氏作。Part16スレより。


ここ数日で我々の状況は一変した。
始めはラムザがザルバック殿を説得すると言ってルザリアに行き、失敗した。これについてはしょうがない。
なにしろ相手は私がラムザと行動を共にする前に手本としていたほどの人だ。まあ、その、職務に忠実な方なのだ。
それはいい。いや、良くはないが、十分考えられた事態だ。問題はその後だ。
どこから嗅ぎつけたのか異端審問官が現れ我々に異端者の烙印を押したのだ。
その場は何とかお帰り願ったが、これにより私達は名実ともにお尋ね者となった。この時点で雇われ者の連中はほぼ全員脱隊した。
ラムザが「しかたありません。誰だって自分の命は大切ですから」と言って笑った顔はとても悲しげに見えた。
残ったのは私、ムスタディオ、アリシアにラヴィアン、ラッドと一匹のチョコボだけだった。
その後聖石の確保に向かったオーボンヌ修道院ではシモン殿が殺され、一緒に居たアルマ殿は連れ去られ、・・・二度と見たくないと思っていたルカヴィが現れ、消えた。
そして今、奴等のご招待を受けてアルマ殿の救出に向かっているのだが・・・ラムザの様子がおかしい。
そう気が付いたのはゼクラス砂漠での戦闘中だった。
普段は連携して倒すはずの牛鬼に一人で向かっていったり、ボムにとどめを刺し損ねて自爆されたり、罠にかかって弱ったところにゴブリンにボコ殴りされて死にかけたり・・・。
とにかくラムザらしくない。
「おい、大丈夫か?」
見かねたムスタディオが声をかけるが、
「ああ、大丈夫。それより早く片付けて先に進まないと・・・」
と言ってまた敵に向かっていってしまった。
どうやらアルマ殿の事が気にかかって戦闘に集中しきれないようだ。
ラムザ!今は目の前の敵に集中しろ!」
「わかってます!」
・・・あ、また罠にかかった・・・駄目だな、あれは。
「ムスタディオ、アリシアラムザの援護だ!ラヴィアンは私に続け!!手早く終わらせるぞ!!」
ラムザが持たないからな、と言う言葉は飲み込み、私自身は残敵の掃討に向かった。


どうにかモンスターどもを蹴散らして砂漠を抜け、野営を行う。
「姐さん、ラムザどこ行ったか知らない?」
食事も終わりそれぞれが焚き火にあたりながらくつろぎだした頃、ラッドが声をかけてきた。そういえば何時の間にかラムザがいない。
「いや、どうした?」
「あー、昼間の戦闘でだいぶやられたって聞いたからコレでもって思ってさ。食事のときに渡すの忘れてて」
といってハイポーションを見せる。
「なるほど。・・・そうだ、私もラムザに話があったのだ。見つけたらここに来るように言っておいてくれ」
「リョーカイ。オレはそのまま見張りにつくんで、ごゆっくり」
ニヤニヤと笑って去って行くラッドの後頭部に手近な石をクリティカルヒットさせる。
アグリアスもずいぶん積極的だねぇ」
スタディオ、貴様も石を喰らいたいか!
ラヴィアンもアリシアもクスクス笑いながらテントの中に引っ込んでいく。
ええい、貴様らの考えているような事など起きん!とっとと寝てしまえ!


焚き火に薪をくべながら待つ事数分。足音が近づいてくる。
ラムザ?」
「はい。・・・昼間はすいませんでした」
「いえ、こんな状況よ。・・・むしろ当然だわ」
そんな事を言いつつ自分の隣に座るよう促がす。
「でも皆にも迷惑かけてしまいましたし・・・・・・」
と言って懐からハイポーションを出して見せる。ラッドにもらった物だろう。
「いつも苦労しているんだから。むしろこんな時ぐらい頼ってくれなければ私達がついてきた意味がないじゃない」
そういって笑いかける。しかしラムザの表情は暗い。
「特に私は同じような状況でラムザに助けてもらったし。これぐらいは当然よ」
「しかし、僕は結局・・・・・・」
俯きそういうラムザの言葉を遮ってさらに言う。
「オヴァリエ様には貴方の親友がついているのでしょう?だから大丈夫だといったのは貴方よ」
「・・・そうでした」
「貴方は一人で抱え込みすぎる。もっと周りに頼ってもいいし、甘えたっていい」
そういう私の言葉に苦笑した彼は、
「・・・・・・分かりました。では早速お言葉に甘えさせていただきます」
と言うと、私の太腿を枕にして横になった。
「・・・ちょっとラムザ?甘えていいとは言ったけど・・・」
「体起こしているのツライんですよ。お願いします」
そう言って私にハイポーションを渡してくる。ハァ・・・こいつめ・・・。
「言ってしまった以上しょうがないからやるけど、今日だけよ?」
「うーん、残念」といいながらニコニコしているラムザを見て、まあいいかと思ってしまうのは彼の人徳か。(愛です愛!byラヴィ&アリ)
「ねえ、アグリアスさん・・・」
ハイポーションラムザに塗りながら(と言っても膝枕しながらなので塗れる範囲が限られているが)「何?」と聞き返す。
「アルマ、無事ですよね・・・」
そう呟いた彼の表情は腕で隠されていて見えなかった。私は「ええ、きっと無事に帰ってくるわ」としか返せなかった。
願わくば彼が私のような思いをしなくてすみますように・・・・・・。