氏作。Part17スレより。
前編:
旅の途中、ウォージリスに立ち寄ったラムザ達。
夏真っ盛りの暑さにへこたれながら、宿屋でグッダグダと休養している。
……が、暑い。宿屋は暑い。夏の陽射しがが窓からギラギラギラギラギラギラギラギラ……。
黒魔にジョブチェンジしてブリザドを使うという手もあったが、覚えているのはサンダー系とトードとフレアのみ。
じゃあ召喚士で……と思ったら、やはり誰もシヴァを覚えていない。
ゴブリンに有効な氷魔法だが、ゴブリンは雑魚と侮り氷系の魔法を後回しにしてしまった事を、ラムザは後悔した。
いつもは元気にピョコンと跳ねているアホ毛も、今日はダランダランになっている。
(誰か……何とかして……)
ラムザがそう祈った瞬間である。
部屋のドアが、ノックも無しに開いた。ムスタディオとラッドだった。張り紙を持っていた。
「ラムザ、プール行こうぜ!」
魅力的な単語に身を起こし張り紙を見る。それは市民プールの張り紙だった。
ラムザは守銭奴という訳ではないが、お金の管理はキチッとしている。無駄な出費は出さない。
娯楽にお金を使うような真似はしない。せいぜい酒場で飲むくらいしか許してくれない。大人の遊びになどとても行けない。
けれど、けれどこれならどうだろうか? プールなら健全といえば健全だし、涼しむ事が出来る。
そのついでにちょっぴり水着美女を堪能出来たりするけれど、まあ、それはそれとして。ウヒヒヒヒ。
熱気でふやけていたラムザのおつむは、ムスタディオ達の企みを見抜けずにいた。
だから、欲望に従って言った。僕も涼しみたい、泳ぎたい、プール行きたい。だから、
「行こう」
ムスタディオとラッドは諸手を上げて喜んだ。
そして仲間達にプールに行けると言って回り、女性陣が喜ぶのを見て、野郎共は別の意味でも喜んだ。
さて、ここでメンバーを紹介しておこう。まずは野郎共。
トランクス派……ラムザ、ラッド、ベイオウーフ、クラウド。
ビキニ派……ムスタディオ。
カエル派……マラーク。
全裸派……オルランドゥ。
お留守番派……ボコ、労働八号
「おい、お前本当にそれでいいのか」
と、ムスタディオが訊ねた。それに対し、カエルは、
「いいんだ。この姿じゃなきゃ……ゲフン、ゲコン。この姿の方が泳ぎやすい」
と答えた。全員が気づいた。
(この姿じゃなきゃ泳げないって事ね)
しかしそれには誰も触れない。友情のなせる業である。
「それにしても、本当によかったのかなー?」
「何が?」
「オルランドゥ伯」
「いいんじゃね?」
「心頭滅却すれば火もまた涼しとか言ってたからな」
「一人だけ銭湯に行くとは」
「やっぱあの歳じゃ水着にゃ興味無いのかね?」
「どうだろ?」
という訳でオルランドゥは全裸である、ただし銭湯での話だ。
決してボケてプールに全裸で入って逮捕されるだなんてネタではない。まさかそんな想像をする無礼者がいるはずもないが。
野郎共が終わったので、次は女の子の紹介に移りましょう。
まず、レーゼ。最初に何を言うべきかというと、やはりたわわに実った二つの果実だろう。
黒いビキニに覆われているため、ビキニの端からわずかに見える豊かな膨らみの白さが際立ち、男の視線を釘付けにする。
ポニーテールにまとめた金の髪が太陽の下で輝き、まるで女神のような美しさだ。
常人より一回り大きい胸とは対照的に、腰は一回り細い。歩くたびに色っぽくうねる白い曲線が男の欲望を刺激する。
そして白桃のような尻肉を覆い隠すのは紫のパレオ。実に惜しい、これでは大事な部分が見えない。
そう考えるのは子供の証拠である。なぜならこのパレオ、スリットが入っている。
スリットから覗く白い太もも、まさにチラリズムの美学。もう少しでもっと肝心な部分が見えそうで、見えない。
例え中身が覗けたとしても、そこにあるのは白い肉ではなく、黒いビキニである。そうと分かっていても、それは男の浪漫をたぎらせる。
次にラファ。彼女が選んだのは青いワンピースだ。だが彼女の場合、水着について語る事は少ない。その魅力は態度である。
黒い肌を晒す事を恥じ、小動物のように身体を縮ませ、レーゼの影に隠れている。
それが男の保護欲を駆り立てる。しかしそれだけじゃなく彼女の肢体は未成熟でありながら、レーゼに負けない程の色気を漂わせている。
その理由を悟れる男は、少なくともこのプールにはいなかった。長く苦しい地獄のような日々が生み出したエロスである。
具体的に何があったのかはゲーム本編を十回ほどやり直していただければ分かると思う。
もし分からないなら、あなたは分からないままのピュアなあなたでいてください。
メリアドールは神に仕える者が大衆の前で肌を晒すなど許されないと文句を言っていたにも関わらず、赤いビキニを着ている。
女性陣が水着を買いに行くのについていき、これを着たらラムザを悩殺出来るかなと思った瞬間、なぜか購入していたのだ。
その後後悔したが、買ってしまった物は着ないともったいないという神の言葉を聞いた事にして、着た。
鍛えているだけあって、胸は小振りなものの、身体全体は引き締まっている。そこには若くて健康的な明るい魅力が満ち溢れていた。
アリシアは白いワンピースに、半透明の浮き輪を持っている。泳げない訳ではない、浮き輪でプカプカ浮かぶのが好きなのだ。
アリシアの胸はやや小振りだが、形がいい。胸、背中、腹、腰、尻と、すべての曲線が芸術的ともいえる。
色気たっぷりのレーゼや、水着を着る事を恥ずかしがっているラファやメリアドールと違い、彼女は微塵も臆していない。
そのためピンッと胸を張って歩く姿は、ますます彼女の美しい身体のラインを強調する。
ラヴィアンは白と黒のビキニだ。白い布が右胸を、黒い布が左胸を包み、その間を小さな金属のリングが結んでいる。
布は背中に至ってはほとんど無く、肩甲骨の中心やや下で、やはり小さなリングで結ばれているだけだ。
レーゼほどではないにしろ、ラヴィアンの胸はなかなか見事である。顔をうずめたいと思うのは、男としては当然の欲求だ。
下を包むのも白と黒の布である。二つの布が股下をくぐり、丁度腰がくびれているその部分で、やはり小さなリングで止められている。
もしあのリングが一個でも外れたら……ポロリ。そんな妄想を抱かせる危ない水着であった。
それを自覚してか、ラヴィアンはリングに指をかけ、挑発的に引っ張って遊ぶ。視線を向ける男には、蟲惑的な笑みを浮かべて、ウインク。
まさに美女の群れである。そんな中、一番目を引く水着を着ている人物といえば彼女、アグリアス。
それはレーゼやラヴィアンのように色気がある水着ではない。メリアドールのように派手でもない。
アグリアスが着ているのは、競泳水着だった。しかもピッチピチの。
しかし、だからといって、彼女に魅力が無いと思うのは早計だ。
剣士として鍛え上げられた肢体は、スポーティーな競泳水着にフィットし、洗練された印象を与える。
さらに無駄な贅肉は無いものの、必要な脂肪はきっちり残っているのだ。
その脂肪が力強くも肉感的な印象を与え、やや日に焼けた肌が健康的な活力を魅せる。
脂肪の残り具合のバランスは見事としか言いようがないが、一部分だけ、脂肪がちょっぴり多目だった。
鎖骨の下の膨らみは、男が両手を広げて掴みかかっても、わずかに収まりきらない。そんな大きさである。
鍛えられた肉。しかし女性特有の柔らかさも同居させている肢体。果たしてあの胸の触り心地は?
首の後ろで結んだ金の髪をなびかせて歩くと、彼女の胸も、上下左右に小さく揺れる。
もっと激しい動きをしたら、どんな動きを見せるのか?
競泳水着を着ているのなら、きっと水の中で華麗に泳いで見せるのだろう。その時、あの胸はどうなる!?
人の好みは十人十色。この美女軍団の誰に目を奪われようと、それは人それぞれの嗜好であって、文句を言われる筋合いは無い。
やはり一番目につくのはレーゼだろうが、それでも、見ず知らずの男性客に見られるより、大切な誰か一人に見てもらえれば。
アグリアスが視線を送ると、その人と、目が合った。
慌てて二人は視線をそらす。あさっての方向を向いて、見なかったフリをする。
なぜか彼の跳ね毛は、少しだけ元気を取り戻していた。
水着に着替えた野郎共が、水着に着替えた女性陣を待っていた。
更衣室から出てきた彼女達の水着姿を目撃した瞬間、ムスタディオとラッドとマラークが歓声を上げる。
ラムザはアグリアスと目が合って頬を染めてうつむき、ベイオウーフはレーゼの水着姿をじっくりと見つめてうんうんとうなずいた。
女性陣は野郎共の反応に喜んだり、恥ずかしがったりと様々だ。
「うふふ、若いっていいわね」
そう笑って、レーゼは腰を振りながら一人前に出た。扇情的に揺れる腰、ゆっさゆっさと揺れる胸、それを追う野郎共の目。
プールに来ていた男性客の感嘆の声を背に、レーゼは恋人ベイオウーフの腕に、自身の腕を絡める。
たわわな胸に、ベイオウーフの二の腕が挟まれた。その瞬間、野郎共の嫉妬の視線がベイオウーフを貫く。
が、ベイオウーフはむしろ優越感に浸り、レーゼと一緒に歩き出した。
そんな二人を見送ってから、ラムザ達とアグリアス達も合流する。
「よっしゃー! いきなりだが、泳ごう。一緒に遊ぼう。はしゃぎまくろう」
と、鼻の下を伸ばして言うムスタディオ。狙いは遊んでる最中に起こる事故によってボディタッチという甘いスキンシップを取る事である 。
もちろん、そんな狙いはお見通し。女性陣は、ムスタディオとラッドの誘いの手を無視した。
「ラムザー、クラウドー、一緒に遊ぼ!」
ラヴィアンが声をかけた二人に下心が無いとは言わない。が、「水着のために来ました!」と目で語っている連中とは違うのだ。
けれど仲間の輪を大切にするラムザは、ムスタディオ達も一緒に……と頼み込む。ラヴィアン達は渋々了承した。
水に入ろうとした時、ラヴィアンがアグリアスの耳元で「どさくさにまぎれてラムザ隊長に抱きついちゃえ!」と囁くと、
アグリアスは足を滑らし、プールの中へ、ボッチャン。
水中から顔を出したアグリアスが「ラヴィアン!」と叫び、みんなケラケラと笑っていた。
ムスタディオが持ってきていたビーチボールが宙を舞い、ラヴィアンが思い切り叩く。
ボールは浮き輪にお尻を入れてプカプカ浮いていたアリシアの頭に当たり、ラファの方向へ向かって跳ねた。
バランスを崩したアリシアをラッドが受け止め、二人してプールの中に沈む。
ラファはボールを闇雲に叩き、優雅に泳いでいたカエルにぶつける。カエルは沈んだ、アリシアと違って助けてくれる人などいなかった。
プカプカと浮いているビーチボールをメリアドールが拾い、思い切りぶん投げる。
クロールで泳いでいたアグリアスの頭を狙ったのだが、狙いがわずかにそれ、バタ足に激突。
蹴り上げられ、一緒に泳いでいたラムザの頭に命中。アホ毛が潰れた。アホ毛が潰れて力が出ない! ラムザは溺れた。
慌ててクラウドがラムザを助け「俺には人工呼吸の経験がある」と言いアグリアスに投げ飛ばされ、クラウドも溺れた。
そんな彼等を見て、ベイオウーフとレーゼは頬を緩ませる。
アグリアスがクラウドを救出しプールから上げ、ベイオウーウとレーゼを除く仲間達が駆けつけた時である。
更衣室から五人のいかつい男が現れた。
「ギャッハッハ、盛況だねぇ」「ウヒャヒャヒャヒャ、可愛いお姉ちゃんがいっぱいいるじゃねえか」
「女! 今日こそ、今日こそ、俺は、俺は、彼女を作るぞぉおおおおおおおおおおおい!!」
「飯、飯、飯。屋台、フランクフルト! カキ氷! ラーメン! そして、オナゴー! オナゴッ! オナゴー!」
「あんな裸みたいな格好して、誘ってるんだな? 誘ってるんだな? え? 俺、襲っちゃうよ?」
異様な掛け声に気づいたアグリアス達は、いぶかしげにいかつい男達を見た。見るからにガラの悪いゴロツキ野郎共だ。
関わらない方がいい、一斉に思った。
ガラの悪いゴロツキ野郎共は、プールの一部に集まっているとびっきりの美女集団に目をつけた。
関わろう、一斉にそう思った。
男達はアグリアス達の所へ向かいながら、途中にあった屋台から食べ物を適当に掴み取る。もちろん、金など払わない。
途中、近くにいた女性客のお尻を触りながら進む。悲鳴を上げるも、男達が恐くて文句を言えない女性客。
ゴロツキ野郎共は、アグリアス達の前まで来ると、さっき奪った食べ物を差し出した。
「よー! そんな軟弱な坊やは放っておいて、俺達と遊ばね? 遊ばね?」
差し出されたフランクフルトは、半分ほどかじってある。それを食うという事は間接キスという事だ。想像するだけで吐き気がする。
「軟弱だと? 彼等はお前達と比べ物にならんほどたくましく、頼りになるぞ」
「へえ? そのざまでか?」
ゴロツキ野郎共のリーダーっぽい男が、指差して言う。
ラムザとクラウドは溺れ、跳ね毛と鳥頭が折れてしまっているため、戦闘不能だ。
ラッドはアリシアを助けた時に胸を触ってしまい、水中で強烈な蹴りを食らい、悶絶し溺れていたのをアリシアが運んできていた。
どこを蹴られたのか書いてしまうと、多くの男性諸君がそこを抑えて恐怖に顔を歪めそうなので、あえて書かない。
最後の砦ともいえるムスタディオは……無傷。でも、たくましくないし、頼りにならない。
戦闘中であれば華麗な銃技で頼りになりまくるのだが、プールにそんな物を持ってきているはずもない。素手の機工士は無力。
素手でも狙撃が使えるけど、そんな事アグリアス達は知らない。ムスタディオも知らない、いつも銃で戦っているからだ。
「ギャッハッハ! かーわいい女の子が、こーんないっぱい集まって、しかもお互い五人ずつ!?」
「ウヒャヒャヒャ、こりゃ運命の出会いって奴だな。そこの色黒の、エキゾチックなお嬢ちゃん。お、俺と、いい事しよう、ぜ!」
下卑た笑みを浮かべながら、ひときわ醜い男がラファに手を伸ばす。
過去のトラウマもあって、ラファは恐怖に身を歪めた。
その男の手がラファの顔に触れようとした瞬間──カエルが男の手に飛びつき、そして、カエルごと波動拳でぶっ飛ばすアグリアス。
ちなみにアグリアスもラファも男も、カエルの存在には気づいていない。
マラークは妹を守ろうとした事を妹や仲間に知られる事無く、プールの藻屑となった。
「汚らわしい手でラファに触るな!」
アグリアスが猛り、ラファと男の間に割って入る。その両脇に、眉をつり上げたラヴィアンとアリシア。
メリアドールはラファを男達から隠すように抱き寄せている。
ムスタディオは唯一マラークの存在に気づいており、慌ててプールに飛び込んでいた。が、それも誰も気づいてなかった。
「ってェ〜! 痛ぇよ、マジ痛い!」
「てっめっ! よっくもやってくれたな。あ? 俺達、コケにしてんの? え?」
顔の神経をフル稼働して、眉間に深い谷を作り、唇を訳の分からん形にし、男は詰め寄ってきた。
恐い顔で脅しているつもりなのだろうが、数々の死線をくぐり抜けてきた彼女達にとっては何でもない。
「ここは市民プール、公共の場だ。周りの人々も迷惑している、傍若無人な振る舞いもたいがいにしろ!」
「威勢のいい姉ちゃんだな。え? 俺達が、いつ、どこで、誰に、迷惑かけたっての? あん?」
「婦女子に不快な視線を送り肌を触り、耳障りな奇声を大声で上げ、店の物を金を払わずに奪い、そして嫌がるラファに手を触れようとし
た。
これを迷惑と言わず何を迷惑と言うのか!?」
一歩も引かないアグリアス。ドンと胸を張って男を睨みつける。男は彼女の鋭い双眸に気圧され視線を落とし、ニヤける。
不振に思い男の視線を追ってみれば、黒い競泳水着に覆われた身体の中で、もっとも膨らんでいる部位。女性の象徴。
咄嗟に両腕で胸を隠し身をすくめると、男達はゲラゲラと笑った。
「くぅっ……貴様等!」
「ヒャヒャヒャ、可愛いとこあるじゃねぇか。何なら、俺達がもーっとあんたを可愛くしてやるぜぇ?」
「ふざけるな! もう我慢ならん、刀の錆びにしてくれる!」
叫んで、腰に手をやり、虚空を握ってハッとなる。武器など持って来ていない。だからさっきも波動撃を使ったのだ。
「ギャッハッハ。刀ぁ? おいおいおい、公共の場で流血騒ぎなんかやっちゃいけないんじゃないの〜? 悪い子でちゅね〜」
「つーか持ってねぇし刀。あ、もしかしてその大きなおっぱいの中に隠してあるのかなぁ?」
「おお、そうなのか。じゃあ今すぐ水着を脱いで、おっぱい刀で抜いてくれるのかな?」
「くっ……貴様等ごときをこらしめるのに武器など不要!」
モンクとしての修練も積んでいるため、アグリアスは拳を握って構えた。
同様にいつでも拳技を放てるよう構えるラヴィアン、黒魔法をいつでも詠唱出来るよう集中力を高めるアリシア。
「威勢のいい姉ちゃんだな。けどよぉ、俺達を黙らせたきゃ、ウォージリス・プール勝負に勝ってからにしてもらおうか!」
挑発的な男の言葉に周囲がざわめく。
アグリアス達は眉をひそめた。ウォージリス・プール勝負? いったいそれが何だというのか。
「どうするよ? え? 受けるか? 受けないか?」
「愚問! 貴様等悪漢をこらしめるまたとない機会、そちらこそ逃げられるものではないと思え!」
こうしてアグリアス達はウォージリス・プール勝負を受ける事となった。
それがいったいどんな勝負なのか、彼女達はまだ知らない……。
「面白い事になってるねぇ」
「そうね。私ならアイスブレスで凍らせて、プールに放り込んでるわ」
ビーチパラソルの下で並んで腰を下ろしながら、のんきに焼きそばを食べるベイオウーフと、優雅にドリンクを飲むレーゼ。
助ける気など微塵も無かった。というか楽しんでいた。これが大人の余裕というやつなのかどうかは分からない。
中編:
『ウォージリス・プール勝負』……その説明は簡単だった。
「騎馬戦だァッ!!」
一秒で終わった。
これにはさすがのアグリアス達も呆れた、が、すぐに勝利の笑みを浮かべた。
こちとらルカヴィとの戦いで鍛えまくっているのだ、アビリティも習得しまくっている。
「よかろう、受けて立つ!」
「ギャッハッハ、いい度胸だ。どうせなら負けた方は一つだけ何でも言う事を聞く! ってのはどうだ?」
「よかろう、お前等が負けたら二度とこのプールに近づくな」
「あんたらが負けたらピ────してもらうぞ!」
「よかろう」
即答するアグリアス。その隣でラヴィアンとアリシアが顔を青ざめさせ、後ろでラファが白目を剥いていた。
メリアドールは不満そうな顔でアグリアスの耳元で囁く。
「ちょっと、勝手にそんな約束しないでよ」
「負けなければどうという事はない」
「まあ、そうだけど。ところでアグリアス、ピ────って何なの?」
「さあ? ラヴィアン、ピ────とは何だ?」
真面目星人のアグリアスと、教会育ちのメリアドール。もちろんピ────などという行為は見た事も聞いた事も無い。
ラヴィアンは顔を真っ赤にしながら、出店にあるフランクフルトを購入しそれを使って具体的にどうするのかを説明した。
ピ────を理解した後、アグリアスとメリアドールは赤チョコボより赤くなっていた。
「アグ……リアス、あなた、何て約束を……」
「まっ、負けなければいい話だろう?」
「それはそうだけど……」
「騎馬戦の経験は無いが、どんなものかは知っている。あの競技なら負ける気はせん」
「……ところで騎馬戦って、三〜四人で騎馬を作るんでしょう? 五人じゃどうやったってチームを作れないんじゃ?」
「むっ、それもそうだな。おい悪漢共っ、我々は互いに五人ずつしかいないが、どうやって騎馬を作るのだ?」
アグリアスの問いに、野郎共は下卑た笑みを浮かべ嬉々として答えた。
「三人で騎馬を作って戦うのだ!」
「だから互いに五人しか」
「ヘイカモン! 我が相棒〜!!」
リーダー格と思わしきモヒカンの男が叫んだ瞬間、プールの中から突然何かが飛び出した。
そいつはモヒカンの隣に降り立ち、鋭い眼差しをアグリアスに向ける。
「これが俺の相棒、ゴンザレスだ!」
ゴンザレスを見た人々が悲鳴を上げる。
アグリアス達は悲鳴こそ上げなかったが、目を引ん剥いて驚いた。そしてツッコミを入れる。
「マインドフレイアじゃないかー!」
「俺が勧誘したー!」
モヒカンは叫び返した。アグリアス達は愕然とする。まさか、まさかこの男に話術士の心得があるとは!
「くっ、モヒカンのくせに……算術士に謝れ!」
「知るかボケッ! これでこっちは六人だ、そっちももう一人用意しねーと、人数不足で不戦敗だぜ!?」
「不戦敗!?」
不戦敗という事は、戦わずしてこの変態男達にピ────する事になってしまう。
死んでも嫌だ。モルボルを生で食う方がマシだ、モルボル菌の風呂に入る方がマシだ。
「くっ……仕方ない、ラムザを蘇生して……」
「おーっと! ウォージリス・プール勝負にはもう一つルールがあるんだぜ!? チームは男か女、どちらか一方で作らにゃならん!」
「何だってー!?」
「だってそうだろ? 水泳だって陸上だって、みーんな男女別々にやってるじゃねぇか」
「くっ、言われてみればその通り。しかし男女で戦うのならその辺は許容してくれても……」
「女だけじゃ男に勝てないってか? 所詮、女は女だな。ヒャハハ!」
「何だと!?」
確かにオルランドゥ伯やベイオウーフには勝てないが、それは彼等があまりにも強すぎるからだ。男とか女とか関係無い領域だ。
しかしそれ以外の男には負ける気がしない。彼女達はガフガリオンだってウィーグラフだって倒してきたのだ。
それは自信であり誇りだった。それを侮辱されたアグリアス達は、カッと頭に血が上った。
「上等だ、こちらは女だけで相手をしよう」
「くくくっ、いい度胸だ。で、誰がそっちのチームに入るんだ!?」
「レーゼ! 力を貸してくれ!」
アグリアスは戦友に信頼全開の笑顔で呼びかけた。
ベイオウーフの隣でドリンクを飲んでいたレーゼは、ストローから朱唇を離し、答える。
「イヤよ」
アグリアスは戦友の拒絶の言葉に笑顔を凍らせた。
「……何で?」
「だって、負けたらピ────なんでしょ? ベイオ以外の人にそんな事したくないわ、巻き込まないで」
「でも、それじゃ不戦敗で私達が」
「あら、私達のパーティーにはもう一人、とびっきり可愛い子がいるじゃない」
レーゼが微笑み、指をアグリアス達の後ろに向ける。
自分達のパーティーに、他に女性はいない。そう思いながら五人の美女は振り向いた。
未だ目を覚まさないラムザの傍らに、見知らぬ女性が立っていた。
近くの売店で売っているオレンジのワンピース水着を着ている。
水着から出ている腕や足は、女性特有の丸みは無く、しっかりとした筋肉に覆われている。
胸は不自然なほど丸く膨らんでいる。腰のくびれはあまり無い。パレオを巻いているので股間は見えない。
そして金の髪は重力に逆らい、高々といきり立っている。
アグリアスは『彼女』に詰め寄り、悪漢共には聞こえないよう小さい声で訊いた。
「……何をやっておるのだ、クラウド」
「安心しろ、俺には女装の経験がある」
だからってそれは無いだろう。仲間達は一斉に心の中でツッコミを入れた。
それに女装するにしても、身体のラインを隠せる服を着ているのと、身体のラインが丸見えの水着は違う。
これじゃ一発でバレる。アグリアス達は頭を抱えた。
「ほっ……骨太なオナゴ! 惚れた!」
バレなかった、というか惚れられた。アグリアス達の頭にチョコメテオが落ちた。
ベイオウーフとレーゼの笑い声が青空に響いた。
騎馬の編成はすんなり決まった。
長い付き合いのアグリアス、ラヴィアン、アリシアチーム。上に乗るのはもちろんアグリアス。前がラヴィアン、後ろがアリシア。
もう一方は、腕力の高い男のクラウドが前、男嫌いのラファは後ろ、メリアドールが上だ。
敵チームは、リーダーが上、ゴンザレスが前。その他はどうでもいいので省略する。
「注意すべきは敵リーダーだ。奴は話術士の心得があるようだから、奴の言葉には聞く耳持つな。
そしてマインドフレイアの特技に警戒しろ。触手、墨、マインドブラストといったやっかいな技を使ってくる」
「了解」
「先手必勝、敵リーダーを真っ先に総攻撃だ」
「了解」
「負けたら…………………………その、困る。勝つぞ」
「隊長のせいですけどね」「何をされるのかも分かってないのに条件飲まないで下さいよ」
「いざとなったらあなだだけ差し出して逃げるからヨロシク」「私も逃げます」「俺は正体バレれば何もされないだろうからいいや」
「…………」
士気に問題有りだった。
一方、相手チームは。
「俺はあの色黒の子だ! 未成熟な身体がまたラブリー!」「俺はあのエロい水着の女だ! あの水着を着たまま、うぇひゃへあへあへ」
「俺ちょっとポワッとしたあの子な! 清純そうでいい!」「あの真面目そうな女は俺が頂く! あの赤い水着がミスマッチで萌える!」
「俺はもちろん骨太のあのオナゴじゃー! 最高、マジ最高。今すぐ押し倒したい」
「マイーンド! マイマイ、マインドマインド!
(俺はムッチムチな競泳水着の女をもらうで! 肉のつき加減が微妙でそれが最高に淫猥や、俺の触手でエロエロにしたる!!)」
ゴンザレスの叫びは、魔獣語をセットしたレーゼの耳に入り、それがベイオウーフに伝わり、また大爆笑したのだった。
魔物にしか選ばれなかったアグリアス。これを知ったら何と思うだろうか?
何はともあれ試合開始である。
子供用の浅いプールの中で騎馬が四つ組まれた。下になっている人間の胸下までの水位である。
半分は美女、半分は野郎。みんな美女組を応援した。
しかしベイオウーフがトトカルチョを開いてみると、みんな野郎共に賭けた。
という訳で試合開始、勝負の行方はいったい!? 果たしてポロリはあるのか!?
「時に、ハチマキとか帽子とかを着けていないのだから、相手の騎馬を倒せば勝ちでいいのだな?」
「いや、相手の水着を剥いでも勝ち」
男性客は全員悪漢を応援し始めた。
「水着を剥かれたら……って、あきらかにこっちが不利だろう!? お前達は下しか着けていないじゃないか!」
「ああンッ!? そういう事は最初に聞いとけボケ! 今さら遅いんじゃワレッ!」
「くっ……卑怯な。だが負けはせん! 数多の戦いを勝ち抜いてきた我々の力、その身に刻むがいい!」
試合が開始される。アグリアス達は作戦通り、まずリーダーを狙った。
左右に分かれリーダーに迫る。が、ゴンザレスが墨をラヴィアンに向かって吹き出した。
「しまっ……わっぷ!」
モロに墨を浴びてしまい足を止めるラヴィアン。黒い墨がラヴィアンの顔にぶっかけられ、豊かな乳房に滴り落ちる。
ヌルヌルとした墨が胸の谷間に入り込み、くすぐったさにラヴィアンは身をよじった。
「うおおっ!!」
男性客が歓声を上げる。
「ったく! 何やってんのよ!」
文句を言いながら、メリアドール達は横から敵リーダーを攻撃する。
「食らいなさい! 波動撃!」
ドラゴンさえ屠る強烈な気の塊が放たれるが、ゴンザレスは素早く後ずさりして波動を避ける。
水中ではマインドフレイアが有利だ。
「どこ狙ってんだ下手糞! そんな腕じゃ蟻一匹殺れねぇぞ? そのおっぱいを見せてくれりゃコツを教えてやるぜヒャッハー!」
「何ですってぇ〜!?」
安い挑発ではあったが、下卑た声と、耳障りな発音が、メリアドールの神経を大きく揺さぶった。
「メリア、挑発に乗るな! 今のは話術の悪口だぞ!」
「ぶっ飛ば〜す!」
メリアドールはすでにバーサク状態に陥っており、クラウドの声は届かなかった。
トンガリ頭を鷲掴みにし敵に向け「突撃〜!」と叫んでいる。逆らえば頭蓋を握り潰されそうな気がして、クラウドはそれに従った。
一方墨で視界を奪われ、さらに胸に入り込んだせいで悶えているラヴィアン達。
「ラヴィアン! 怯むな! 立ち止まるな! これではいい的だ!」
「そんな事言ったって、コレ、普通のマインドフレイアの墨よりずっとヌルヌルして気持ち悪い〜!」
「あっ! 隊長、左、左! 敵です!」
後回しにする予定だったもう一方の敵がアグリアス達に迫る。しかもそいつらは水中ではなく、水面を走っていた。
「水面移動ー!?」
「うわははは! 俺達三人は全員忍者! さらにアビリティはシーフ! 得意技は鎧を盗む!」
高笑いしながら突っ込んでくる忍者チーム。前と上の二人が、片手をアグリアスとラヴィアンに伸ばす。
「くっ! だが水面移動では高さが合わず盗みにくいはず……!」
そう判断し迎撃しようとするアグリアスだが、忍者達は近くまで来ると下の二人が突然正座した。
すね毛の生えた足で、ソリやスキーのように水面を滑る。
「キモッ!」
「もらった!」
アグリアスに迫る淫猥な手。咄嗟にその手に向かって拳を放つ。伊達にモンクはやっていない、ハメどってやる!
歴戦の戦士アグリアスの反撃に、さすがの忍者は盗むのを失敗した。
だがラヴィアンは両手でアグリアスを支えているため、身をよじって避けようとするしかなかった。
「キャアッ!」
「ラヴィアン!」
下の男の手に小さなリングが握られている。
横から突っ込んできた男の手は見事ラヴィアンの背中に回り、肩甲骨やや下で水着をつないでいたリングを奪い取ったのだ。
ラヴィアンのブラがハラリと前に落ちる。白い乳房は黒い墨で汚れており、そのコントラストが何とも言えぬエロスをかもし出している。
挑発的な水着を着ているものの、ラヴィアンは好きでもない男の前で胸を晒したい訳ではない。
乳房で唯一白くない突起があらわになろうとした瞬間、アグリアスはラヴィアンの上から覆いかぶさり、ブラごとおっぱいを掴んだ。
「たっ、隊長ッ!」
「もう大丈夫だ、ラヴィアン」
涙声の部下に優しく語りかけるアグリアス。歓声が上がるが、それは彼女の優しさに対してではない。
アグリアスの手の中、指の間から、ムッチリと浮かび上がっている乳房。ブラの紐はだらんと垂れ、何とも危うい状態だ。
さらにアグリアスのおっぱいが、ラヴィアンの金髪の上で押し潰されている。一部の男性客が鼻血を吹いた。
「隊長、何でわざわざ上から水着を押さえるんですか!? 紐が背中か肩にあるうちに掴んでおけばいいじゃないですか!?」
「そ、それもそうだ! しかもこの体勢では身動きが出来ん!」
紐は、ブラの上と横から一本ずつ、それが左右にある訳だから、計四本。いちいち結んでいる暇は無い。
エロ忍者達は鮫のように獲物の周りを旋回している。下手に動いたら即座に襲いかかってくるだろう。
「くっ、アリシアは私の両足を支えていろ! 私はラヴィアンの両肩に掴まっておくから、その間にラヴィアンはブラの紐を結んでおけ!」
「でもそれじゃバランス悪くて、攻撃受けたら倒れちゃいますよ!?」
「私が何とかする、やれ!」
アグリアスの気迫に押され、アリシアはラヴィアンから手を離し、アグリアスの両足を下から支えた。
バランスの悪い体勢になった隙をついて忍者チームが迫る。また正座して水面を滑ってきた。
「隊長〜!」
「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬!」
浮かした片手で水面を思い切り叩くアグリアス。途端に水面は真っ二つに割れ、衝撃が忍者達を襲う。
「しまった、避けろ〜!」
だが正座で滑っていた彼等が立ち上がって避ける暇など無く、水面を割る衝撃が彼等を直撃する。
ちなみに真正面から食らったため、下の二人は股間に直撃を受けたのだ。
悲鳴を上げたのは忍者達だけじゃなく、戦いの行方を見守っていた男性客も同じだ。股間を押さえ、我が事のように痛そうな顔をしている。
「よっし! 一騎撃破!」
ガッツポーズを取るアグリアス。メリアドール達と敵リーダーはどうなっているのかと首を回すと、
触手に絡みつかれているメリアドールの姿。
「よぉくやった! そぉれ、そのまま水着を引ん剥けい!」
「キャー! イヤー!」
悲鳴を上げながら触手を振り払おうとするメリアドールだが、ヌルヌルする触手を素手で掴んでも滑ってしまう。
ゴンザレスの触手はメリアドールの腰を縛り、吸盤でしっかりと吸い付いている。
さらに新たな触手がメリアドールのブラの下に入り込もうとしていた。
「メリア! このっ……!」
クラウドが自由に動く足でゴンザレスを蹴るも、水のせいで勢いを殺されロクなダメージを与えられない。
「無駄無駄無駄無駄ァ!」
敵リーダーのモヒカンは下卑た笑みをクラウドに向ける。そして、
「骨太のオナゴよ、俺と一緒に無限に広がるダークスカイに輝く何千の煌きを見上げながらシューティングスターにお願いしないか?
俺達のハッピーフューチャーを君の瞳に乾杯して、木陰に隠れて人に見られるかもとスリルを楽しみながらイヤ〜ンでエッチィな……」
「キモイ!」
口説いて、フラれた。
「ばっ、馬鹿な。俺が独自に編み出した究極の話術……『口説く』が失敗するとは!?」
「あんなので口説き落とせる女がいるかっ!」
もっともクラウドは本当は男なので、男に口説かれても誘惑される事など無いのだが。
「メリアドール達は苦戦しているようだ。ラヴィアン、ブラはまだ結べんのか!?」
「ちょ、待って下さいよ〜。墨が手についてヌルヌルして、上手く結べな……」
頭の上から急かされ、ラヴィアンは紐を結ぶのに手間取ってしまう。
その間にマインドフレイアの触手が、ついに、メリアドールのブラを剥ぎ取ろうとしていた。
「やっ、やめて〜! 公衆の面前で胸を晒すなんて、お嫁に行けなくなっちゃう〜!」
「マインドー! フ〜フ〜レ、フ〜レイアレイアッ!
(うっさいわこの色気無しが! 俺かて好きでやっとる訳やあらへん、早うあのアグリアスちゃんの水着剥ぎ取りたいんやボケッ!)」
メリアドール絶体絶命。
これから受けるだろう恥辱を予感し、気丈な女騎士は涙を浮かべた。
その後ろで彼女を支えるラファは、どうする事も出来ない自分を歯がゆく思っていた。
(ああ、兄さん……助けて……)
その叫びが兄に通じたのか! メリアドールが暴れたせいでラファが一歩後ずさった瞬間!
踏んだ! 兄を!
前回波動撃で吹っ飛んだマラークは、カエルのままプールの底に沈んでいたのだ。
ちなみにムスタディオは探し疲れ、いつの間にかまだ目覚めないラムザの隣で倒れている。
カエルに変身している兄のツルツルした表面を踏んづけたラファは、思い切り後ろに倒れた。
咄嗟に伸ばした手がメリアドールの赤いパンツを掴む。
さして重くないラファだが、全体重を一気にかけて引っ張ったためゴンザレスの触手でも支えきれなかった。
このままではメリアドールに引っ張られ自分も倒れてしまう。そう悟ったゴンザレスは咄嗟に触手を放した。
ラファとメリアドールは大きな水飛沫を立てて水中に落ちる。
水中で体勢を立て直して立ち上がったラファとメリアドールの上半身が水面から飛び出した。
メリアドールのブラは、無事だった。
ラファの手には、メリアドールの股間を覆っていた赤い布が握られていた。
それに気づいた男達は、揺れる水面の向こうにあるメリアドールの下半身を凝視する。が、よく見えない。
それに気づいたメリアドールは悲鳴を上げて、ラファの手から下の水着を奪い取り、大急ぎで履いた。
「オ……私達の負けだ」
クラウドは両手を上げて降参し、メリアドール達と一緒にプールから上がる。
「骨太のオナゴよ! 必ずや勝利して俺のものにしてやるからなー!」
敵リーダーの熱烈なラブコールに背筋を震わせながら、クラウドは早く男の姿に戻ろうと出店の陰に逃げ込んだ。
「マーイン、フレフレイア。
(いよいよやな、アグリアスの身体に触手巻きつけまくるで〜)」
ゴンザレスは瞳をギラつかせて獲物を見据える。
そこにはブラの紐を縛り終えたラヴィアンと、一人でアグリアスを支えていてちょっぴり疲れたアリシアと、
ムッチムチの競泳水着の似合う麗しのアグリアスの姿があった。
ちなみに妹に踏んづけられたカエルは、まだ沈んでる。
後編:
向かい合い、睨み合う男女の騎馬。
「ゲヘヘ。覚悟はいいかお姉ちゃん? 俺達が勝ったらピ────だぜ? ヒャハ!」
「そっ、そのようなハレンチな真似などしてたまるか! 返り討ちにしてくれるわッ! 先手必勝! 疾風、地烈斬!」
身を乗り出してラヴィアンの胸の前に拳を叩きつけるアグリアス。水面を叩いた刹那、プールが真っ二つに割れる。
が、戦いの行く末を見守っている男性客が注目したのは、
ラヴィアンに覆いかぶさっている姿勢のため金髪の上で潰れているアグリアスのおっぱい。
「うおおー!」
歓声の中、マインドフレイアのゴンザレスは華麗な水中移動で地烈斬をかわす。
人間には真似出来ないスピードで水中を動き回り、マインドフレイアは金髪三人組に迫った。
「ゴンザレース! 墨で攻撃じゃー!」
「マイン! フレフレイ!(うっさいボケ指図すんなや! 丁度今やろうとしとったとこやアホンダラー!)」
主の命令に素直に従って(いるようにアグリアスや野郎共には見えた)、ゴンザレスは墨を放った。
だが前に一度食らっているだけに、ラヴィアンは軽く首を傾けただけで避けた。
そしてラヴィアンの後ろにあった、アグリアスのへそに命中した。
「ヒャッ!」
水着ごしとはいえ墨のヌルヌルした感触はおぞましく、アグリアスは背筋を震わせた。
その震えは下で支えている二人にも伝わり、体勢を崩すまいと一瞬動きを止める。
「今じゃあ!」
リーダーのモヒカン頭が叫ぶ。それに応えるように、後ろで支えていた男も叫んだ。
「時よ、足を休め、選ばれし者にのみ恩恵を与えよ! スロウ!」
何気にジョブに恵まれている野郎チーム。何と後ろの男は時魔道士だったのだ!
「しまっ……たぁ……」
時間の渦が金髪三人娘を襲い、時の流れが遅くなってしまった。ただでさえ水の中なのに、これではロクに動けない。
戦うにしても逃げるにしても後手に回ってしまう。絶体絶命のアグリアス達に嗜虐の牙を向けながら、助平な男達が迫った。
「マーインド! マイン、フレイマフレフレイア!
(フハハハハ! すぐには倒さへん、じっくりたっぷりねっぷり可愛がったるぜぇマイスイートハニー!)」
人間の男達よりずっと興奮しているマインドフレイアが、無数の触手を蠢かせた。
その淫猥なぬめりと動きにアグリアスの頬が引きつる。
「いぃ〜やぁ〜〜!」
純情騎士の間延びした悲鳴を聞き、人間の美女が大好きな変り種のマインドフレイアはますます昂ぶる。
「マイ! フレ!(嗜虐心がそそられるぅ! それゆけ俺の吸盤触手!)」
伸ばされた触手は実に八本! イカっぽいので手足は十本あるだろう、だから下の足を二本と計算して手は八本だ!
一本は水中からアリシアの腰に絡みつき、倒れてしまわないよう支える。より長時間アグリアスをいたぶるために。
残りの七本はアグリアスのムッチリとした肢体を狙う。
まず両腕に巻きつき吸盤でしっかりと吸いついて動きを封じるために二本!
さらに左の太ももにも一本、右の膝にも一本絡みついてる。
これで動きは封じた、残る三本はアグリアスに恥辱を与える事に専念出来る!
右太ももに伸ばされた触手は動きを封じるためのものではなく水着に進入するためのものだった。
股間と腰をつなぐ水着のラインの中に触手の先端が忍び込む。
先端が下腹へ到達すると、細い先っぽでへそをくすぐる。ヌメヌメした気色悪さがアグリアスの身体を悶えさせた。
「くぅ〜……あぁあ〜……。やぁ〜めぇ〜ろぉ〜」
「マイーンド(ここまできてやめられる訳ないやろ)」
ゴンザレスの吸盤触手のさらなる一本がアグリアスを襲う。
左の腰から回された触手が背中を一周して胸の下にやってくると、今度は谷間を上へと登っていった。
競泳水着に隙間無く覆われているムッチリとした柔肉が左右に押しのけられ、その豊かさを強調させる。
触手はさらに伸び鎖骨へと到達し、肩紐を掴んで上に引っ張った。白い片乳の上部分が公衆の面前に晒される。
「いっ……やぁだぁ……っ!! もぉ……うっ……やぁめっ……うぷっ!」
助けを請うアグリアスの朱唇を新たな触手が撫でる。
その触手はアグリアスの首筋を這い、腰に巻きついている触手のようにグルリと首に巻きついている。
吸盤で柔肌をなぶり、先端が唇や頬をペチペチと叩く。
「よー、どうした? 顔赤いぜ? あ、もしかして気持ちいい? よっ! この変態!」
モヒカン男はアグリアスの精神を陵辱すべく、羞恥心を煽る。彼が独自に編み出した話術『言葉責め』だ。
「いいねいいね! ゴンザレスの触手に全身をなぶられて成すすべもない美女! エロい! エロすぎるよぉ〜!」
あまりにも下卑た責め苦に、アグリアスは目頭が熱くなるのを感じた。
(くっ……情けない! 誇り高き騎士が、こんな辱めを受けるとは……)
以前別のマインドフレイアの触手に襲われた時は、その恐ろしい膂力で締めつけられ、骨がミシミシと悲鳴を上げたものだ。
だがこのマインドフレイアの触手は、アグリアスに淫靡な責めを与えるために蠢いている。
殺そうと思えばいつでも絞め殺せる状況だろう。気丈な騎士の青い瞳が屈辱に震えた。
「た〜い〜ちょ〜お〜……!」
何だかんだいっても尊敬しているアグリアスの危機を救おうと、ラヴィアンは水中でマインドフレイアの身体を蹴飛ばした。
それと同じ事をクラウドがやっていた事を彼女は知らない。
より力の強いソルジャーの攻撃でさえ効果が無かったのに、ラヴィアンの細い足でダメージが与えられるはずもなかった。
腰から胸、鎖骨へと絡みついていた触手は肩紐を手放すと、今度は胸元から競泳水着の中に入り込んだ。
左の乳房と水着の間に異物が入り盛り上がる。
胸と、下腹。ピッチリと身体に密着した水着の内側で蠢く二本の触手がかもし出すエロチズム。
このままでは年齢制限の世界に突入してしまう。年齢制限のついている別の板に行かなくてはならない。
さすがにこれはマズイと、のん気に観戦していたベイオウーフとレーゼが立ち上がる。
メリアドールとラファも、アグリアスを助けようとプールに歩み寄った。
ちなみにクラウドは着替え中、ラムザとラッドはまだ気絶中、ムスタディオは復活したものの我を忘れて観戦中。
マラークはまだどこかで沈んでおり、もうしばらくすればクリスタルになるかもしれない。
───が! 見守っていた仲間達よりも早く、彼女が動いた!
リーダーのアグリアスと、騎馬の前を受け持っていたラヴィアンの後ろに隠れていたため忘れられていた仲間、アリシア!
「ひるがえりて来たれ、幾重にもその身を刻め…」
時魔法には時魔法。スロウを相殺するべく、彼女は詠唱し、叫んだ。
「ヘイスト!」
一瞬にして清流と化していた時という川が激流に変化する。
身体が軽くなるのを感じたアグリアスは、即座に頬をなぶっていた触手に噛みつく。イカの味が口内に広がった。
「マインッ!?(ッ痛ァアアァアッ!?)」
突然の反撃に怯んでゴンザレスの触手が緩むやいなや、アグリアスは身体に絡みついていた触手に連続拳を叩き込む。
ヘイストで倍のスピードに跳ね上がった拳の連撃が、無数の触手に何発も何発も衝撃を与える。
さらにアリシアの片足が水面から跳ね上がり、ゴンザレスの顔面に蹴りを叩き込んだ。
ただの蹴りではない、パワーブレイクだ。
連続拳に反撃しようとしていた触手に突然力が入らなくなり、ゴンザレスは半ば混乱状態に陥ってしまった。
「おっ、落ち着けゴンザレス! 女にいいようにやられんじゃねぇ!」
今にもバランスを失って倒れてしまいそうなマインドフレイアに向かって怒鳴るモヒカン頭。
しかし混乱状態のゴンザレスの耳には届かなかった。
「よくもあのような辱めを……許さん!」
アグリアスは支えになっている二人の腕から空高く飛び上がり、マインドフレイアの顔面に向かって強烈な蹴りを放った。
「マイ〜ン!?(なんやてー!?)」
憎き怪物の顔面に足をめり込ませたアグリアスが睨みつけているのは、マインドフレイアの上に乗っかっているモヒカン頭。
「次はお前の番だ」
マインドフレイアの顔面を足場に、アグリアスはモヒカン頭に向かってヘッドブレイクを放つ。
確かな手ごたえの後、男のモヒカンが壊れ、プールに散った。
そう、モヒカンはカツラだったのだ。
公衆の面前でハゲ頭を晒し恥辱に顔を歪めるモヒカン……いや、ハゲだが、
触手プレイという痴態を晒したアグリアスの怒りはまだ収まらない。
零距離波動撃をハゲの鳩尾にぶち込み弾き飛ばす。
空中に放り出されたハゲ。プールに落ちれば決着であるが……そう簡単に終わらせるはずがなかった。
アリシアがすでに、新たな魔法を詠唱していた。
「時を知る精霊よ、因果司る神の手から我を隠したまえ… ストップ!」
空中で時と共に静止するハゲ。その表情はこれからされるだろう仕打ちに対する恐怖で歪んでいる。
アグリアスはゴンザレスの顔面を力強く蹴ってジャンプ、ハゲの身体に飛び乗る。
足蹴にされたゴンザレスはついに力尽き、水中に倒れた。
その倒れたゴンザレスを踏みつけながら、ラヴィアンはさっきスロウをかけてきた男に肉薄する。
「よっくもやってくれたわね! アーマーブレイク!」
蹴りを放つが、所詮水中、たいした威力にはならない事はすでに実証済みである。
だがしかし、相手の男が身につけている物は海パン一丁。アーマーブレイクで攻撃するとなれば、狙う場所は一点。
人体最大の急所ともいえるその部分を蹴り上げられた痛みは、水中であっても絶大であった。
さらにアリシアが駄目押しにと、更なる魔法を唱える。
「命に飢えた死神たちよ、汝らにその者の身を委ねん… デス!」
ただでさえ急所を蹴られ魂が抜けかけている時に、死神が彼の魂を奪いに現れた。
「うぎょわへあがくうきょべへりゃはは〜い!」
言葉にもならない悲鳴を上げ、男は水の中に沈む。
空中で静止するハゲの上に乗っかっているアグリアスは、嗜虐の笑みを浮かべながら思い切り拳を鳩尾に振り下ろした。
「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、直撃地裂斬! 」
大地を割る衝撃が、直接ハゲの身体を駆け巡る。骨が、内臓がきしみ、悲鳴すら上げられない。
さらに風水、水塊でプールの水を手のひらに集め、それを男の口の中に捻り込んだ。
「ガボガボゴヴァッ!」
大量の水が喉から肺へと流れ込む。窒息の恐怖と苦しみにより、ハゲの目から涙が溢れた。
さらに逆流した水が鼻からも飛び出た。
そしてアグリアスは、完膚なきまでにとどめを刺すべく、最後の一撃を放つ。
「この指先に全身全霊を込めて! 地獄への引導! 秘孔拳!」
鍛え上げられた指が男の秘孔を突く手ごたえを確かめた後、アグリアスは再びジャンプをして男から離れた。
空中でクルリと一回転したアグリアスが飛び降りた先には、待ってましたとばかりに騎馬を組んでいるラヴィアンとアリシア。
頼れる部下の上に華麗に着地した瞬間、大きな歓声が上がった。
助平心からではない、アグリアスの電光石火ともいえる猛攻と、天才的な美技に対する惜しみない拍手が送られる。
こうしてウォージリス・プール勝負は、アグリアス達の勝利で幕が下りた。
ハゲ男達がプールに近づく事は、もう二度と無いだろう。
そしてアグリアス達はピ────をせずに済んだ事を、心から喜んだ。
夕暮れの中、アグリアス達はソフトクリームを舐めながら街を歩いていた。
「すみませんでした。アグリアスさん達が大変な時に気絶なんかしていて……」
「きっ、気にするな」
ラムザはお詫びにと女性陣にソフトクリームをご馳走してくれていた。
さっきから何度も自分がもっと早く目を覚ましていればと言っているが、あの痴態を見られていたらと思うとゾッとする女性陣。
ラムザとラッドが気絶していた事に心から安堵していた。
ちなみにのん気に観戦してたムスタディオはあの後気絶させられ、今はラッドがおぶっている。
「ところでアグリアス」
男性陣の中で唯一ソフトクリームを食べているクラウドが、アグリアスの横に並んだ。
そして後ろを親指で指差しながら、問う。
「あれ、ついてきてるけどいいのか?」
「あれ?」
いったい何の事かとアグリアスが振り返ってみれば、最後尾にマインドフレイアのゴンザレスの姿があった。
吸盤触手の恥辱の記憶が呼び起こされ、アグリアスは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「なっ、なぜここにいる!?」
「マイーンドフレ、フレイーアッ」
明るい口調で答えるゴンザレスだが、何と言っているのか分からない。
が、唯一魔獣語をセットしていたレーゼには理解出来た。クスクスと笑いながら通訳する。
「姐さんの雄姿に惚れてもうた、一生姐さんについて行くでっ。ですって」
「何ぃー!? 関西弁……惚れ……えぇっ!?」
まさかまた触手でいやらしい事をしようと企んでいるのではと、アグリアスはラムザの陰に隠れる。
レーゼは頬がニヤけるのを堪えながら、言葉を続けた。
「そういえばアグリアス。あなた、調教をセットしっぱなしじゃなかったかしら? 昨日、養豚のために豚狩りしてたでしょ?」
「あっ、そういえば」
「どうやら調教が発動して仲間になっちゃったみたいね、ゴンザレス君」
「マイマイ〜ン、マーインドーフレーイフレーイア?」
「俺もう姐さんにメロメロや、姐さんから誘ってこん限りエロい事もせえへんから仲間にしてくれへん? ですって」
プルプルと首を横に振るアグリアス。
その嫌がりっぷりに、ラムザもゴンザレスの申し出を断ろうとした。だが、
「マイード、フレフレ」
「ちなみに俺、レベル90やでー。だそうよ、どうする?」
「強っ!?」
平均レベル50のラムザ一行は驚愕した。何でこんな強いモンスターが、あんな連中の手下に!?
というのも、ゴンザレスは単に人間の美女と巡り合うためにハゲ男達の仲間になっただけなのだ。
「う、う〜ん……レベル90……。これは貴重な戦力になる……」
「ら、ラムザぁ……」
悩むラムザ、怯えるアグリアス。そして、駄目押しをするゴンザレス。
「マイン、ド、マイマイフレイーア。マイン?」
「そうそう、俺、この近くにあるディープダンジョン出身なんや。よかったら案内しよか? って言ってるわよ」
「よろしくゴンザレス」
即断するラムザ。実は現在ラムザ一行はディープダンジョン攻略中なのだが、どうやっても一階より下に行けず困っていたのだ。
さすがにディープダンジョンの情報は、アグリアスの目から見ても非常に魅力的だった。
こうしてラムザ一行に新たな仲間、マインドフレイアのゴンザレスが加入したのだった!
「おかえり、プールは楽しかったかね?」
宿の食堂で、オルランドゥが帰りを待っていた。
「楽しかったというか、大変でした」
オルランドゥの隣の席に、アグリアスは倒れ込むように腰を下ろす。
そしてその隣にゴンザレスが座る。
「……アグリアス、その隣のマインドフレイアは何かね?」
「あー……その、プールで戦って……調教成功しちゃって……ついて来ちゃいました」
「マイン! マーイ」
「そうか。ゴンザレス君というのかね、私はオルランドゥだ。以後よろしく」
「……オルランドゥ伯も魔獣語をセットしておられるのですか」
プールから帰ってきた面々が席について食事を頼む中、オルランドゥはワインを飲みながら笑った。
「ああ、実は銭湯がとても豪勢でな、ペットも一緒に入れる風呂もあったのだ。
そこでベヒーモスを連れた話術士の方と盛り上がってな」
「話術士……ですか」
ちょっと前の嫌な記憶が蘇るアグリアス。
すべての話術士があのハゲのような人物でない事は分かっているが、何ともいえない気持ちになった。
「その話術士がなかなか博識でな、モンスターの生態について研究しておったのだよ。
やはり魔獣語でモンスターと話が出来ると研究もやりやすいそうだ。ベヒーモスも主によく懐いておったよ」
「はぁ……」
「そのベヒーモスもなかなか洒落の分かる奴でのう。もし自分が人間だったら、主の話術士殿を自分の嫁にしたいと言っておった」
「モンスターが人間を嫁に……ですか。ううっ、何か寒気が……」
アグリアスのグラスにかいがいしくワインを注ぐゴンザレスの熱い視線を感じ取り、アグリアスは震えた。
そして、オルランドゥの向かいの席に座っていたムスタディオが、グラスを片手にむせ返っていた。
「ムスタディオ、大丈夫か?」
「ゲッホゲホッ。だ、大丈夫です。それよりオルランドゥ伯、さっきの、嫁にするってのは……」
「ああ、人間に恋するモンスターなんてロマンチックではないか」
「それって、人間の方が女……って意味ですよね?」
「うむ」
そこでようやく、他の仲間も気づく。
女? なぜ男のオルランドゥが、女性と一緒に風呂に入っていたのか。
「そっ、そこってまさか……ペットだけじゃなく、その男と女も……」
「そりゃ混浴だったからのう。その後もジャグジー風呂や露天風呂などを一緒に回って、すっかり疲れが取れたわ」
ムスタディオは瞳をギラつかせながら、ラムザに向かって頭を下げた。
「ラムザ、明日はみんなで銭湯に」
「却下、明日はさっそくディープダンジョンを攻略します。ゴンザレス、よろしく頼むよ」
「マイーン!」
「おお、頼もしいのう。よい仲間を得たものじゃ、どうやってゴンザレス君と知り合ったのだ?」
こうしてウォージリスの夜は更けていき、明日のディープダンジョン攻略に向けて身体を休めるのだった。
レーゼを除く女性陣は、やけに親しくしてくるゴンザレスの行動に裏があるんじゃないかと気が気ではなく、
ちっとも眠れなかったそうな。
結局翌朝、寝不足の女性陣を気遣い、ディープダンジョン攻略は延長となった。
もちろん、ムスタディオはその間、何とかして銭湯に行こうと試行錯誤していたらしい。
ちなみに昨晩、アグリアス達が戦ったプールにて、排水溝に詰まっていたカエルが救出されていた。
筋肉質で動物好きなプールの監視員のお兄さんにマウゥ・トゥ・マウスや心臓マッサージを施されて目覚めたカエルは、
泣きながら夜の街に消えて行ったそうな。
次回『爆熱天国!? バスタオル一枚の女探偵・湯煙下着盗難事件 忘れられたカエルの哀歌』へ続く!
予告は嘘! 完!