氏作。Part29スレより。




ラムザです。
今、貿易都市ウォージリスにいます。貿易都市だけあって色々な品が目に止まります。
いつも戦いばかりなので今日はみんな自由行動って事にしてみました。
朝食の席で僕はラッドと一緒でした。
隣の席にはアグリアスさんがアリシアとラヴィアンと一緒に朝ご飯を食べてました。
朝の爽やかな挨拶の後、僕はラッドと雑談をしつつご飯を食べました。
柔らかいパンにトマト一個と豆のスープ。倹約のため質素な食生活を送ってます。
でも今日は自由行動だから、それぞれのお小遣いの範囲で美味しいご飯を食べたりするんだろうなぁ。
見ればアグリアスさん達なんかさっそくブルーベリーのジャムを塗った食パンと、
色とりどりのサラダと、肉の入ったスープを食べてます。
おいしそうですねって言ったら、少し食べるかと進められましたが、お断りしました。
それで、ラッドと雑談したんですけど、ラッドは今日、ガラにも無くお芝居を見に行くそうです。
明らかにラッドの趣味ではないので、おかしいなと思いました。
ラッドも芝居自体にはたいして興味を持ってないようです。なのにどうしてお芝居なんでしょう。
隣でラヴィアンが「そーいえば、アリシアってお芝居好きだったわよね」って言ってました。
そしたらなぜかアリシアがプイッて顔をそむけて、何だか話題を避けてるみたいでした。
それはともかく、ラッドは僕にどう休日をすごすのか訊ねてきたので、
僕はとりあえず海外からきた物珍しい商品を見て回りたいと答えました。
平和な朝でした。


商店街を歩いているとアグリアスさんとバッタリ会いました。
「きき、奇遇だな、こんな広い街で出会うなどと」
ええ、本当に奇遇です。では。
「ま、待て、ラムザ。どうせなら一緒に見て回らんか?」
断る理由はありません。ええ、いいですよと僕は応じました。
それから商店街を見て回りました。
特に目に留まったのは、はるか東方の髪飾り『かんざし』です。
いつか養豚してリボンをいっぱい手に入れたいなぁと思ってる身としては、
頭につける装身具というのは何だか神々しいものを感じてしまいます。
黄色く塗られて彫られて菊をかたどった竹のかんざしを、アグリアスさんが物欲しそうに見ていたので、
日頃の感謝の意を込めて買って上げました。
そうしたらとても喜んでくれて、こちらとしても嬉しくなります。
鏡の前でうっとりしているアグリアスさんを見ていて僕に妙案が浮かび、さっそくそれを実行しました。
その後、アグリアスさんと一緒に食事をしたり、他のお店を回ったり、とても楽しくくつろげました。
アグリアスさんは今までにないほどご機嫌です。こんなアグリアスさん初めて見ました。
宿に帰ると、マラークとラファが夕食を食べていました。
そこで僕は、昼前に思いついた妙案をさっそく実行に移します。
買い物袋から黄色く塗られて彫られて菊をかたどった竹のかんざし取り出し、ラファの髪に刺して上げました。
日頃の感謝です。
それからメリアドールもちょうど帰ってきたので、彼女にもかんざしをプレゼントしました。
アリシアとラヴィアンはまだ帰ってきてないようです。
そこでかんざしを二本、アグリアスさんに預けました。
僕から日頃の感謝を込めての贈り物だと、アリシア達に渡してくださいと頼みました。


かんざしを受け取ったアグリアスさんはプルプルと震え、顔を真っ赤にして「バカーッ!」と殴ってきました。
意味が解りません。彼女はなおも僕を殴り続けます。
それからしばらくしてラッドとアリシアが帰ってきて、アグリアスさんをなだめてくれました。
もう少し帰ってくるのが遅かったら今頃綺麗な川の流れるお花畑で父上と再会していたと思います。
それからアグリアスさんはかんざし二本をアリシアに投げ渡し、宿の部屋へと駆け込んでしまいました。
意味が解りません。ラッドが「お前アホだろ」と言ってきました、アホじゃありません失礼な。
その日の夕食は、殴られた拍子に口の中を切っていたので、沁みました。悲しいです。
夕食後、ほろ酔い状態でラヴィアンが帰ってきました。
日頃の感謝を込めて贈り物があり、それをアリシアに預けてあると知らせると、
彼女は「おーさすがラムザ様、サンキュー!」と喜んでくれました。
それから彼女は千鳥足で二階の部屋に向かい、アグリアスさん達の女性部屋に向かいます。
アリシアー! ラムザ様からの預かり物、見せて見せてー」
ドアを開けっ放しなのでしょうか、ラヴィアンの大声がよく聞こえます。
「おおー、髪飾りですか。それじゃラヴィアンちゃん装着しまーっす。ヒック、うぃ〜」
 どうですかアグリアス様ー。似合いますかぁ? いやぁ、ラムザ様からもらっちゃいましたよ。あっはっはっ」
よかった、ラヴィアンも喜んでくれてるようで――。


ドカーン。ドゴンドゴンドカドカ、ギッタンバッタン
やけに二階が騒がしいです。女三人寄れば姦しいと言いますが、その通りですね。
フェニックスの尾ー! フェニックスの尾はどこー!?」
アリシアの叫び声が聞こえました。フェニックスの尾が必要とは、いったい何があったんでしょう?
まあアグリアスさんが白魔法レイズを使えるから、フェニックスの尾は必要ないでしょう。
まったく、アリシアはその事を忘れてるんだな。おっちょこちょいさんめ。
しかしどうしてフェニックスの尾なんか……さてはラヴィアン、酔っ払ってすっ転んで、
打ち所が悪かったとかベタな事をやっちゃったりしたんだな。さっきの物音はきっとそれだ。
まったく、ラヴィアンまでおっちょこちょいさんなんだから。
我が隊はおっちょこちょいさんが多いみたいですね。



おしまい