氏作。Part22スレより。



いよいよレース中盤、第3レース開幕間近!
エドガーの弟にしてツッコミ名人兼格闘家のマッシュ!
若き神殿騎士にして得意のジャンプを使う作戦が駄目になって弱気になってるイズルード!
骸旅団活動費のため、たこ焼きを忘れていってくれた人に報いるためにやる気満々ウィーグラフ!
はてさて、いったいどんな熱戦激戦超決戦を繰り広げるのか!?
そしてポロリ(とチョコメテオ)はいつになったらあるんだ!?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ドキッ!
   真冬のフィナス河寒中水泳大会。
     ポロリ(とチョコメテオ)もあるよ
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主催者:アグスーレ・ニジュイ・クササン男爵
協力 :北天騎士団団長ザルバッグ・ベオルブ聖将軍
    :南天騎士団団長シドルファス・オルランドゥ


優勝賞金
1位……50万ギル
2位……20万ギル
3位……10万ギル
審査員特別賞……エクスカリパーオルランドゥ伯からのご提供)



第3レースのため、控え室に集まった選手達。その全員に赤ふんが渡された。
「……これを履くのか……」
神殿騎士イズルードはげんなりとした口調で言った。
「……これは、武人の魂が形になったような物だ。素晴らしい」
骸旅団リーダーのウィーグラフは感動に震えた。
「……これこそまさに男の下着の理想形だ」
マッシュも感動に震えてた。
「……何か俺以外みんな赤ふん気に入ってるような……」
神殿騎士イズルードは周囲を見回して思った。
何か第1レースに比べてマッスル率が上がっているというか、男臭い男ばかり集まって、
ビーフェイスのイズルード以外赤ふんが似合いまくってる。
「ふぬぅっ! お主、いい筋肉をしている。
 わしはアトカーシャ王家直属のルザリア聖近衛騎士団長、アグリッパ・オークスじゃ。お主は何者か?」
「拙者はトンプソンでござる。侍傭兵として10種類の刀を集めるための軍資金目当てに参加でござる」
「あっしはイジュラン、元漁師だ。北海の荒波に比べればぬるいぬるい! 賞金で息子の船を新調じゃぁー!」
「俺はマッシュだ。地割れに挟まれてもこの肉体でこじ開ける自信がある! 同様に氷点下の急流も泳ぎ切る!」
「我輩はロギンス。南天騎士団切り込み部隊に所属、何事にも体当たりで挑む熱血漢であるっ!」
「オッス! 自分はヒューゴであります! 世界中を旅して己を鍛えるモンクであります!」
みんな筋肉を誇示するようにポーズを取って会話している。
こんな連中の集まりに放り込まれたイズルードはすっかり怯えてしまっていた。
ウィーグラフはというと、自分が実はテロリストであるため他者と関わろうとせず、
隅っこでひっそりと瞑想していた。




エドガー殿、顔色が悪いが気分でも?」
「ああ……むさくるしいオーラが漂ってくる……」
来賓席にて、エドガーは控え室から風に乗って運ばれる『男の臭気』に気分を害していた。
そのために彼が取った行動は、濃密な『乙女の香り』で肺を満たそうと、
アグリアスの豊かな、髪、に顔をうずめた。
豊かな、胸、にうずめたいのが本心だったが、さすがにそこまでのセクハラ野郎ではない。
エドガー殿……重いのでどいてくれ」
「ふふふっ、マッシュは控え室……今なら邪魔出来まい」
ニヤッとエドガーが微笑むと、なぜかアグリアスに悪寒が走った。
そしてエドガーに肩を貸している(ように見える)アグリアスを見て、オヴェリアは頬を染めた。
「あら……アグリアスったら、エドガーさんといつの間にそんなに仲良く……」
「ご、誤解ですお嬢様……このような男、私の趣味では……」
弁解しつつ、アグリアスエドガーの髪を引っ掴んで、引っこ抜くような勢いで、引っ張った。
「アイタタタッ!!」
エドガーの頭がアグリアスの髪から離れ、涙目になる。
その後、二人は適当に漫才をしてオヴェリアとラヴィアンとアリシアを楽しませた。


「おっ待たせいったしましたぁっ! それでは寒中水泳大会第3レースの出場選手入場ですっ!!」
歓声が上がる中、アグリアスは10名の参加選手の中から2人の男性を探した。
その2人はすぐに見つかり、やはり注目の選手らしくアナウンサーが彼らを紹介する。



「第3レース注目の選手の紹介をいってみましょう!
 まず、アトカーシャ王家直属、ルザリア聖近衛騎士団長の肩書きを持つ騎士の中の騎士!
 アグリッパ・オークス!! 鍛え上げられた筋肉と、ジェントル魂満載のダンディなお髭を生やした大人の男!
 輝かしい軍歴を誇り、王家の人間を狙う悪漢には、騎士も傭兵も盗賊も暗殺者も貴族ですらも容赦なく、
 バッサバッサと切り倒す凄腕の騎士なのです!」
紹介されながら、アグリッパはマッスルポーズやダンディポーズやジェントルメンポーズを取り、
さらには来賓席の女性貴族達に熱烈な投げキッスを送りまくった。


「……ねえアグリアス
「何でしょうお嬢様」
「あの方、あなたのご親族?」
「いいえちがいます」
「でもオークスって……」
「よくある ふぁみりぃねーむ です」
「アグリッパって名前もどことなくあなたと……」
「ははは よくあるなまえですよ そんなもん」
「それに彼の所属、あなたと同じよ? しかも団長」
「なまえが にていて ふぁみりーねーむが おなじで ちょくぞくのじょうし。
 まぁ なにかと めをかけていただいたおかげで わたしもほーりーないとになれて かんしゃしてるんですけど」
「何だか喋り方が変よ?」
「あのおかたが きかくした せいこのえきしだんしんぼくぴくにっくは まさに じ ご く」
「顔が真っ青よアグリアス。ねえアリシア、お薬をもらってきてくれない?」
結局──アグリッパ・オークスアグリアスの直属の上司という事以外、すべては謎のままだった。
父親かもしれないし父の兄弟かもしれないし遠縁かもしれないし、完璧に赤の他人かもしれない。
そんなアグリッパ・オークスの次に紹介されたのは──。



「お次は遠い砂漠の異国からお出でになったマッシュ選手!」
他の選手と違いファーストネームしか紹介しないのは、マッシュがファミリーネームだけで登録したからだ。
なぜファミリーネームを書かなかったか、事情を詮索するのは野暮だろう。
ただ単に面倒くさかっただけかもしれないが。
「一般参加の彼は予選をブッチギリのタイムで合格した猛者であります!
 本当に砂漠出身なのかー!? 泳ぎも実に野性的で天才的!
 事実確認は取れておりませんが、あの悪名高いレテ川、バレンの滝、蛇の道を制覇したという噂を持つ、
 ミステリアスなマッスルマンだぁー!」


アグリッパと違い、マッシュは特にポーズを取ったりせず普通に岸に立った。
その引き締まった肉体は、来賓席の婦人達からピンク色の吐息を漏らさせる。
「おのれマッシュめ……」
エドガーが呟いたりもしてた。


「お次はロギンス・タックラー! 南天騎士団切り込み部隊所属の(中略)という熱血漢だぁー!」


「ねえアグリアス、不思議とロギンス選手の説明だけ投げやりな気がするの」
「何をおっしゃりますお嬢様。アグリッパ団長とマッシュ殿に引けを取らない立派な紹介ではありませんか」
「そうよね、ちゃんと紹介してた……はず、だもの」
「あの『ゼクラス砂漠完全包囲網』を一転突破し血路を開いて多くの兵を救った切り込み部隊の一員とは、見事」
「そ、そんな説明あったかしら……?」
「さらにバリアスの丘で敵一個小隊をタックルで崖から落としまくり『タックルマスター』の称号を持っている猛者とは」
「そ、そんな称号あったかしら……?」




「さて、注目所の紹介が終わったのでさっそくレース開始と行きましょう。ゴングを鳴らせー!」
カーン。
「ゴングが鳴ったー! いっせいに飛び込んだー! 今回は即リタイアな軟弱者はいないぞぉー!
 先頭に踊り出たのはアグリッパ選手だ! 続いてマッシュ選手、イジュラン選手、ウィー選手と続いているぅ!」
ちなみにウィーとは、ウィーグラフの偽名だ。
骸旅団のリーダーともあろう者が本名で出場する訳がない。
「これは速い! みんな速い! 壮絶な記録塗り替え劇が起こるというのかぁー!?
 ああっと! な、これはー!? アグリッパ選手が突然沈みました! 何が起こったー!?」
「足つったー!」
「大変です足つっちゃってます! これは大波乱だ、優勝候補なのに呆気ない幕切れー!」
この展開はアグリアスに冷や汗をかかせた。
アグリアスは、ルザリア聖近衛騎士団の名に恥をかかせないよう、最後まで泳ぎ切る事を目標としていた。
好成績を出そうという考えは、優勝候補にして直属の上司アグリッパが表彰台に上がるだろうと思っていたからだ。
アグリッパが表彰台に立てばルザリア聖近衛騎士団の面子は立つ。
だがそのアグリッパが失格となると……アグリアスの双肩にルザリア聖近衛騎士団のすべてが圧し掛かる。
ルザリア聖近衛騎士団という看板は、アトカーシャ王家直属という意味もあり、
敬愛するオヴェリア様の名誉まで背負わなくてはならない。
重圧に押し潰されそうになりながらも、祈ったところでどうにもならぬと割り切り、
最大のライバルだろうマッシュの動きを注視した。
クロールで泳ぐマッシュ。何と急流をものともせず真っ直ぐに対岸へと直進しているではないか!
驚異的な身体能力に会場がざわめく。
現在の1位は一般参加のファリス、これにマッシュが加わり表彰台を一般参加者が埋めたとあっては、
イヴァリースの騎士はいい笑いものだ。
だからマッシュに少なからず友情を抱いているアグリアスでさえ、この結果には危機感を覚えた。
アグリッパの他に2名の脱落者を生んだ第3レース、総合1位になったのは──。




 1位 2分08秒 マッシュ
 2位 2分22秒 ファリス・シュルヴィッツ
 3位 2分55秒 ウィー・フラグ
 4位 2分56秒 イジュラン・モートリョシー
 5位 2分58秒 ロギンス・タックラー
 6位 3分15秒 カーマ・セイヌ
 7位 3分25秒 ヒューゴ・オーツス
 8位 4分05秒 フランソワ・クーロホン・ダーサマレタ
 9位 4分22秒 ニキータ・マナ
10位 4分26秒 トンプソン・ジュシュール
11位 4分29秒 ラッド
12位 4分33秒 モエ・イキトーメ
13位 4分44秒 ドウ・デーモイ
14位 4分59秒 イズルード・ティンジェル
15位 6分10秒 ジャンヌ・イナメラキア


そしていよいよ──アグリアスオークスの出場する第4レースが迫っていた。
ポロリ(とチョコメテオ)の日も近い?
そしてさらにーー。



「ぐほっ!」
雷神シドの義理の息子、オーラン・デュライは河原に倒れた。
「フフフ……これで雑魚は片づいた」
黄色いチョコボに乗った竜騎士が男が呟く。
「不覚っ……我々が、敗れるとは……」
「魔物の力をあなどったのが貴様らの敗因よ」
周囲にはオーランの部下達が死屍累々と倒れ、勝利の余韻も無く殺気で双眸を光らせるチョコボの群れがあった。
「我が偉大なる主、ゴルベーザ様……」
「…………」
「準備は万端です。我らの総力を持って、愚かな王侯貴族に天罰を……」


人間より一回り大きい影の前にひざまずく男……彼こそ第1レースの失格者、バロン男爵配下の竜騎士団隊長、
カイン・ハイウインドその人だった。
その双眸は偉大なる主の思惟を浴びて妖しく煌いていた。


そして……ようやく登場したオーランの出番は、これでついえるのだった……。






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