氏作。★FINAL FANTASY 壱〜壱拾&拾壱エロパロ小説スレより。







 巨蟹の月一日、深更。
 ウォージリス市街を望む小高い丘の上、月明かりの差し込む宿の一室に、押し問答をする
一組の男女の姿があった。
「そ、そんなこと……」
「いいから言うとおりにしろっ」
 正確に言うと、押し問答をする全裸の男女の姿があった。



 騎士アグリアスオークスは23歳。今日、23歳になった。
 とうに成人を終え、この歳になれば、誕生日など祝うほど嬉しいことでもない。むしろラムザより
先にまた一つ歳をとってしまったと、女らしい憂鬱が軽くのしかかってきたりもする、うす暖かい
初夏の候である。
 それでも、厳しい戦いの手を休めて皆が「おめでとう」と言ってくれ、豊かではないが趣向を
凝らした宴席を整えてくれるのは、それはもちろんありがたい。幼い頃、顔も知らない親戚から
毎年贈られた豪華なぬいぐるみや花束よりも、ラッドとラヴィアンが街中探し回って買ってきてくれた
安物のペンダントの方が嬉しくなったりする。
 アグリアスの騎士服によく合うパウダーブルーの七宝焼の、なめらかな感触を指の先でいじって
いると、憂鬱などいつの間にかどこかへ行ってしまい、気分が浮き立ってきたところへ、
「よく似合います、アグリアスさん」
 ラムザがそっと、微笑んでくれた。

「こんな時だから、大したものはあげられないけど。今日一日、アグリアスさんの……」


「……言うことを何でもきく、と約束しただろう」
「しましたけど、でも……」
 ベッドの上で、ラムザはなおもためらっている。顔が赤い。
「お、お前がいつも、してくれてることだろう」
 アグリアスの顔はもっと赤い。怒ったような顔で、ラムザに詰め寄る。
「いつも、私がしてもらってばかりだ。それではその、私ばかりで、お前が満足しないのでは
ないかと思うのだ」
「そんな……」
 そんなことをしてもらうための「プレゼント」ではない。誇り高い彼女に、そんな娼婦まがいの
行為をさせるなど……
 とはいえ大変魅力的な状況でもあるから、きっぱり断ることもなかなかできにくい。ラムザ
慎重に言葉を選びながら、
「……そんなこと、気にすることないんですよ。前にも言ったでしょう、アグリアスさんが
気持ちよくなってくれたら、それが僕は幸せなんです」
「……それも、だ」
「?」
 ちら、と、うつむいたまま上目遣いに、アグリアスがこちらを見る。普段は気丈さの塊のような
この女性の可憐すぎる仕草にめまいを覚えそうになるラムザへ、
「……その、前にも言っていたろう? 好きな相手を、気持ちよくするのは、幸せなのだと。
…………だから、あの……その幸せを、わ、私も感じてみたいのだ…」


 完敗だ。
 好きな相手にこんなことを言われて、なお拒絶できる男などはいない。ラムザは天井を仰いで
嘆息し、言われるままにベッドに座って、脚を開いた。
 その両脚の間に、ずい、とアグリアスが入ってくる。



「ところで、アグリアスさん、その……『やり方』は、知ってるんですか?」
「大丈夫だ。レーゼとラファに教わった」
 準備万端ということか。ラムザは再度嘆息する。
「……で、では、いくぞっ」
「……お願いします」
 アグリアスの目の前には、隆々とそそり立つラムザ自身がある。どちらかといえば細身の
体躯からは信じられないほどそれは大きく、よく見ると規則正しくピク、ピクと小さく揺れて、
立ちのぼる熱気で周囲に陽炎が立っているようにさえ見えた。
 恐る恐る手を伸ばし、まずはそおっと指先でふれてみる。ラムザが声もなく息を呑んだのが
わかった。レーゼによれば、それは女の“さね”に近いものだという。だとすれば、軽くふれた
だけでも相当の刺激があるはずだ。
 勇気を出して、きゅっと握ってみた。驚くほど熱く、ゴツゴツしている。
(こんなものが、いつも私の中に入っているのか……)
 自分の思考に赤面して、アグリアスはあわてて頭を振ると、握った手をゆっくりと上下に
動かす。ぐうっ、というような呻きが上の方で聞こえて、手の中のものがたちまち一回りほど
大きくなったようだった。
「気持ちいい……のか…これは…?」
「は、はい……すごく」
 その返事に自信を得て、顔を寄せる。真っ赤に張りつめ、たぎるような熱を放つそれが
視界いっぱいに迫ってくる。目をつぶりたくなるのをがまんして、唇を突き出してさらに
顔を近づける。
 ちゅっ……
「あっ……!」
 唇がふれた瞬間、声を上げたのはラムザだった。
 アグリアスはその声と、唇がふれたものの熱さに驚いて顔を離してしまった。火のような
熱が唇の上に残っていて、その熱が全身にまわって、体の芯に炎の線を通されたような
気持ちがする。


 もう一度、唇をふれさせた。今度はすぐには離さない。口づけたまま、唇をわずかに開き、
舌でその表面をおずおずと舐める。
「ふあっ……」
 ラムザがまた声を上げた。目だけでそっと上を見てみると、顔を真っ赤にして、浅い息を
つきながら自分を見下ろしている。
(……きっと、気持ちいいのだな、これは)
 思えば自分も、ラムザにされている時そんな表情になっていた気がする。少し嬉しくなって、
舌の動きをちょっとだけ大胆にする。唇を強く押しつけて、猫が飼い主の指を舐めるように、
ちろちろと舌を動かす。
「ふっ……ふっ、うっ…あぅっ……」
 吐息とも呻きともつかぬ声が、ラムザの口からもれる。その声を聞くたび、アグリアスの舌は
少しずつ大胆になっていく。はじめは先端だけだったのが、だんだんに唇を開き、舌の全面を
使って舐め上げるように。舐める場所も、丸くふくらんだ頭の部分から、くびれたエラの裏へ、
さらに血管の浮いたちょっとグロテスクな幹の部分へ。舐めやすいようにラムザのものを
支えていた手も、無意識のうちに動いて幹の根もとや、その下の袋をさする。
 ぷく……と、ラムザの先端の部分に、透明なしずくが浮いてきた。
(これは、たしか……男が、とても気持ちよくなると、出てくるのだったな……)
 ためらいもなく、その液滴を舌ですくいとるアグリアス。しょっぱくて少し苦いような、おかしな
味……と思う間もなく、あとからあとから滾々とそれは湧いてきて、アグリアスはまるでそうする
のが当然のように、その泉を味わい、わずかに粘りけのある液をラムザの全体に塗り広げていく。
 ぺちゃ……
 …ぷちゅ、ぺちゃっ………
 淫靡な水音が、ベッドの上に満ちる。今やラムザのものは自身の液とアグリアスの唾液とで
一面てらてらと濡れ光り、アグリアスはそれにほとんどすがりつくようにして、夢中で舐め上げ、
しゃぶり上げていた。
「ん……ぐ」
「うぁああっ……!」


 とうとう、アグリアスは大きく口を開け、ラムザを先端から呑み込んだ。あたたかく濡れた口中に
含まれて、ラムザは身震いをする。口の中をいっぱいに満たすそれへ舌で愛撫を加えながら、
頭がゆっくりと深く上下しはじめると、ラムザはたまらずに金色の髪を押さえつけ、指をからめた。
「あ、アグリアスさん……アグリアス、さんっ……!」
「ん、ほぶ、んむむ……はぷ、もぐ……ん、ぐ、もぐ、んちゅ、う……」
(舌は“うらすじ”を中心に、まんべんなく、なるべく全体を使って……動きは深く、頬をすぼめて
吸い込むように……時々口から出して、キャンデーのように舐める……)
 アグリアスの頭の片隅で、レーゼとラファから教わった「教則」が冷静に回転している。しかし、
それ以外の意識の大部分は、今やほとんど麻痺していた。
 視界をいっぱいに埋めるのは、赤黒く光るラムザ自身。鼻孔を満たすのはむせかえるような
ラムザの男の匂い。耳に聞こえるのはラムザの喘ぎと、自分の立てる濡れた音。舌の上には
ラムザの液の味。肌にふれるのは汗ばんだラムザ股間、そして両手と口の中に、脈を打つ
ラムザの熱。
 五感のすべてが、ラムザでいっぱいに満たされ、頭の中にはもうラムザしか存在しない。
(騎士である自分が、男のものに口で奉仕するなど、なんという淫らな、破廉恥な……)残された
理性のかけらが叫ぶ。その背徳感が、
(でも、ラムザなら、いい……)
 と、いう心の声と混ざりあい、たとえようもなく甘美な炎となって脳髄を焼く。時折アグリアス
名を呼ぶ、ラムザの切なげな喘ぎ声が、いっそうその炎を煽る。
ラムザが、気持ちよくなっている……私の口で、こんなに、たまらない声を上げるくらい、
気持ちよくなっている……)
「ぷあっ……ふ」
 やがてアグリアスラムザのものを口から抜き、一つ息をついた。もう終わりなのか、と
安堵と不満が入り交じり、声もなくラムザが見つめてくる。だがもちろん、それで終わりなど
ではなかった。
「ん……」
 荒い息をととのえながら、ラムザの脚をもう少し広げさせ、上体を持ち上げる。ボリュームのある
ふたつの乳房が、ゆさっ、とベッドの縁に乗った。


アグリアスなら、できるでしょ〉
 ちょっと悔しそうな顔でラファが教えてくれた、もう一つの愛撫。初めて聞いた時は恥ずかしくて
死んでもできないと思ったが、ラムザでいっぱいになった今の頭には、そうするのがまったく
当たり前のことに思えた。
 重たい胸を両手で持ち上げ、身を乗り出す。ラムザが軽く身震いをした。何をされるのか
察したのだろう。アグリアスはそのまま、胸をラムザ股間へ押しつけるようにして、たわわな乳房で
ラムザのものを挟み込んだ。
「うぁっ…………!」
 瞬間、ラムザが喉に詰まったような声を上げてのけぞった。とぷとぷん、と先端から先走りが
あふれ出してくる。腰が小刻みに震えているのがわかる。実際の快感よりも、他ならぬアグリアス
そのようなことをしてくれているという、その衝撃と背徳がすさまじい快楽となって脳を叩きつけたのだ。
 そして、実際の快感も今からそれに加わるのである。
「う、お、あああっ!? あっ、アグ、あぐり、あす、さんっ! んっ、んあっ、あううっ!!」
 わきを締め、両側からぎゅっと押さえつけて、体ごと上下させる。たっぷりとまぶされた唾液と
先走りとが潤滑油となって、アグリアスのゆたかな胸の谷間を赤黒い肉の棒がぬろん、ぬるるん、
と往復する。その一往復ごとに、ラムザの腰は痙攣しながら浮き上がった。
「あ、あっ、あぐ、アグリ、アっ、あっ、あっ……!」
 名前すらまともに呼べないほどの快楽が、ラムザを襲っている。しっとりと熱くやわらかい肌が、
隙間なくラムザを包み込み、やさしく、だがむっちりと強烈な圧力でこすり上げてくるのだ。
「熱いな……ラムザのは…………熱くて、たくましくて、やけどをしてしまいそうだ……」
 一方のアグリアスも、責め手の余裕などあるわけはなかった。口が自由になったから喋ることが
できるが、頭の中はラムザでいっぱいなのだから、まともな理性などは働かない。ただ自分の胸の
中にあるラムザがいとしくて、嬉しくて、それがそのまま言葉になって出てきてしまう。
「ぬるぬるが……どんどんあふれてきて、止まらないぞ、ラムザ……気持ち、いいの……か?」
「はッ……はっ、はいッ、はいッ……きもち、いいです、凄く気持ちいいですッ……!」
「……こうしたら、どうだろう…………もっと……?」
「んっ……!!」
 胸をおさえた手をつかって、上下動に左右へこねる動きを加える。返事もできずに、ラムザが息をつめた。
「あばれている、ぞ……ラムザのが、まっかになって、私の胸で、いっぱいに、あばれて……」
(まるで、胸で……胸でラムザと交わっているみたいだ……)
 いつかラムザは自分から腰を浮かし、アグリアスの動きにあわせて無意識に律動させていた。それに
あわせて乳房をゆすれば、体ごと動かさなくても十分な愛撫ができることに気づいたアグリアスは、
上体をすこし休める。ふと目を落とすと、小刻みにこちらへ迫ってきたり、遠ざかったりを繰り返す、
グロテスクなほど充血したラムザの先端があった。
(…………)
 そこまでは、ラファも教えなかった。それは純粋にラムザを気持ちよくしたい、どこまでも
気持ちよくしたいという衝動から生まれた行為だった。首を曲げ、頭をこごめるようにして、
自らの胸の谷間から突き出すラムザの亀頭を口に含んだのだ。
「…………っ!!」
 先端と、幹と。二種類の、しかもそれぞれに至上の快楽を注がれ、ラムザはもはや声すら
出せない。息を止め、今にも爆発しそうな腰を必死にこらえて、この快楽を一秒でも長く
味わおうとする。
「んっ、ちゅぷ、んっ、んっ……らむ、ラムザ、ん、んッ、ふぷ、ん、んく……」
 上目遣いにときどきラムザの表情を確かめながら、アグリアスは一心にその濃厚な愛撫を
続ける。その仕草がまた、ラムザをいっそう限界へと追いやることにも、無論気づいてはいない。
 限界は、唐突にやってきた。
「あ、アグリアス、さんッ、もう、だめですっ…………もう、やめ……」
 ほとんど喘ぐばかりだったラムザが、急にはっきりした言葉を発した。声の調子が
せっぱ詰まっている。とろけた意識の中を、レーゼのアドバイスがよぎった。
(いいこと? ラムザが『だめ』と言ったら、もっと強くするの。自分がそう言いたくなった時を
考えれば、わかるでしょ?)


「んっ……ラムザ、…ラムザ……ちゅ、ちゅっ、んんく、ふうん……!」
「あっ……アグ……あ……あ…………っ!」
 やめるどころか、それまでに倍する勢いでしごかれ、吸い立てられる。到底、がまんのできる
域ではなかった。ラムザの懸命な抵抗もむなしく、大人と子供の綱引きのように『それ』は
容赦なく引きずり出され、決定的な頂点へと引き上げられていき、そして、


「……っアグリアスさぁん……ッ!!」
 びゅうッ!


 熔かしたゴムのようなものが、アグリアスの口の中で爆発した。その熱と勢いにおどろいて
口を離したアグリアスを追うように、


 びゅるるっ、るるっ、びゅくん…ぶびゅ、びゅううっ……びゅっ、どびゅっ………どぷっ、
どぷるっ……どくん、どくん……とぷん……


 数回分の絶頂に相当する快楽を耐えて耐えて耐え抜いて、凝縮されたラムザの欲望の結晶が、
おそろしい勢いで噴出して、アグリアスの顔、髪、首、胸、口の中、ありとあらゆる場所に降り注ぐ。
口を閉じることさえ忘れ、呆然とその熱い豪雨を受け止めるアグリアス
(これが、ラムザの…………ラムザが、達したのか……私の手で、ラムザが……)
 その認識が徐々に咀嚼されるにつれ、顔中を覆う熱いべたつきが、栗の花のような匂いが、
舌の上のゼリーのような苦い味が、すばらしい歓喜の証として、アグリアスの五感を制服してゆく。
〈そうすると、男の人は大抵喜ぶけど。でも初めてじゃ辛いから、無理しなくてもいいと思うわ〉
 少しも辛くなどなかった。アグリアスは口の中にたっぷりと注がれたラムザの白濁を、のどを
小さく鳴らして飲み下した。その顔を見て、ラムザのものがまた一つ、白い塊を勢いよく吐き出した。



 ほとんど記録的な長さと量の射精を終えて、絶頂の炎はようやく鎮火した。
「…も……ッ」荒い息の下から、ラムザがようやくのことで声を発する。
「?」
「……ものすごかった、です……。ものすごく……気持ち、よかった……」
 アグリアスの方も、まだなかば朦朧としている。ラムザのそれほどではないが、白濁を顔に
受けた時、アグリアスもまた軽い絶頂に達していた。陶然とただよう意識の中へ、だがその言葉は
しっかりと染みとおってゆき、白濁で覆われた顔が、ちいさく微笑んだ。
「……私も、よくわかった。ありがとう……」
「…?……わかっ、た……?」
ラムザを……」胸元に溜まってぷるぷる揺れるゼリーの塊をうっとりと撫でながら、「好きな人を…
…気持ちよくするのは、こんなにも…………幸せなのだな」
 そう言って、ラムザににっこりと笑いかけたとたん、ラムザが身震いをして、胸の間で何かがいきなり
動き出したのをアグリアスは感じた。
 それが急激に勢いを取り戻したラムザ自身であると、理解する暇は与えられなかった。次の
瞬間にはアグリアスラムザの腕に抱き寄せられ、むしゃぶりつくようなキスをされていたからだ。
「ん、んっ!? んう……!」
 口の中にはまだラムザの精液がこびりついていたが、そんなことはおかまいなしにラムザの舌は
荒々しくアグリアスの口を蹂躙した。アグリアスはそのことに抗議しようとはしなかったし、仮に
したくてもできなかったろう。甘い喘ぎ声以外の声を発する余裕など、ラムザは与えてくれそうに
なかった。






 アグリアスの口が、次に意味のある言葉を発することができたのは、それから数刻の時が過ぎ、
月も西の山かげに沈みかけた頃のことであった。
「…ラムザ………」
 細い声を発して、頭をもたげることもできずに横たわっている。何度も何度も絶頂に導かれ、
力の尽きはてたその肢体の、顔にも、胸にも、腹にも、背中にも、尻にも、内股にも、信じられない
ような量の白い粘液がこびりつき、この数刻の激しさを物語っていた。もはやアグリアスの肌が
白いのか、ラムザの精液で白いのか区別がつかない。
「すみませんでした……」
 その全身の粘液を、しぼったタオルでふき取ってやりながら、ラムザはさっきからしきりに恐縮
している。アグリアスの強烈な媚態に我を失うあまり、普段なら決して忘れないある気遣いを、
今夜は完全に失念してしまったのである。
 アグリアスの下腹のあたりをぬぐうラムザの手がふるえている。
「もしもの時は、どんなことをしても責任をとります……あ、もちろんアグリアスさんがよければ、ですけど……」
「…………ふふ」
 急に微笑んだアグリアスを、ラムザは不思議そうに見つめた。アグリアスは楽しそうに、
「実はな、今日もう一つ、どうしても欲しいプレゼントがあったのだ。我が儘がすぎるかと思って、
黙っていたのだが」
「えっ? ……そんな、贅沢だなんて。何でも言って下さい、僕にできることなら」
「ふふっ」
 脇腹を拭いていたラムザの手を、アグリアスの手がおさえた。そのまま、下腹へもっていく。
 アグリアスは笑みをおさめる。絶頂の後の紅潮とは別に、頬が赤らんでいるのが薄闇の中でも
わかる気がした。
 少しの間黙ったあと、アグリアスはそっとラムザの耳元へ唇をよせ、


「………………お前の、子だ」


 ちょうどその瞬間、月が山の端に沈みきり、夜明け前の最も暗い時間がおとずれた。
 だから、その言葉を聞いたラムザがどんな顔をして、そうしてアグリアスに何を囁いて、それから
朝までどんなことをしたかは、アグリアスだけの大切な秘密である。




End