氏作。Part24スレより。


 やあラムザ
 こんな所に呼びつけて、私に何の用だ?
 ……なに、呼んでなどいないって?
 そんなはずはなかろう、先刻ラヴィアンがやってきて、お前が私を……。
 ……ははあ、どうも私はまたからかわれたらしいな。
 まったく、困った部下だ。何度言っても聞かぬのだから。


 ……い、いや。私の方からよく叱っておく。お前は別に気にせずとも良い。



 …いい天気だな。
 羊雲が、あんなに群れている。
 春が近いのだな……。
 ………今日は双魚の月の……何日だったかなラムザ



 うん? いや、私は別段……、特に用は無い。
 ……お前の方こそ、私に何か用は無いのか?


 …………そうか。それならいいんだ。



 ……いい天気だな。…本当に……。







 
 ……なあ、ラムザ。こんな話を聞いたことがあるか?
 昔の話だ。白い衣装を身に纏った聖人がな……。





 ……え?
 ……………邪魔?
 ………私が……?





 ……そうか、それはすまなかった。
 そうだな、貴公は隊長だ。さぞかし多忙な身なのだろうさ。
 昼間からこんな所に、一人でいるくらいだからな。 
 ゆるりと過ごすといい。望み通り、邪魔者は消えてやる。
 さっきから何をちまちまと繕っているのか知らないが、気兼ねなく続けるがいい。
 手袋だと? 何でもいい。手袋だろうが足袋だろうが好きなだけそこで作っていろ。




 ……手袋? 貴公の手には、それでは少し小さいのではないか?
 自力で作ろうという志は立派だが、技術が伴っていないようだな。
 ほう……、貴公のではない、と言うのか。結構ないいわけだな。
 いいとも、それでは誰がその貧相な手袋の受け取り主なんだ? ラムザ






 ラムザ
 それは負け惜しみのつもりで言っているのか、ラムザ
 お前……お前には、私がもう手袋を着けているのが見えないのか?
 第一、そんな……娘らしい柄が、ラムザ、私に似合うとでも思っているのか?


 だ、誰が貧相などと言った! 小さな、と言ったんだ。私はそんなことは言わない!
 いやしくも私は騎士の身、人の厚意を無下にするようなことはしない。
 しかしだな、そう言ったものならば、私などよりもずっと相応しい相手が………
 



 ……うん。
 待っている。…………ありがとう、ラムザ








 ……そうだ、アリシアの奴を叱っておかなければ。
 え? ……いや、ラヴィアンではない。アリシアと言ったぞ。そうだ……言った。
 そ、それではなラムザ。お前もほどほどにして街に戻るようにな。









 うん、街はそっちだな。
 別に間違えたわけじゃないんだ。





 終





この前の話へ