必死になってウェポンブレイクをしてくれなければ、
我々は攻撃力の圧倒的差で敗北していただろう。頼りになる部下で本当によかった。
ラムザの持つ謎の強制力に逆らえぬ以上、私も何か対策を練らねばなるまい。
武器が使えぬとなれば、やはりモンクの出番か。拳術は波動撃や地裂斬で攻撃、チャクラや蘇生で回復ができる優れもの。
モンクになるにはまずナイトをやらねばな。ナイトの心得は私にもあるから、モンクへの道のりは遠くない。
「見習い戦士のJpも適度に稼いだし、アグリアスさん弓使いになってください」
な、なぜ弓使い!?
「だって男キャラの方がAT高いんです。だったら女キャラはATが重要なモンクを目指すより、シーフのが便利便利」
私にシーフになれと!? ルザリア聖近衛騎士であるこの私に!
「ラッドはナイトに、アグリアスさんとアリシアは弓使いに。ブレイク技充実のためラヴィアンはナイトのままで。
ちなみに僕はチャプター1で拳術を習得しまくり、アカデミー時代の友人達をクリスタルにしてアビリティ継承し、
ナイトと弓使いとシーフのアビリティを習得してます。風水士にジョブチェンジ可能ですが、
今ジョブチェンジすると攻撃力不足になるし、他のみんながレベルアップするまでモンクのままでがんばりますね!」
何この鬼畜。クリスタルって何だコラ。アカデミー時代の友人をどうしたって?
「黒本でフランソワに萌えてて、いきなり学友として登場したから大喜びしたのに、何あの詐欺。
即弓使いにして即Speedセーブ習得させて即クリスタルですよ。黒本と一緒に火葬ですよ。
あとカインって奴がすぐ裏切りそうだったから危険を感じて、見習い戦士のまま鍛えて基本技を継承しました。
他の学友はまともそうだったので普通に鍛えて、ジークデン砦で美味しくいただいたりしちゃって。てへ♪」
鬼だ、こいつ鬼だ。……武器防具を奪われた今、この悪鬼に逆らうのは得策ではない……。
回復アイテムも禁止されているからラムザの『チャクラ』が唯一の回復手段だし……。
「ちなみに顔キャラは全部仲間にしたいから、学友はいても邪魔なだけな連中でしたし。皆殺しは仕方ないです。
あ、ちなみに次のマップでボコが……チョコボが仲間になります。チョコケアルは結構役立ちそうで楽しみ」
えぇえぇえぇえぇえぇッ!? 何その未来予知ぃぃぃぃぃぃッ!!
「初回プレイではラッドもラヴィアンもアリシアもボコも『今更こんな奴等使えるかー』って除名しちゃってたし、
今回はキッチリ使って楽しくルカヴィぶっ倒すぞ〜! 待ってろよハイレグ天使ー!!」
精神病院への入院をお勧めする。
「という訳で、さあさ、ジョブチェンジジョブチェンジ。ラッドとラヴィアリも早くねー。
あ、ガフガフはどうせ真っ先に始末するからアイテム士でいいや。どうせアイテム空だし」
オヴェリア様、早々に挫折しそうです。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
『装備禁止』『アイテム禁止』『魔法禁止』とかいう訳の分からぬ制限を受けながらも、
ラムザの予言通りチョコボのボコを仲間にしつつ何とかオヴェリア様に追いついた。
――と思ったら何故か、一人分だけ用意されていた剣や鎧を、なぜかガフガリオンに装備させるラムザ。
も、もしや『装備禁止』とやらの過酷さにあきらめ、武器防具の使用を認めてくれるのか!?
それで苛立たしい事だが、ダークナイトのガフガリオンに一人分だけある装備を回したという事か。
つまり次はホーリーナイトである私の番。ああ、早く装備よ来ーい!
そしてついにオヴェリア様と再会。と思ったら北天騎士団に教われてて、南天騎士団の男が守ってる?
さらにガフガリオンまで裏切りおった。何のために装備を分けてもらったと思ってるんだこいつは!?
「それはもちろん、敵になるから装備させたに決まってるでしょ。
こっちにはディリータとオヴェリア様という、完全武装の2人がついてるんですから。
ここでガフガリオンを全裸とかにしちゃ、難易度軽すぎます。ただでさえ僕は死んでいった学友のアビリティを――」
ばか! バカッ! 馬鹿ァッ! 莫迦ァァァッ!!
そんな意味不明な理由でオヴェリア様を危険に晒すというのか!? これで戦争に発展したらどうするのだ!?
「タクティクスオウガと違って一本道だしー。っていうか戦争が起こらないルートなんてあったらゲームになりません」
ゲーム!? 貴様、この一触即発の状況をゲームと!? 現実を見ろー!
「やっほーディリータ久し振りー。万年見習い戦士な僕と違ってホーリーナイトおめでとう」
なごやかに挨拶するなぁぁぁっ! あっ、ラヴィアンが闇の剣を食らった。
「ラヴィアン! ウェポンブレイクでガフガリオンを攻撃です!」
壊すくらいなら最初から装備させるなぁぁぁっ!!
「アグリアスさんはチャージパンチでガフガリオンを攻撃してください。僕は他の敵を地裂斬とかで片づけます。
ボコはオヴェリア様にチョコケアルでもしといてねー。疾風、地裂斬!」
オヴェリア様、無事お助けできる自信はありませんが、チャージパンチでがんばります。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
オヴェリア様を救助し、ディリータとかいう奴と別れ、私達は城塞都市ザランダに到着した。
すると若者が何者かに追い詰められている。どうするラムザ?
「もちろん助けます! その方が難易度高いし、ブレイブだって上昇しますから」
何の話だ。
まあいい。見たところあの若者は武器を持っている……が、何だあの武器? ボウガンにしては小さい……。
おおっ!? 爆発音がしたと思ったら、武器を向けられた先にいる弓使いが倒れたぞ!
何なのかはよく分からんが強力な飛び道具らしい。これならこの戦い何とかなるかも……。
「ぬりゃあ! 高低差無視ジャーンプ! そして ウ ェ ポ ン ブ レ イ ク!!」
な に を し と る か お ま え は !!
「うわっ、何すんだ! お前もルードヴィッヒの手下か!?」
違う違う。つかルードヴィッヒって誰?
「くらえ! 足を狙う!」
「うわっ、ゲストユニットのくせに味方を攻撃してどうするんだ! てやっ、アーマーブレイク!」
「ぐはっ! このヤロー、もう容赦しねぇぞ!」
「だかましい! 全裸プレイなんだからお前も脱げー!」
「お、俺はノーマルだぞ!?」
……何か知らんが敵が呆れてくれてる、今がチャンスだ。チャージパンチを命中させるため接近接近〜。
「地の底に眠る星の火よ、古の眠り覚し裁きの手をかざせ! ファイガ!」
ぎゃー。ここの黒魔道士はファイガなどという強力な黒魔法が使えるのか……裸ではつらい……。
……ふっ……いっそこのまま楽に……。
「ていっ、蘇生!」
……はっ!? あ、危ない、もう少しで三途の川を渡るところだった。
「ラッド、アリシア、ラヴィアンも早く目覚めたまへ。蘇生! 蘇生! 蘇生!
さあ、ジョブポイント稼ぎもかねてファイトー! 僕はチャクラと蘇生をがんばっちゃいます!」
き、貴公はなぜ無事なのだ?
「瀕死HP回復つけてありますから。ちなみにムスタディオは裸にされたせいで逃げまくってます」
……哀れな……。ぬおっ、敵ナイトが来た。チャージパンチ!
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
「実際縛りプレイしてみて、きっついのなんの。もうモンク様々って感じですね。
ムスタディオもモンクにしようと思うけど、どうせゲスト中に育てても意味ないし機工士のままでいっか」
今日もラムザが意味不明な事をほざいている。
「さて次はバリアスの丘。召喚魔法が怖い場所なんだよなぁ、アグリアスさんそろそろシーフになりましょう」
シーフにジョブチェンジ。
「そしていざゼイレキレの滝へ!」
ちょっと待て、我々の行き先はライオネル城だろう。逆戻りしてどうする。
「だって、シーフでハートを盗むを覚えさせないとこの先キツイですもの、JP稼ぎですよ。
アリシアも同様です。ラッドは拳術をまず充実させないとね。僕は忍者目指してがんばりますよ。
忍者に格闘をつければ一騎当千ですからね、ルカヴィだって撲殺です。あははははっ。
あっ、そういえばアグリアスさんはまだゲストユニットだからランダムバトルは駄目か。
うーん、じゃあアグリアスさんは夕飯でも作って待っててくださいな」
あー、もう、好きにしろ。
「しかし、ハートを盗むを使えるのが女だけというのは痛いな。
ムスタディオは正式加入後、ナイトじゃなく弓使いにして、シーフ目指させるか。
よかったですねアグリアスさん、シーフ仲間に男が加わる日は近いですよ」
嬉しくない嬉しくない全然嬉しくないそんな風に笑いながら言うな。
「僕は風水士で軽く蔦地獄とか覚えてたら、忍者になるため弓使いとシーフがんばります。
うわぁ、育成計画を考えてみたらシーフの重要性がすごいなこれ。
聞けばシーフのハートを盗むだけでクリアした人もいるとかいないとかいうくらいですし!
誉れ高いシーフ一番乗りがアグリアスさんです。いよっ、シーフの鑑!」
そ れ が 騎 士 に 対 し て 言 う セ リ フ か。
「聖剣技を素手で使うくらいの根性見せてくれればホーリーナイトのままなんですけどねぇ」
ええいっ、見習い戦士から脱し切れん貴公に言われたくないわ!
「ぶっちゃけ忍者最強だしー。肉弾戦に限定すれば剣聖より強いしー」
剣聖か……かの雷神シドほどの者が仲間になれば心強いのだがなぁ。
「ああ、チャプター4で仲間になりますよ。エクスカリバーは今回は没収しないとなぁ、残念残念」
また未来予知かぁぁぁっ!! つかチャプターって何だぁぁぁっ!?
「ちなみに今はチャプター2です。ナレーションとかちゃんと見ましょうよ。利用する者される者です」
え、何それ?
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
バリアスの丘での戦闘はとても苦しいものだった。
私の役割といったら唯一「ハートを盗む」ばかり。
父上、母上、アグリアスは殿方の心をもてあそぶ下賎な娘になってしまいました……ごめんなさい……。
ってそうなった原因はラムザだ!
このままラムザのペースに呑み込まれる訳にはいかぬ……と思っていたが、
ようやくライオネル城に到着した。オヴェリア様と一緒にラムザ一行と別れ一安心。
ラヴィアンとアリシアはラムザについて行くようだ。理由を訊いたらこう返された。
「正式に加入しちゃったから抜けられないとか何とかラムザさんに言われて……」
「実際、アグリアス様と一緒に残りたいんですけど、頭の中の何かがそれを拒絶するんです……」
どうやらいい感じにラムザに洗脳されてるようだ。
こうしてライオネル城に残った私は晴れて「縛りプレイ」とやらから解放。
城の者に頼んで武器と防具も揃えてもらった。うむ、やはり騎士たるものこうではなくては!
久々に聖剣技の練習なんかりしちゃったりして、もう気分爽快!!
今後ラムザに関わらずオヴェリア様を守護していけたら非常にありがたい。
……おや? 雲行きが怪しいな、嵐が来そうだ。オヴェリア様の様子を見に行こう。
え、面会謝絶って何? お前等通せ、こら、何だ、まさか……。
オヴェリア様の身が危ない。何とか連れ出したかったが、私一人で城を脱出するのがやっとだった。
ああ、もう、こうなったらラムザでも何でもいいから助けてくれ……。
と思ってたらバリアスの谷でラムザと遭遇。相変わらず装備無しだ。ああ、また私は引ん剥かれるのか……。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
ラムザに装備を引ん剥かれて一緒にゴルゴラルダ処刑場へ向かう。そこでオヴェリア様が処刑されるのだ。
できれば完全武装で行きたかったが、今は武装より仲間の人数の方がありがたい。
ゴルゴラルダ処刑場に到着し、二隊に分かれ突入のタイミングを計る。
オヴェリア様が、ギロチン台の上に連れられ……ラムザ、まだか!? 突入の合図はそろそろ……。
「やっほーガフガリオン、久し振りぃ」
合図だ! ……っておい何だその合図わぁぁぁっ! どこにガフガリオンがいるという、え、ええ!?
何と執行人がガフガリオン!? しかもオヴェリア様も偽者!? それをラムザは知ってたっぽい!?
「ガフガリオンの闇の剣がやっかいだ。ブレイクでも盗むでもいい、ラヴィアリ突撃ぃ〜!」
ラムザと組んでいたラヴィアンとアリシアがガフガリオンに迫る!
私は別口からムスタディオと共に突入。ラッドはなぜか来なかった。
ラムザ曰く「あはは人数制限ってものがあるんですよ」だそうだ。相変わらず意味不明。
そして、闇の剣で我々を圧倒するガフガリオン! さすがに強い……。
くっ、こちらも聖剣技が使えれば……おっ、ラヴィアンがウェポンブレイクを! ああっ、失敗した!
続いてアリシアが武器を盗む! おおっ、成功した! これで暗黒剣は封じた!
「闇の剣!」
封じられてない!?
「ああっ、しまった、壊した場合は剣技は封じられるけど、盗んだ場合はなぜか剣技を使うバグがあるんだった!」
「がっはっはっ、そンなンだからお前は馬鹿なンだよ! それでもベオルブの末弟か!?」
「末弟です! ベオルブです! という訳でさあアグリアスさん、決め台詞をビシーッと!」
き、決め台詞? ちょっ、待て、ベオルブって、いきなり言われてもだな、何の事やら……え? ベオルブ?
「さあさ、僕はベオルブですよ〜。オヴェリア様暗殺を目論んだダイスダーグの異母弟ですよ〜!
うわっ、怪しさ満々。ルグリアなんて偽名も使ってたしー。さあアグリアスさん! ご感想は!?」
え、えと、今更そんな事を言われても何と応えてよいものか……。
「信じろぉぉぉぉぉぉぉっ!! 何で! 決め台詞じゃないですか!? 何で信じないんですか!?」
え? そ、そう言われても事が性急すぎてだな、私にも考える時間が……。
「信じる心が足りない! 何ですか、DQ4から信じる心持ってこいとか難癖つける気ですか!
スクエニ合併したからDQネタもふんだんに振り込めとか言う気ですか! それともオウガネタ希望ですか!?
ああ、酷い。この日この時この瞬間のために日刊を読み続けてくれた読者もいるかもしれないのに!
良心を裏切ってまで、あなたは何がしたいんですかぁぁぁっ!!」
それはこっちのセリフだぁぁぁっ! 貴公の奇行は理解できん! いったい何がしたいのだぁぁぁっ!?
「ああ、もう、いいです。この話グダグダになってきてるし無し! 仕切りなおしましょう!
さて、武器を盗んだ事で暗黒剣の威力は弱まったからOKとポジティブに行こう!
はいはいみんなもそういう事にして戦闘再開! え、あ、次僕のターン? OK食らえ、忍者の格闘パンチ!!」
いつの間にか忍者にまでジョブチェンジしていたラムザの拳が二発! ガフガリオンに叩き込まれる!
その圧倒的破壊力にガフガリオンは撤退。忍者が強いというのは真実のようだ。
「アグリアスさんも忍者になってもらいますよ〜。
鈍足っぷりも解決しますし、僕と相性いいからチャクラで僕専用回復要員にしてもOKです!!
しかし弱ったなぁ、アグリアスさん正式加入したら今までの鍛えたジョブがゼロに戻ってるんですもの。
って訳でまた弓使いからじっくりがんばりましょうねー」
……好きにしろ。だが、いいものを見た。素手でも剣技を使おうと思えば使えるのか……。
よし! ラムザに内緒で秘密特訓をしよう! 素手で聖剣技を使えようになると信じるっ!!
アグりん的信じる心
素手で聖剣技を使える≧アリシアの財布の紐の堅さ>教会への信仰心>ラヴィアンの口の堅さ>ラムザ>ルカヴィの存在
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
ライオネル城に突入! パーティーはラムザ、ラッド、アリシア、ムスタディオ、そして私だ。
「どうせ全員前衛! もうバックアタック食らう事なんてどうでもいいが一応女性お二方は前側に」
ラムザの予告通りバックアタックを受け、私とアリシアは後衛となった。
そしてラムザは――。
「えいっ、高低差無視で飛び降り。ガフガリオンは放置して先にこっち片づけましょうねぇ〜。
地烈斬! 裏回し拳! 波動撃! チャクラ! 疾風、地烈斬! 疾風、地烈斬!!」
一騎当千なラムザにたじたじのライオネル騎士団。
ガフガリオンは城門の向こうで放置プレイ。暗黒剣の射程範囲に誰も入らないようラムザが指示していた。
「汚ぇぞラムザ! こっち戻ってきて俺とタイマンしやがれ!」
「それは前回やったからいいです。延々とチャクラで闇の剣に耐えて、仲間が来て袋叩きにするまでつらかった!
今回はそんなのゴメンですよ、ちゃっちゃと雑魚を片づけて集団リンチさせてビシッとやりますよ!
どうせ即クリスタルになっても暗黒剣継承とかできないしー。あの時の期待感を返せ! 馬鹿!!」
ラムザ意味不明すぎる。
私はというと、再びチャージパンチに逆戻りだ。アリシアは敵のハートを盗み、
ラムザとラッドは拳術や風水で次々と敵を屠っていく。
ラッドが風水を使うたび思う。あんなもん範囲が広がっただけの劣化聖剣技だ!!
ああ、不動無明剣を使いたいよう。早く秘密特訓で素手でも使えるようになりたい。
ふふふっ、そうなったらラムザの鼻を明かしてやる事もできる。
とりあえず今はチャージパンチ! チャージパンチ! よし、シーフになれるようになったぞ!
そんなこんなでライオネル城突入! ドラクロワ卿が単身で待ち構えていた。
そしたら何とドラクロワ卿がルカヴィに変化した! まさか、聖石が、伝説が真実だったとは!!
この驚愕の事実を前にラムザは!!
「バイオのチャージ中にボコるんで、みんな適当に的になっててくださいね」
鬼かお前は。
ラムザの狙い通り、固まっている我々にキュクレインのバイオが炸裂する!
状態異常に陥り、ラッドが気孔術で治癒してくれた。
今回はアリシアではなくモンクになったラヴィアンが活躍している。
波動撃で見事にキュクレインを攻撃して見せ、続くラムザの格闘ニ連撃が炸裂!
ルカヴィを素手で殴り殺すとは末恐ろしい男だ……。
今回私はほとんど出番がなかった。悲しい。
「いやぁ、やっぱ強いわ忍者格闘。でも『投げる』を使えないのがもったいないなぁ。
チャプター4になったらモンクになって、格闘+ガッツで叫びまくった方がいいかな。
それにしてもアグリアスさんを鍛え直すの面倒だなー、もう二軍にしちゃおうかな。
前回はオルランドゥ伯とアグリアスさんのツートップでガンガン行ってたけど、
聖剣技の使えないアグリアスさんなんてちょっと能力値が高いだけの人だしー」
ちょっと待て、オルランドゥ伯を仲間に加えるつてがあるのか?
「あるもなにも決まってる事ですから。まぁだいぶ先の話なんで気にしなーい。
今回はラファも使ってみようかな。真言も使ってみると結構強いって2chで見かけたし」
にちゃんって何だ? 誰かの呼び名か?
「ああ、実は僕2ちゃんねらーなんですよ。FFT関連のスレはビシッとチェックしてますよ!」
えふえふてぃーって何だ? 新種のお茶か?
「やれやれ、自分の作品のタイトルも知らないとは。アグリアスさんってばおっくれってるぅ〜」
タイトルって何だ。何のタイトルだ。本か? 劇か?
「あはははは。まあ説明するのも面倒なんで気にしな〜い」
聖アジョラよ、どうかこの意味不明男から我を救いたまえ。
「ああ、ちなみにアジョラはラスボスなんで祈るだけ無駄です。どうせ撲殺しますし」
えぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇっ!?
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
「今回は女シーフにハートを盗まれるのがやっかいなので女性陣にがんばってもらいます」
という訳で私、ラヴィアン、アリシア三人そろって炭鉱都市ゴルランドに出撃。
こんな所に敵がいるのかと思ったら、誰かが何者かに襲われていた。
「あーあ、オーランが一緒に戦ってくれるのはこのバトルだけか」
ラムザの知人か?
「いえ今回はこれがファーストコンタクトです。
仲間になってくれればムスタ用済みな超強キャラなんですけどねぇ……」
ラムザは主力の自分のハートが盗まれないように、と距離を取って風水で戦った。
アグリアスは積極的に敵男のハートを盗んだりして、ラヴィアン、アリシアのブレイク技が華麗に活躍する。
さらにオーランの星天停止により形勢は一気に有利になり、割と簡単に攻略できた。
「やっほーオーラン、仲間になってくれなくて残念だよ」
「な、馴れ馴れしい奴だな……でもまぁ、助けてくれてありがとう」
ってな感じで特に問題なくゴルランドを通過、王都ルザリアへ到着する。
そしてザルバッグ殿に協力を仰ぎに行ったラムザだが「やっぱ駄目だわあの石頭」とか言って戻ってきた。
そしてアルマ様との雑談中、異端審問官が現れる。
そしてラムザはアルマ様をボコボコにした。
……っておぃぃぃぃぃぃっ! ちょっ、何してんのぉぉぉ!
「装備をしているアルマは邪魔! どうせゲストユニットだから死なないしー」
「お前は鬼か! オーラン殿の時は何もせんかったろう!?」
「だってオーラン脱がしたらデュライ白書に酷い事を書かれそうだもん。それはさすがになー」
デュライ白書? また未来予知系の何かかー!
「さあ、ちゃっちゃとザルモゥを追い払っちゃいましょう。
アグリアスさんはナイトのハートを盗んでてくださいね」
そんな感じでザルモゥも撃破! ああ、いい加減聖剣技を使いたいぞ……。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
「痛たたた……兄さんったら、戦いに巻き込まないために気絶させてくれたのは感謝するけど、
もう少し加減してもらいたいわ……」
ラムザからはそう説明されているのですか……。
「ええ、そうだけど……どうしたのアグリアスさん?」
いえ、何でも。
「そう? ところでどうしてみんな素手で戦ってるの?
噂のスペシャルバトルモンク集団に対抗しようとか、そんな感じ?」
そんな集団があるのですか。全員モンク、なるほど、意外と強いやもしれぬ。
「と、いう訳でアグリアスさん。モンクにジョブチェンジしましょうか」
ら、ラムザ!? 唐突に何だ!
「ナイトのジョブポイントはラヴィアンのおこぼれのおかげでクリアしました。
弓使い、シーフも忍者に必要な分は稼いでる。後は風水士目指してモンクですよモンク」
剣士ならぬ拳士といったところか。まあシーフよりはマシか……。
「モンクも適度におこぼれジョブポイント入ってますね。
とりあえず波動撃あたり習得して火力上げましょう。次はチャクラ、地烈斬の順で。
拳術は色々と役立ちますからねぇ。さあ、アグリアスさんファイト!!」
こうして私は波動撃を習得したが、これがなかなか強力で驚いている。
しかも出し方が聖剣技に通じるものがある。波動撃を究め、地烈斬を習得すれば、
もしかしたらいつぞやのガフガリオンのように素手で剣技を放てるやもしれぬ。
よぉし! 希望が湧いてきたぞ、次はどこだ? オーボンヌ修道院? 腕が鳴るわ。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
アルマ様と別れ地下を目指す。もう素手での戦いに慣れたため、雑魚はスラスラ倒せた。
イズルードとかいう奴もラムザとラッドの地烈斬連発で蹴散らし、
続いてラムザと因縁あるらしきウィーグラフなる者と戦った。聖剣技を使われた。
お、の、れ、えぇぇぇっ!! こちらは使いたくとも使えないというのに!
そこで怒りが限界突破した私はついに! ついに聖拳技を放つ!
命脈は無常にして惜しむるべからず……これが咆哮の臨界!
不 動 無 明 拳 !!
すでにラムザの拳を受けて瀕死だったウィーグラフは、我が聖拳の前に撃沈する!!
見たかラムザ! これが私の真の実力――。
「はいぃぃぃっ! 指導指導指導、教育的指導ぉぉぉっ!!」
連続拳の要領で私の頬に往復ビンタをかますラムザ。頬がジンジンと痛む。
ななな、なぜだ!? 聖剣技を聖拳技にしただけだぞ? 何か問題が!?
「縛りプレイしてんのにバグに頼るとは何事かぁぁぁっ!! 裏技もバグ技もチートも禁止!
それを、それをアグリアスさんは破った! プレイヤーの良心を裏切った! クリエイターを侮辱した!
はい教育的指導おおおっ! 騙された! 黒本級にアグリアスさんに騙された!
1stプレイで最前線で活躍していたから今回も使おうと思ったのに!
雷神シドが仲間になってもアグリアスさんはしっかり育ててたから一軍キープな彼女に期待していたのに!
アグリアスさんはもう台無しです! はい指導指導ォー!」
落涙しつつ往復ビンタを続けるラムザ。それほどまでに悲しい事を私はしてしまったのか……?
っていうかこっちもそろそろおたふくみたいになってるので堪忍してください、マジで。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
先日の失態(聖拳技事件)により私は二軍に落とされてしまった。
その間にマラークがどうとか何か事件があったらしく、ラファとかいう娘が仲間に加わった。
「ラファー! 前回のプレイじゃ役立たずと思って使わなかったけど、今回は期待してるよ!」
「は、はぁ……期待に応えられるようがんばりますね。ところで前回って何ですか?」
ラムザの電波発言に引き気味のラファ。昔の自分を彷彿とさせる。
「ははは、気にしない気にしない。さぁラファ、チャプター3が終わるまでゲスト参戦よろしくね!」
「チャプター3? それって何ですか?」
「そぉれ、とっととマラークを仲間にしにリオファネス城に行くぞー! マラークも試しに使ってみようかな!」
「ま、まだ兄さんを説得できると決まった訳じゃ……」
「できるできる! あはは、前回はあまりの駄目っぷりに除名しちゃったもんなぁ」
ハイテンションなラムザはユーゴォの森も軽々と突破しリオファネス城へ到着する。
城門前で口論するラファとマラークを気にもかけず、ラムザの拳術が炸裂する!
私か? 私はまだ謹慎処分だ。ううっ、情けない。
そんなこんなでラファとはぐれて城内突入。ラムザがウィーグラフと一騎打ちを始めた。
「無双稲妻突き!」
「瀕死HP回復。はげます」
「無双稲妻突き!」
「瀕死HP回復。エール」
「無双稲妻突き!」
「瀕死HP回復。ためる」
自己を超強化するラムザと、延々と同じ愚行を繰り返すウィーグラフ。
もう哀れなほどピエロなウィーグラフを、徹底強化ラムザが一瞬でボコボコにする。
「ウボァー。やはりこのままでは勝てんか、ならばベリアスに変身!」
「OK僕も仲間を呼ぼう。おいで、ムスタディオ、ラッド、ラヴィアン、アリシア」
「さあいざ尋常に勝負!」
「電光石火のスピードでベリアスの横に回り込み二刀流格闘パンチ」
「ウボァー」
終わった。早い、早すぎる決着だった。ああもう私の出番は今後無さそう。
……出奔しちゃおうかなぁ……。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
「参ったなぁ……」
ルカヴィ、ベリアスを倒したラムザが頭を抱えた。
「次のエルムドア侯はさすがにきっついよ。遠距離攻撃できる仲間が必要だ。
ラッドは拳術と風水あるだろ? ムスタディオは狙撃と戦技要員だしなぁ……。
ラヴィアンも一応波動撃使える、これで3人。アリシアはシーフ止まりだし……ボコ入れてもなぁ……。
さすがに超強化してない僕一人じゃきついかもしれない。んー、久々にアグリアスさん入れるか」
私はくれぐれも聖拳技を使わないよう念を押され、何とか戦線復帰した。
屋上ではマラークが倒れ、ラファがエルムドア侯爵と二人の美女に追い詰められていた。
「戦いにくい地形だ……」
忍者になった私は、その機動力を生かしできる限り素早く敵陣に突っ込む。
先んじていたラムザが攻撃していた美女に向かって波動撃を放つと、それだけで撤退に追い込めた。
「やっぱりアグリアスさんはレギュラーに入れる予定で鍛えてたし、忍者になれる数少ない仲間だし、
もうあんな事しちゃ『メッ!』ですよ?」
解った解った留意しよう。貴公の訳の解らんこだわりにつき合ってやる。
そんなこんなで色々あってマラークが生き返って、ラムザが着替えてきた。
そしてなぜかラムザは雄たけびを上げる。
「よぉし! 『叫ぶ』を習得したぞ。モンク+ガッツ+二刀流の組み合わせ、こいつぁ行ける!!」
どうやら新しいアビリティを習得したようだ。
そして、
「ラファ! マラーク! 魔法禁止プレイとはいえ真言と裏真言は魔法とは微妙に違う! MP使わないし!
これは固有ユニットの個性! だから! だから君達が仲間になるのを待っていた!
さあその威力をぜひ僕に見せておくれー!! あーっはっはっはっはっはぁっ!!」
ラムザがスーパーハイテンションモードに突入する。
戦力アップは嬉しい。が、ラムザはなぜか戦闘は五人というポリシーがあるらしいから、誰かリストラされそう。
「拳術に風水のラッドか、狙撃に戦技のムスタディオか、どっちを残そうかなー。ラヴィアリはもういいや」
もういい扱いされたラヴィアンとアリシアにその晩、私は酒をおごってやった。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
ドグーラ峠を訪れた我等。敵の待ち伏せを受けていた、さて、どう戦うか。
「敵は野郎ばかり、ハートを盗むが便利だから今回はアリシアを入れよう。後はアグ、ラファ、マラで。
アグリアスさんはモンクになって盗むをセット。拳術とハートを盗むを駆使してもらいますよ!
ラファとマラークは真言の威力をぜひ見せてください。ゲスト時は馬鹿で使いにくかったですから!」
ラムザの暴言に傷つきつつラファとマラークはバトルに参加する。
「死の記憶に眠る音の響きの全てを閃光とともに降ろさん……天鼓雷音!」
閃光が五発。うち二発が一人の敵に命中しHPを削り取る。
「おおっ、これはなかなかの威力だ。ラヴィアリより役立つ! 敵が固まっていればなおよしだな!」
「黒竜王、その哮りを嵐となせ、天下無双の破邪の印!」
「おおっ、マラークもやってくれるか! さて、フェイス無視の真言と違い、裏真言は……」
「裏天鼓雷音! 」
四発出た。三発当たった。でもダメージはラファの二発分以下だった。
「……うわぁ……微妙……。OK! マラーク戦力外通告ね」
「ウソっ!? ちょっ、待てラムザ! お、俺はフェイス低いから魔法攻撃に強いし便利だぞ!?」
「アリシアー、もっと胸の谷間を魅せつけるようにしてハートを盗むんだ。色気で勝負なんだから」
「おぉーい! 無視すんなぁ!!」
マラークが戦力外通告されているかたわら、私は全力で波動撃や地烈斬を駆使して戦っていた。
やはり装備無しの戦いはつらかったが、慣れると奇妙な充実感が湧いてくるから不思議だ。
ラムザはこの感覚のために『縛りプレイ』とやらを始めたのだろうか?
今後も切磋琢磨し、素手でどこまで上り詰められるか挑戦してみよう。
そんな感じで自治都市ベルベニアに到着した途端、ラムザが叫んだ。
「ついに来た1stプレイの悪夢! メンテナンスでOKと知らず装備を破壊されながら戦ったあの日!」
いきなり何の話だ。
「この『縛りプレイ』の半分はこの戦いのためにあったと言っても過言ではない!
さあ、メンテナンスなどと小賢しい真似はしない! 正面から堂々と我等裸軍団と戦おう! メリア!!」
「な、なぜ私がいると解ったの!? それに名前まで!」
突然出てくる緑頭巾の女。神殿騎士団と思われるが、誰? 知り合い?
ああ、そうか、また未来予知系のアレね。うん、もうツッコミ入れない。アグりん疲れちゃった。
「最近、忍者だとアクションアビリティが一個つかえなくてもったいない事に気づいた僕は、
モンク+二刀流の鬼攻撃力をガッツで補正するという極悪非道な強さなのだ! 裸ナメンナ!」
高低差無視で敵騎士メリアドールに突撃していくラムザ。
私は地道に徒歩で近づきつつ、風水で敵を攻撃する。
メリアドールは装備破壊で恐れられる剛剣の使い手らしく、装備無しの我々に直接攻撃あるのみだった。
そのため、叫んで気合を入れたラムザの『ハメどる』の餌食になってしまい、呆気なく戦闘終了。
「いやぁ、気分爽快スカッと爽やか! 裸万歳! もうラムザっていうより裸ムザって感じ?」
裸、裸と連呼するな。一応私服は着たままなんだから、もう……。
「さあガンガン攻略するよー! 次はフィナス河だ。
こりゃHPの無さがつらい、チョコメテオとチョコボールの嵐だ!
レベル上げまくって力ずくで突破する手も通用しないモンスター軍団。みんな、がんばろう!」
今日も未来予知絶好調らしい。そうか、次はチョコボの大群が敵なのか。
次のフィナス河では、私とラムザとラッドが風水『水塊』で敵をカエルにしまくる事で何とか突破した。
何と『水塊』で敵をカエル化成功率は尋常なものではなく、最大五連続くらい成功した。
もし『水塊』で相手をカエルにし損なった回数があとひとつふたつあれば負けていただろう。
「いや、実際負けてましたよ。GAME OVERだから記憶に残らないでしょうけど、
風水がビシーッと連発で決まるまで十回近く全滅しましたし。リセットしまくりだったよ、あはは」
え、何の話?
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
ゼルテニア城町外れの教会にて。
ラムザが高低差無視ジャンプで一気に天辺まで駆け上り、ザルモゥを二刀流パンチで即勝利しました。
わずか一行で決着をつけたラムザは破竹の勢いでベッド砂漠に向かい、
陣形をうまく組んで敵から毒を食らうや即座に気孔術で回復をし、いつもの調子で敵をボコボコ殴り倒した。
私も地烈斬で敵をガンガン攻めてやったし、ラッドも地烈斬使いまくったし、ムスタディオも狙撃で敵を封じたし、
ラファの真言もなかなかの命中率を見せ今ではすっかり主力となっている。
裏では出番の無いマラークがラヴィアンとアリシアと仲良く遊んでいた。
顔に似合わずモテるようだな、と思ったが、ラヴィアンもアリシアも年下の弟ができた気分らしい。
そんな三人をほっぽいて我々はベスラ要塞にまで突入し見事水門を開けオルランドゥ伯を救出!
夢にまで見たあの騎士剣、エクスカリバーを見た時はもう興奮のあまり鳥肌が立った!
「じゃ、持ってても悔しいだけだから未練を断ち切るためにお店に持ってって売っちゃおうか」
っておいぃぃぃぃぃぃぃっ!! 伝説の名剣をただの武器屋に売り払ってんじゃな〜〜〜〜い!!
ツッコミに疲れた私でもさすがに奮い立つわエクスカリバー店売りなんて!!
「アグリアスと申したな」
あ、オルランドゥ伯が話しかけてきた。ええ、私はアグリアスと申します。
「ラムザの奴、もしや『縛りプレイ』とか言っておらんか?」
ええ、よくご存知で。
「そうか……実はバルバネスの奴も『縛りプレイ』と称して、アビリティの使用全面禁止してきた事があってな」
な、何とー……。
「全剣技を封じられ、エクスカリバーでの直接攻撃だけで五十年戦争を潜り抜けたものだ。
エルムドアの奴も正宗が無ければどうなっていた事やら……それが今度は装備禁止ときたか。血は争えぬ」
あのー、伯、畏国が敗戦した理由ってもしかして……。
「もしかしなくてもバルバネスのせいだ……貴公はかつての私を見ているようで、不憫でならぬ」
伯もご苦労なさってるようで……。と、そこにラムザがやって来た。
「オルランドゥ伯。全剣技が使えない今、多少ステータスが高くとも、アビリティ不足のあなたは不要です。
一応顔キャラ揃えたいので除名はしません、馬車の荷台を尻で磨いといてくださいね☆」
ああ、やっぱり鬼の子だわラムザ。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
ゲルミナス山岳で盗賊に襲われた。ラムザがコテンパンにぶちのめした。
ポエスカス湖でお化け軍団に襲われた。ラファの阿修羅が火を吹いた。
ランベリー城でセリアとレディに襲われた。ラムザの拳が味方相手に炸裂した。
それでも必死にセリアとレディを攻撃したら前回みたく撤退してくれた。
城内でエルムドア侯と戦った。ダテレポ+吸血は恐ろしく短期決戦に挑み何とかしりぞけた。
地下墓地に戦場が移った。死の天使ザルエラに変身した。メリアドールが来て仲間になった。
久々に武装した人間が一緒で心強かったが後ろの方でスケルトンと戯れててあまり役に立たなかった。
ザルエラはチャージ中の隙を突いたラムザの鉄拳と我々の苛烈な攻撃で呆気なく沈んだ。
「いやぁ、ランダムバトルとかで何気にレベル上げしまくってたせいか楽勝ですねぇ。
メリアドールが仲間になった事だし、さっそくセイブザクィーンを店売りしちゃいましょうか」
あああっ! エクスカリバーほどではないがそれもまた伝説的な名剣なのにぃ……。
いつかラムザはもったいないお化けに叱られると思う。もったいないもったいない……ひゅ〜どろどろ。
そんな感じでとっととイグーロス城へ向かう一行。ダイスダーグの手に聖石が渡ったらしい。
「さて、サクッとヒゲ兄さんを殺しに行きますか」
え、ダイスダーグ、ルカヴィ化確定なの? っていうか実兄の命の扱い軽っ。
イグーロス城ではやっぱりラムザが安全地帯でガンガン叫びまくり、
私達がチャクラやら何やらで時間を稼いでる間に超パワーアップして、一騎当千の戦いをしてくれた。
ザルバッグ殿も弟の成長っぷりにびっくり仰天。見事ダイスダーグをボコり倒した。
そうしたら以前のウィーグラフの如くダイスダーグがルカヴィに変身! ザルバッグ殿が消された。
「それじゃ兄さん、ミュロンド寺院で成仏するまでバッハハ〜イ」
軽っ! 今生の別れじゃないのこれ!?
そしてミュロンド寺院に行ってみたら本当にザルバッグが待ち構えていた。
ラムザ、貴公の未来予知はもう疑いようがないな。
「未来予知っていうか単に二回目なだけです。シナリオ一本道だし。
タクティクスオウガはみっつもあったのにー、ブー。
あ、ちなみに一番好きなのはLルートです。漫画版もLでしたね、主人公が手を穢すのに燃えます」
また意味不明な言動を……まあ、いつもの事だからツッコミは入れないよ。
「って訳でちゃっちゃと兄さん昇天させてヴォルマルフを――」
追うのだな?
「追わずに、サブイベント攻略としゃれ込みましょう。レーゼと労働八号を主力に入れる予定なので。
あの二人なら裸でも超絶的な戦闘力で大活躍間違いなし! ラファもなかなか強いし、裸プレイ最高ォッ!!」
裸言うな裸。
――という訳で我々はゴルランドの炭鉱に行ってベイオウーフ殿とレーゼを仲間にしたり、
ゴーグに行って鉄の塊を発見して労働八号を仲間にしたり、ネルベスカ神殿でレーゼを人間に戻したり、
異邦人クラウドを召喚してザーギドスで正式に仲間にして火山登ってマテリアブレイド手に入れて売り払ったりした。
「という訳で最終メンバーが確定しました。
モンク+ガッツで、二刀流をセットした僕。
モンク+盗むで二刀流をセットしたアグリアスさん、ハート盗み要員も兼ねてます。
真言専門のラファ。素で撲殺女王なレーゼさん、残念ながら二刀流習得は面倒なのでパス。そして労働八号。
ふはははは、完璧だ! とっととオーボンヌ修道院に行ってハイレグ天使を拝んでくるかぁ」
ラムザ、酒場でディープダンジョンなるものの情報を入手したのだが……。
「メンドイからいいです。どうせアイテム使わないからレアアイテム発掘意味無いし、
魔法禁止だからゾディアークのラーニングもできないし、行く価値無し無し。スルー推奨」
あ、そう。もう好きにしろ。
*
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
「これが最終決戦です。皆さん、ふんどし締めてガシッと行きましょう」
これこれラムザ、我等装備禁止だからふんどしなど締められぬわ。
「ここに来てアグリアスさんに一本取られるとは、こりゃ参ったね!」
そんな感じで和気藹々とオーボンヌ修道院に向かう中、既視感を感じていた。
前にもこんなような事があったような? まあいいや。
オーボンヌ修道院で待ち構えていた神殿騎士団を鍛え上げた鉄拳で粉砕していくラムザ。
私も拳術とハートを盗むを巧い具合に活用して敵を翻弄する。ラファの真言の命中率もなかなかだ。
レーゼの豪快なドラゴンパンチはラムザと比べても遜色は無く、相手を次々打ち砕いて邁進する。
さらに鉄巨人労働八号は「処理する」で敵を処理しまくり、
近づいてきた敵にはカウンターで文字通りの鉄拳でカウンターをぶち込む。
「うわははは! 裸軍団の快進撃は留まる事を知らず!! それゆけデジョン異世界へー!!」
ちょっ、異世界って何だ!? そんなツッコミも虚しく、我々はデジョンで変な世界に飛ばされる。
ああ、どうせ結果が同じならツッコミなんかするんじゃなかった。疲れるだけだもう。
一度倒したはずのバルクがいたけど、レーゼが次々とティアマットやハイドラを従えたため阿鼻叫喚。合唱。
トントン拍子でついにヴォルマルフを追い詰め、素手でタコ殴りにする。袋にする。微塵ほどの容赦も無く。
ハシュマリムとかってルカヴィになっても、我等の拳の前には無力也。
そんなこんなでアジョラ復活。聖天使アルテマを名乗り我々の前に――。
「わーい、ハイレグ天使! ハイレグ天使!」
喜ぶなアホ者!! まあ確かに聖アジョラがあんな格好では笑えるが、ええい、卑しい奴め!
「という訳で電光石火でハイレグ天使をボコボコにしちゃいましょう」
ボコボコにした。
「って訳で聖大天使に変身したんで続けてボコボコにしちゃいましょう」
ボコボコにした。
「って訳で縛りプレイクリアです、お疲れ様ー!!」
世界が閃光に包まれる中、ラムザは楽しげに叫んだ。あー、ようやく終わるのね、安心安心。
こうして私は『縛りプレイ』とやらから解放されたの。最後の方はそれなりに楽しかったしまあいいか。
「え、じゃあ次も――」
めでたしめでたし。
私の名はアグリアス・オークス。正義のために私は今日も戦う。
南天騎士団の男(名をディリータというらしい)にオヴェリア様が誘拐されたため、
私達は後を追うべく貿易都市ドーダーへ赴こうとした。
敵が待ち構えている可能性を考え、武器の手入れもしっかり――。
と、そこへラムザという若い傭兵がやってきた。どこかで会ったような、懐かしい雰囲気を持つ青年だ。
彼は言った。
「アグリアスさん、黒魔にジョブチェンジしてください。今回は全員魔法系ジョブクリアです。
算術はもちろん基本技もアイテムも禁止。物理攻撃力に期待できない今、頼れるのは魔法だけ!
前回より簡単かもしれませんが、これはこれで趣があって楽しいですよ。
前回ラストではアグリアスさんも縛りプレイの快楽に目覚めてたようですし、がんばりましょうねー」
何言ってんのこの人。あ、何か既視感が……。
ドドドドドドドドド
「終わりが無いのが終わり、それがゴールドエクスペリエンスレクイエムです。あははははははっ」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド
縛りプレイで行く! 完!