氏作。Part17スレより。



アグリアスオークス、元聖ルザリア近衛騎士団所属。
極上の美と特上の才に恵まれた23歳。
…そんな「ラムザ隊のヴィーナス」、アグリアスオークスに関して…
一つ、ラムザ隊男性陣の一部で議論になってることがあった。
ラッドが主張する。
「巨乳だよ!巨乳!」
スタディオが返す。
「貧乳だ!貧乳!」
彼女のスタイルに議論の余地は無いのだが、たった一つ見えない場所がある。
ブレストプレート…胸を覆う鎧の「中身」である。
3人用テントの中で2人が激論を交わす中…
もう一人の住人が帰宅した。
ラムザっ!お前はどっちだと思う?」
二人が同時に声を張り上げる。
「え?何が?」
驚き、二人の顔を交互に見ながら言うラムザ
アグリアスさんの胸の大きさだよ!」
「巨乳に決まってるよな!牛も顔負けの柔らかオッパイだよ!人として、男として、そう思わないでどうする!?」
涎をたらし、両手で、自らの胸についている架空の巨乳を揉みしだくラッド。
「…お前、わかってないね…スタイルがいい?モデルってのは貧乳なんだよ。胸をユサユサ揺らして剣が振るえるか?なあ!お前ならわかるよなぁ。」
そんな低劣なラッドのしぐさを見て、肩をすくめ、ラムザの同意を求めるムスタディオ。
「お前ぇ!巨乳を望まないなんて、男として恥ずかしくないのかっ!」
ラッドは勢い良くムスタディオを指指し、怒鳴りつける。
「ハッ!理想と現実は遠いんだよラッド君。彼女は貧乳だからこそ、ブレストプレートで誤魔化してるのかもしれないだろ。」
鼻で笑うムスタディオ。




そして、徒労のみが蓄積する議論を続けること約20分。


「せめて、ブレストプレートだけでも外してもらえればなぁ…」
という
「結局、見てみなけりゃわからない!」
という、ごくごく平凡な、当たり前の結論に達した2人。
「…ラムザ、お前、アグリアスさんに頼んでブレストプレート外してもらってくれよ。」
「…そうだよ。アグリアスさん、お前のこと、結構気に入ってるみたいだからさ。」
先ほどまでが嘘のように、申し合わせたかのように矛先を変え、ラムザに懇願した。
「い、いや、そんな事…」
ラムザがさすがに承諾を渋っていた時。


ラムザ、邪魔するぞ。」


ドクン!!!
3人の心臓は同時に激しく膨張した。
疑惑のブレストプレートをつけた騎士…アグリアスオークス本人がテントに入ってきたのである。
「食料と隊予算の件だが…ん?」
ラッドとムスタディオは、いままでの勢いが嘘のように、うつむき、縮こまっていた。
ラムザ、この2人はどうしたんだ?」
「え、え、あ、あ、その…その…」
(…チャンスだ行けよラムザ!)
(…そうだよ、行け行け!)
アグリアスには見えない位置から、ラムザを指で小突くラッドとムスタディオ。
しかし、3人の中で、最もアグリアスに好意を持ち、かつ、最も純情なラムザは混乱し…
「どうしたのだお前まで。ミノタウロスに襲われても冷静なお前らしくないぞ?」
微笑を含めながら言うアグリアス
「い、いや、ですから…」
そして、その「女神の微笑み」が逆効果となり、ますます混乱するラムザ
「いけ、いけ、いけ。」
そんな彼の背中を押すラッドとムスタ。
「どうしたのだ?」
「えっと、え、っと、だから…」
ラムザの泳いでいる目を、無垢の瞳で見つめるアグリアス
…そして…
「…そ、そうだ、アグリアスさん、オッパイ見せてもらえませんか?」
…シーン…
真っ白になるテント内の空気。
凍りつく4人。
そして…
「ラ、ラムザ!ちょっと来い!」
アグリアスラムザの手を引っ張り、強引にテントから連れ出した。
そして、残されたラッドとムスタディオは…
ラムザ、思いっきり説教されてるだろうな…」
「ああ…今頃、絞られてるんだろうな…」
「帰ってきたら、あいつの好きな紅茶でも飲ませてやるか…」
「…だな。」
と、2人の意見は一致し、アグリアスに連れて行かれるラムザの背中を見つめ続けるのだった。




30分後
「……ただ…い…ま……」
「意識ここにあらず」という表情で、ヨロヨロと左右によろめきながら、ラムザはテントに戻ってきた。
「ごめんなラムザ。めちゃくちゃ怒られたろ。」
「う…う…ん……そう…でも…な…かった…。」
そう心配そうに言いながら、ラムザのために紅茶を淹れるラッド。
「…滅茶苦茶に絞られたんだな…悪かったな…俺たちのせいで。」
「そ…んな…こと…ない…よ…」
「おいおい、ラムザ、お前の責任感が高いのは知ってるけどな…」
一番悪いのは俺達なんだから…と、言いかけた時。
ラムザの口からこぼれ出た言葉は、ラッドとムスタの鼓膜をはっきりと揺らした。
「絞…った…けど…ね…」
そう言い残し、ラムザは紅茶には目もくれず、寝袋に入り、眠りについてしまった。
「お、おい!何を絞ったんだ!?おい、起きろラムザ!何を絞ったんだよ!」
と、貧乳論者のムスタディオはラムザの体を揺らし、聞き出そうとするが、ラムザはぴくりとも動かなかった。
そして、巨乳論者のラッドはポツリとつぶやいた。
「…勝った…」