氏作。Part15スレより。


アグリアスさん、行きましょうか♪」
「は?」
ラムザはそう言うとキョトンと目を丸くするアグリアスの手を無邪気な顔で引っ張る。
アグリアスは顔を赤らめ、ラムザにされるがまま付いて行くが、しかしやはり戸惑ってしまう。
「ラ、ラムザ一体、どこへ行くんだ?」
ようやく発した問いにラムザアグリアスがクラクラする位の眩しい笑顔で答える。
「やだなぁ、約束したでしょ?一緒に洋服買いに行くって♪」
一瞬、魂魄が飛んでいたアグリアスはすぐに立ち直ると、
「あ、ああ、そ、そうだったな、うむ。貴公に頼んだのだったな。」
と、どもりながらも何とかそう言い、ラムザの笑いを誘った。
(しまったな〜。そうと分かっていればもう少し入念に髪を整えたりめったにしない化粧だってした
のに、肌の手入れも・・ってなにを考えているのだ私はっ!)
ラムザとデートということでちょっとパニックになったアグリアスはギクシャクとラムザの後に続く。



「前にも言いましたけど、僕の服のセンスはちょっとしたものですから。アグリアスさんは今日は僕に
任せておいてくださいね」
得意げに胸をそらすラムザの子供っぽい仕草にに少し平静さを取り戻すと、
「ああ、期待しているよラムザ。」
アグリアスは微笑と共に答えた。
それでもやっぱりどこか緊張していたのだろう。
「?」
商店街まで着くとアグリアスは道行く人がクスクスとこちらを笑っているのに気がついた。
最初は気のせいかとも思ったがどうもそうではないらしい。
そうしてアグリアスはハッと気がついて己の右手に目をやる。
その手は周囲の目を意に介さずニコニコと笑う童顔の貴公子の左手としっかりと繋がれていたのだった。
「♪〜」
しかしラムザの幸せそうな顔を見るとどうにも言い難く、アグリアスは結局ラムザが止まるまで顔を赤
らめて俯いていなければならなかった。



「ここです、ここ!」
ようやく2人がたどり着いたのは妙に可愛らしい、以前のアグリアスなら決して足を踏み入れることは
なかったであろう、ピンク基調が眩しいブティックだった。
「うわぁ、可愛い店ですね〜。」
「・・・。」
ショーウィンドウに並ぶあまりにも可愛らしすぎる衣装の数々。
アグリアスも言葉だけは知っている。
いわゆるゴスロリというやつだ。
アグリアスはしばし絶句。
そしてようやく一言放った。
「誰に薦められた?」
自分でもびっくりするぐらい怨念の篭った声だったがラムザは不思議な顔をして、
「何がですか?」
と聞き返す。
「この店だ。貴公がこのような店を知っているとは、うむ、少しは思うが、それでも誰かに薦められ
たのだろう。一体誰だ?」
アグリアスの脳裏には4人ほど浮かんでいるが、最も疑わしいのはその内の2人だ。
「ああ。そういうことですか。」
ようやく腑に落ちたとラムザはニコッと笑って答える。
「レーゼさんとアリシアさんから。」
OK帰宅後ぶっ飛ばし決定。



ラムザ、ここは止めにしないか?こういう店で私に似合うものがあるとは思えん。」
アグリアスは湧き上がる殺意を瞬間冷凍後はチンするだけにしておいて、ラムザに半ば懇願するように
言った。
しかしラムザは、
「え〜そうですか〜?結構似合いそうですよ〜?」
「なっ!」
アグリアスは我が耳を疑った。
しかし一瞬脳裏によぎった映像からなんとなく腑に落ちた気がした。
それはラムザの妹アルマの姿。
(そういえばあれは結構個性的なものだったな・・・。)
終わった。
アグリアスはそう思った。
所詮抵抗しても無駄だろう。
何故って今ラムザのジョブは話術師だから。
(さようなら凛々しい私。)
アグリアスは昨日までの静かに自分に別れを告げた。



で。
「すごい!すごい!アグリアスさんと〜っても可愛い!!」
「ホント!とってもお似合いですよ!」
「はは、ははは。」
店内にラムザの嬉しそうな声と店員の仕事抜きの賛美、そしてアグリアスの乾いた笑いが木霊す。
アグリアスは黒いごわごわの生地にピンクのどでかいリボンの付いたドレスにニーソックスとハイヒール、


ついでに帽子まで被せられた紛う事なきゴスロリファッションという出で立ち。
悪乗りしたラムザが傘まで持たす始末だった。
この姿を見て普段の凛々しいアグリアスの姿を想像できるものはいまい。
「じゃあ、これ全部買いで。」
ラムザはあっさりと言い放ち会計を済ませた。
その間アグリアスは、
「私はアグリアス〜♪無敵のホーリーナイト〜♪一騎当千かかってきなさ〜い♪」
ちょっと壊れ気味でクルクルと回っていた。