氏作。Part18スレより。


 アグリアスの機嫌が悪い。
 まぁ、たまにある事だ。原因は不明だが、すぐに機嫌はよくなるはず。そう考えて、なるべく触れないよう皆で行動。
 町について買い物をし一晩泊まってから仕事を求めて再び出発。
 アグリアスの機嫌は良い。
 寧ろ上機嫌である。戦闘も実に張り切り非常に助かった。
 しかし次の日の朝。彼女の機嫌はすこぶる悪かった。
 どれくらい悪かったかというと挨拶がてらに肩をぽんと叩いたムスタディオがその日の戦闘に参加できなかったくらいに機嫌が悪い。
 何があったかは心の中でそっと察しておいてほしい。
 暫く不機嫌だったがある日ラムザが彼女と二人きりで会話し紆余曲折あった末になんとか落ち着いた。
 別に何かしたわけではない、話しただけである。とは本人の弁。
 そこら辺が気になったのは例によってラヴィアンやムスタディオといったメンバーであり、真相を知ろうとしたが故に数人アグリアスの剣の犠牲になった。
 その中にムスタディオの名前が例によってあったことを此処に記しておく。まぁ別に死んだわけではないのでご安心を。


 さて、再び異端者ラムザ一行は街に着いた。仕事もあったのでメンバーを派遣しつつ久々の暖かい布団で暫しの休息を得るメンバー達。
 ラムザオルランドゥ伯と剣の稽古をしたりベイオウーフは言わずもがなレーゼを熱く甘い一時を過ごし(子供は見ちゃ駄目!!)アリシアとラヴィアン、メリアドールは談笑したりなんだり。
 ムスタディオも酒を飲みワハハと笑いそれに付き合ってラッドもちびちびと酒を飲み更にはマラークも酒を飲まされ潰れたりそれに渋々付き合うラファが傍にいたりした。
 労働八号とクラウドは何やらよくわからない会話を交わしつつ案外楽しそうにしていた。その後乱入してきたムスタディオ達とやっぱり酒を飲んでどうたらこうたら。
 その時、我等がアグリアスは無論上機嫌だった。小さく鼻歌を歌ったりしてるところがかなりの上機嫌であることを表しているだろう。かなり。
 とりあえず街に滞在している間は皆とても楽しんだ。
 だが彼らは異端者。そう長い間同じ町にいるわけにはいかないのだ。顔がばれぬように彼らはそっと街を出た。
 それまでは、アグリアスも上機嫌だったのだが。



 彼女は震えていた。彼女は怒っていた。彼女は悲しんでいた。
 目の前にある光景が信じられない。否、許容することが出来ないのだ。
「わ……」
 声が震える。無理もない、彼女は本当に怒り悲しみ嘆いているのだ。
 そう、今にも泣きそうな彼女は、ぎりりと奥歯をかみ締めて目の前の”箱”の中身を凝視した。
 そして、叫ぶ。


「私のケーキがなぁぁぁぁぁーーーーーーい!!!!」


 箱の中にはスポンジの残骸とクリームが少々。ついでに申し訳なさそうにチョコの欠片がぱらぱらと入っていた。




   ──アグリアスさんのケーキ事情──




「誰だぁぁぁぁぁーーー!!」


 夜、である。ラムザ一行は適当な場所にキャンプを張り武器の手入れなどをしてからさて寝ようかと各自自分達のテントである程度寛いでいた。
 そんな中彼女、アグリアスは夜で見張りでもないのに完全武装。その手に剣を構えてテントの外へと躍り出た。
 最初の被害者はその日見張りに立っていたマラークとラッドだった。
「な、アグリアス、一体どうし──」
 口を開いたのはラッドだった。武器を構えて完全武装し突如現れたアグリアス。そりゃ疑問に思わないほうがおかしいだろう。
 アグリアスの眼は血走り息は荒く今にも人を斬りそうである。
 兎に角事態を把握しようとラッドが口を開いた。まさかモンスターの襲撃でもあったというのか。
「いきなり何」
「貴様かぁぁぁぁーーー!!」
「をブチッ!?」
 喋ろうとした途端アグリアスのドロップキックが炸裂。ラッドは台詞の途中だったのだが軽く2メートルは浮遊し地面に墜落した。哀れ。
 顔面からは血が、ていうか主に鼻から綺麗に血を噴出しラッドは倒れている。その顔が何処か幸せそうなのは彼がMだからではない、決して。



 さてその光景を見たマラークはぴたりと動くのをやめた。
 彼の本能が、というよりは天冥士としての意思が言葉を綴る。つーか天冥士ってそういう職業じゃないよね。まぁいいや。とりあえず綴っていた。
 ───やばいってマジデ。今のアグリアスは何処となく危険な香りのする狂戦士のイメージがある。ていうか危険の香りのしないバーサーカーっていないよね(はぁと)
 なんて軽く現実逃避をしてから正気に戻るマラーク。原因が倒れて痙攣するラッドを見たからなのは少し悲しいところであるが。
 とりあえずマラークは考える
。今とるべき行動は何か。

 大声を上げる→多分斬られる。
 そっと立ち去る→背中から蹴られる。
 立ち向かう→相手は前衛。
 このまま→結果の後伸ばし。
 謝る……これだ!


 謝ることを思いついたマラークの頭の上にはピラリンと電球が浮かんだ。イメージは閃き。ゲームが違う。
 アグリアスはスタっと格好良く着地していた。本来ドロップキックを放ったら自分も倒れるものだが彼女は見事空中で身をひねり両足で着地した。人を軽く超えたイメージがある。
 血走った眼がマラークを突き刺す。次の瞬間マラークは人生で最も早く動いたと自覚できるほど迅速に行動した。
「ごめんなさ──」
「貴様も食べたのかぁぁーー!」
「いプシロンっ!?」
 土下座スタイルまでもってって頭を地べたに擦り付けたところで頭上から鉄槌(ていうか拳)が振り下ろされた。見事地面に埋没するマラーク。合掌。
 さてそれだけ騒げば流石に周りのメンバーも気づくことは気づく。何事かとテントから眠そうな目をこすりつつ顔を出す。


 目の前にあったのは顔面から血を流し倒れているラッドと地面に顔面を埋めてピクリとも動かないマラーク。そして狂戦士の如く血に飢えた目で辺りを見回すアグリアスだった。


 一体何事、と考える前にまず目の前のバーサーカーをなんとかせねばなるまいと何故か全員が思った。



 ふしゅるるるるる……とちょっとこのスレではありえないくらいに暴走してるアグリアスの吐息が漏れる。”吐息が漏れる”って書くと色っぽく感じるが状況は全くもって正反対だった。


 さてどうするか。兎に角今すべきなのはラッドの救出でもなくマラークの発掘でもなくアグリアスの暴走を止めることにあった。


 ラムザが視線を動かしオルランドゥに合図を送る。それを受けてオルランドゥは静かに頷きベイオウーフに同じように合図。横にいたレーゼと共に頷く。
 ムスタディオは冷や汗を流し捲くり目の前のアグリアスに恐怖していた。彼は運の悪いことにアグリアスの真ん前のテントから顔を出していた。睨みあい、というか睨まれてる形だ。
 メリアドールはいつもど違うアグリアスの雰囲気に「こんなにプレッシャーを感じるなんて」と少しショックを受けていた。ちょっとずれてる。
 労働八号は場をじーっと見つめクラウドアグリアスから発せられる感覚に萎縮しそれでもなお両足を踏ん張って彼女を睨みつけている。ちょっとお前等もなんか違うよね。
 ちなみにアリシアとラヴィアン、ラファはその時素敵に寝ていた。別に書くのが面倒くさいわけじゃない。マジで。信じて。お願い。


 こうして停滞してても変わらない。アグリアスはその赤く輝く血走った眼をムスタディオに向けながら両足に力をこめ───飛び掛った。


「ぎぃぃやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


 夜。木々に止まり眠っていた鳥達はばさばさと飛び立ち動物達はその叫びに恐怖しばらばらに逃げ去った。
 そんなムスタディオの悲鳴を機にラムザ達は動き、どうにかして暴れるアグリアスを沈静化した。
 その時一体何が起こったのかはわからない。ただ今までにないコンビネーションと連係行動、アイコンタクトによる情報伝達と多大な犠牲(ムスタディオ)の末であったことを此処に記す。
 かくてアグリアスを押さえたラムザたちはとりあえず彼女の話を聞くため大きなテント(ラムザ用のものである。本人は拒否したが一応はリーダーという事で押し切られた)に集まることにした。


 ちなみにラッドは鼻血を撒き散らしたまま倒れ、ムスタディオは彼がいたテントの入り口から赤い筋の走った手だけを覗かせ、そしてマラークは地面に顔面を埋没させたままだったことをついでに記しておく。



「……で、何があったんですかアグリアスさん」
 口を開いたのはラムザだ。目の前には縛られて微妙に涙を浮かべているアグリアスがいる。
 アグリアスさん可愛いなぁ、泣いてる顔も凄い可愛いや、縛られてるシチュエーションなんてたまらないね! なんて事はおくびも出さずに淡い笑顔を浮かべているラムザはある意味恐ろしいといえよう。ていうか微妙に変態チックでもあるが。
 さてそんなラムザを前にアグリアスも渋々と口を割った。唇と尖らせ少しいじけた感じがするのがなんともいえない。頬が赤く染まってるのも高得点だ。
「…わ、私の……買っておいたケーキが、その……」
「ケーキ?」
「む…ぅぅ……その、何度も買い置きしてるのだが、食べられていてな……」
 非常に恥ずかしそうに口を割るアグリアスを見て悦ってるラムザは放っておいて他のメンバーはあぁ成る程と心の中で頷いた。
(たまに不機嫌だったのはケーキがなかったからなのか)
(ケーキ一つでよくもまぁ)
(でも人にはほら、それぞれの楽しみがありますし)
(それもそうだね)
(まぁ不機嫌だった理由はそれだけじゃないんだろうけど)
(というと?)
(ほら、ラムザ様に構ってもらえなくて)
「聞こえてるぞそこ、ていうかラヴィアン。後でシメる」
 なんというか全くアグリアスっぽくない言動だが確かにアグリアスであると此処に記しておく。信じて。
 とりあえずアグリアスの言葉に背筋を震わせガタガタしながらアリシアの後ろに隠れるラヴィアンは放っておいて、ラムザは質問を続けた。
「食べられていた、ですか?」
「そう! そうなんだラムザ聞いてくれ! いつもいっつもいっっっつも私が楽しみに買ってあるケーキが! たまに街に寄った日くらいにしか食べれないケーキがだ!
 次の日。次の街を目指して出発するのはわかってたから一個多く買っておいたんだ、それなのに毎回毎回食べられてしまっているんだ!!」
 そう一生懸命主張してから今自分が何を口走ったかに気づいてハッと頬を染めるアグリアス。騎士たる彼女がこんな風に取り乱すのはあってはならないと本人は考えているのだ。



 そんな様子を見て再びトリップ状態に入った(見た目普通だが)ラムザを置いておいて、一人深刻そうにオルランドゥが呟いた。
「摩訶不思議といえるな。馬車には見張りをつけておる……ケーキとはいえ食料だ、それが簡単に奪われるとなると……」
「内部犯の可能性が高いというわけか」
 オルランドゥの言葉をベイオウーフが引き継いだ。事態は結構軽そうな雰囲気なのに二人の空気は重い。
「そんなに真剣に考えることじゃ……」
「いやレーゼ。これは重要なことだ。内部犯ならまだしももし外部犯だった場合、食料をこうも簡単に奪える敵がいるという事だ……」
「でもケーキしか取られてないんだし」
「だからこそだ。これは警告なのかもしれない……意味のある警告かわからないし、相手が何を意図してるかもわからない、が」
「うむ」
 微妙にずれた騎士二人が深刻そうに唸る。その横でレーゼは小首をかしげた。そんな不安がる問題かしら。
 きっと二人には不安がるような問題なのですよ。


「まぁアグリアスさんには今度僕がケーキをご馳走するのでそれはおいといて、ケーキ食べた犯人を捜しましょうか」
 え、いやしかし。なんてどもりながら顔をそらし「ラムザにご馳走してもらうほど重要なことではないがあぁでもケーキだけでも幸せなのにラムザが」とか口走るアグリアス
 そんな様子をみたメリアドールが「じゃあ私もご馳走になろうかしら」「なっ!?」って感じにアグリアスに喧嘩をふっかけたりなんだりしてるのを横目にクラウドがぽつぽつと話し始めた。
アグリアスの荷物があった馬車を見張ってたのは確か……ベイオウーフ、アリシア、ラヴィアン、ムスタディオ、俺、だったな」
 ちなみに俺は甘いものが嫌いだ、といってクライドは腕を組み沈黙。まぁ彼がこんな微妙にお茶目チックな事をするはずがないので犯人から彼は除外される。



「私はアグリアス様がケーキ買ってるのをしっていました。見張りのとき荷物確認を頼まれたので色々と見た時はまだケーキは無事でした」
 アリシアが挙手して発言。最近砕けてきたとはいえ生真面目な性格なので嘘偽りはないだろう。
 と、なると犯人はラヴィアンかムスタディオ、クラウドとなる。クラウドは除外されるので二人のどちらかだ。視線がラヴィアンに集まる。
「え、え、え? ちょ、待ってくださいよ! 私もアグリアス様がケーキ楽しみにしてるの知ってるんですよ!? そんな命知らずのことするわけないじゃないですか!」
「と、なると犯人はムスタディオになるのかな?」
 うーむ、とラムザは静かに唸ってから「ムスタディオは違うよ」といった。
「どうしてかね」
「いえ、ムスタディオが荷物番してるとき、僕も一緒にいましたから」
 そうなるとムスタディオは無実である。ちなみに誰もラムザがケーキを食べたとは思わない。理由? 主人公補正がかかってるからだとでも思いねぇ。
「となると本当に外部の人間が……」
「まずいな……」
 真剣にうんうんと唸り始めるラムザ達三人。
 そんな三人を見ながらレーゼはため息をついた。だからケーキしか取られてないのになんでそんな真剣になれるのかしら。でも真剣に唸っている彼もス・テ・キ。
 さて状況は迷走を始めた。
 アグリアスはメリアドールと言い合いをしてるしラムザ等三人は物事を深刻に受け止め唸り中。唸るベイオウーフを見てレーゼはうっとりモードに入りクラウドは我関せず状態。
 労働八号は言わずもがな。アリシアとラヴィアンは「どうしようアグリアス様にシメられちゃう……っ!」「諦めなさい」みたいな話をしてたりする。ちなみにラファは睡眠中。寝顔が可愛い。
「とりあえずこの件は保留。皆荷物番をするときはちゃんと注意してよう……あとアグリアスさんはケーキ持ち歩かないほうがいいかもね」
 数分間考えた結果、ラムザのこの言葉でとりあえずこの件は解決。なおケーキを持ち歩くなといわれてアグリアスさんが涙をうっすらと浮かべながらラムザに抗議したのはここだけの話だ。
 かくて此度のケーキ騒動は終結。結局犯人はわからぬまま、特にオチも教訓もなくアグリアスが暴れるだけで終結した。


 ……かに見えた。が、実はオチがある。



「うふふふふふふふふふふ………」
 数日後。再び街に滞在し出発したラムザ一行。アグリアスラムザに黙ってそっとケーキを買い例によって荷物に忍ばせていた。
 今回の隠し場所は非常にわかりにくい。なんといってもアグリアスの私物の奥のほうにしまってあるのだ。意図的に狙わなければ見つかるわけがない!
 アグリアスはそう考えて安心しケーキを購入していた。なんと名案なのか! と自画自賛もしていた。まぁ置いといて。
 さてそんな感じに見つからないはずのケーキ箱。しかし今それは馬車の荷物置きの中外気に晒されていた。
「まずいんじゃないか? 前回のキレ具合は相当だったぞ」
 その箱の前に二人の人物が居た。一人は男で、もう一人は女性のようである。更にその後ろには控えめにもう一人少年がいる。
「大丈夫ですよ。確かに怒ると怖いですけど今回は別! なんたってラムザ様に「駄目」って言われてるのに買ったんだから、大声出していえませんよ」
 女性はニヒヒと笑いながらケーキの箱に手をかける。それを見て後ろに控えていた少年が不安そうに言った。
「でもなぁ」
「もー、そんな事言ったら食べさせてあげませんよ!」
「いやいや、俺は食うぜ」
「ですよねー」
 そんな二人の様子を見ながら少年は軽くため息をつき心の中で呟いた。
(この命知らず)
 まぁ結果から言えば犯人はムスタディオとラヴィアン、そして時たまにマラークの三人であった。ある意味最初にムスタディオとマラークをぶっ飛ばしたアグリアスは勘がいいといえよう。ラッド? いや、彼はただの被害者。
 ムスタディオはただ甘いケーキが食べたい故に。マラークはラファに少しだけ持っていくために。そしてラヴィアンは悶えるアグリアスを見るためにケーキをこっそりと奪っていたのだ。



「あの! ラムザ様に話すときの可愛いアグリアス様といったら!」
「俺はそん時血まみれでテントに横たわってたんだが」
「埋ってたけど」
「凄い恥ずかしそうにしてるのがたまらないんですよ!!」
「だから倒れてたんだって」
「埋って……」
 そんな会話をヒソヒソ声でしながらムスタディオとラヴィアンはクスクスと笑う。ちなみにマラークは見張りをやっている。無論フェイク要員でしかも見張りの役割ではないのだが。


「全く」
 よく飽きないなとマラークはため息をついた。確かにケーキを持っていくとラファはそれなりに喜ぶので助かってはいるがしかし本当によく飽きない。
 流石に地面に埋り死の淵に追いやられ三途の川にて六銭なんて払えるかーっといった風味で川渡しの人と仲良くなったマラークとしては、もう関わりあいたくない出来事であるのだが。


 もう一度ため息をついたとき、ピキーンと彼の頭に何かが閃いた。
 同時にぶわっと汗が沸き呼吸が圧迫されどうしようもない恐怖が体中を這いずり回る。
(やばい)
 何かが、来ている。
 マラークはちらりと馬車の中でケーキを漁ろうとしている二人を見やり、そして決意した。



「さてさてご開帳〜…って、何か微妙な言い方だな」
「そうですかぁ? とりあえずケーキですよ……わっ、今回は真っ白なケーキですね。中にフルーツがたっぷりはいってるのかな。じゃ、切りますね……」
「……ほぉ〜……美味そうだな」
「ですね〜。これを食べられて、しかし誰にも言えず悶えるアグリアス様を思うと、こう、身震いしますね」
「そんなもんか?」
「えぇ、あの時アグリアス様といったら本当にもう……」
「…もう?」
「可愛らしいったら」
「そうかぁ?」
「そうですよ!」
「…そうなのか」
「えぇ、えぇ! それはもう……さて、そろそろ食べてしまいますか」
「食べるのか?」
「そりゃ食べるに決まってるじゃないですか! も〜今更何言って………………………え?」


「…………食べないのか? ラヴィアン、ムスタディオ…………」


「……………………」
「……………………」
「ま…マラーク君は何処いったぁぁぁ!?」
「彼なら二人がここに居ることを教えてから私と代わって業者台にいる」
「裏切りやがったなぁぁーーー!!」
「ふむ? その話はおいおい聞くとして、だ」



「覚悟はいいな?」



 それはとてもとても綺麗な笑顔だったそうな。



             〜終わり〜