氏作。Part14スレより。



ラムザが行く! プロローグ


僕の名前はラムザ・ルグリア。ベオルブ家が潰れてしまったので、傭兵時代のように母方の姓を使ってる。
長く、苦しい戦いが終わった。最後の戦いの後、無事元の世界に帰ってこれたのはよかったけど……。
静かな森の中を、2人と2匹で進む。いつもたくさんの仲間と一緒だったので何だか寂しい。
僕が乗っているのはボコ。もうずいぶんと長い付き合いのチョコボで、僕にとてもよく懐いてくれている。
隣にいるのはココ。元の世界でボコに再会した時に一緒にいたチョコボだ。どうやらボコの奥さんらしい。
そしてココに乗っているのはアルマ、僕の妹だ。血の繋がった肉親は、もうこの世にアルマしかいない。
「兄さん、まだ森を抜けられないの? もう疲れたよぉ」
アルマ、良い子だからもう少し我慢してくれ。あと半日もすれば抜けられるから。
……やれやれ。アルマはとても元気な子だけれど、やはり長い旅は慣れてないから辛いらしい。
チョコボに乗ってるだけで疲れるなんて、やっぱり女の子だなぁ……。
まぁあの人だったら徒歩で森も山も崖も河も越えて行くんだろうけど。高低差無視とか水上移動とか駆使して。
あの人も無事イヴァリースへ帰っているだろうか? アルマを守るのに精一杯で、他の仲間に気を回せなかったからなぁ。
「にーいーさん。誰の事を考えてるのかなぁ?」
へ? だ、誰の事って……。えっと、仲間の事だよ。散り散りになっちゃった仲間達の事。
「本当かなぁ? 仲間の中の特定の誰かさんの事を考えてる気がしたんだけどなー」
だ、誰かさんって……。もしかしてアルマ、僕の気持ちに気づいてる?
ううっ、そういえば仲間達にもバレバレでからかわれたりしたっけ……。賭けの対象にされた事もあったな。
僕って考えてる事が顔に出やすいのかなぁ? そういえばあの人も考えてる事がすぐ顔に……
「あっ、また。兄さんって本当に分かりやすいわぁ。ところで私がいない間にどこまでいったの? 手くらい握った?」
へ?


「奥手な兄さんとはいえ、あれだけ時間があったのならそれくらいしてるでしょう? 実はもうキスまでしてる?」
き、キス!? ううっ、決戦前夜のあの出来事が思い出される。ああ、死を覚悟して大胆になっていたせいであんな事しちゃったけれど、
でも嫌がる様子も無かったし、けどもしかしたら怒ってるかも、真面目な人だからやっぱりああいうのはちゃんと告白してから……。
「そっ、その反応はまさか!? したのね? チューしたのね? キャー、兄さんったらやる時はやるのね」
あ、あ、あ、アルマ! 年上をからかうんじゃない!
「ねーねー、キスにも色々あるけど、どこにキスをしたの? 手の甲? ほっぺ? 額? それとも唇? ソフトなやつ? ディープ?」
あ、アルマぁ……頼むから、勘弁してくれ……。恥ずかしくて心臓が止まりそうだ。
「実はキスだけじゃなくもっと進んでるとか? そうね、例えば……」
「そこの2人! 命が惜しかったら有り金と荷物全部置いてきな!」
アルマの興奮がますます高まる中、突然野太い声が僕達に向かって発せられた。
見れば、前方に数人の武装した男。盗賊団か。
アルマ、下がってて。あれくらいの人数なら僕一人でも簡単に……。
「虚栄の闇を払い真実なる姿現せあるがままに! アルテマ!」
「ギャー!」「ひえー!」「ぐわー!」「あぼーん!」「あべーし!」
……盗賊団、瞬殺。アルマが放った究極魔法で、盗賊団は四方八方に吹っ飛ばされて気を失った。
「せっかく盛り上がっていいところだったのに邪魔しないでよ! 奥手な兄さんがどこまで男になったか知るチャンスだったのにぃ!」
ココの手綱を操り、気絶した盗賊団をゲシゲシにチョコボキックを放たせるアルマ。
ああ……何かあの人もこういう事やりそうな気がする。





僕の名前はラムザ・ルグリア。ベオルブ家が潰れてしまったので、傭兵時代のように母方の姓を使ってる。
今日、無事機工都市ゴーグへ到着した。離れ離れになった仲間が一番集まりそうな場所だ。
ゴーグに入るとさっそくラッドと再会した。彼もたった今ゴーグに到着し、ムスタディオ宅へ向かう途中らしい。
そして無事ムスタディオ宅に辿り着きノックをすると、中からムスタディオが出てきた。
ラムザ! ラッド! それにアルマちゃんも無事だったんだ、良かった良かった」
スタディオ、君も元気そうでよかったよ。
「まぁ立ち話もなんだ、中入れよ」
ボコとココは庭に放しておき、僕達は居間に集まった。そこには重い表情マラークとラファがいた。
僕達の来訪にパッと表情を明るくしたが、先ほどまでの表情が気にかかる。再会の挨拶もそこそこに、僕はさっそく訊ねてみた。
「……ラムザはまだ知らないらしいな。実は、ディリータとオヴェリア様が……」
スタディオの口から、驚愕の事件が知らされる。まさか、英雄王となったディリータにそんな悲劇が……。
オヴェリア様と友達だったアルマも顔面蒼白になっている。
できるなら今すぐ王都に行きたいが……死んだ事になってるとはいえ、異端者の僕が行っていいものか?
「……実は、この話にはまだ続きがあるんだ」
続き? まだ僕の知らない悲劇があるというのか。覚悟を決め、続く言葉を待った。
「……お前達がゴーグへ到着するより数週間早く、アグリアスがここに一番乗りしていてな」
アグリアスさんが!?
「それから数日後、ラヴィアンとアリシアが……そしてつい先日、マラーク達と一緒にメリアドールも来たんだ」
ラヴィアン、アリシア、メリアドールさんも……。それで、その4人はどこに?


「……今朝オヴェリア様の事を知ったアグリアスが、ラヴィアンとアリシアを拉致して王都へ向かった。
で、それを知ったメリアドールがアグリアスを止めるために後を追ってって……俺達はどうしようかって相談してたところなんだ」
……アグリアスさん。
「しかもアグリアスの奴、血走った目で奇声を発しながらノンチャージで召喚したバハムートにまたがって、
聖剣技を無差別に撃ちつつネイムレスダンスを踊りながら行きやがった」
………………………………アグリアス、さん……。
「あのアグリアスを止める自信なんて、俺には無い」
………………分かった。僕もアグリアスさんを止めるため王都へ行くよ。アルマ、すまないがここで留守番……。
「あぁんのデコ兄がぁ! ティータを死なせてちょっとは反省&学習してるかと思ったら、今度はオヴェリアかぁー!
もう許さない、しばき倒してやる! 今すぐ王都へ一直線よ! 壁が邪魔ね、アルテマー!」
スタディオの家に穴を空け、外に飛び出し、ココにまたがり、アルテマで家々を破壊しながら王都へ一直線する実妹
……アルマ、お前もか。





僕の名前はラムザ・ルグリア。ベオルブ家が潰れてしまったので、傭兵時代のように母方の姓を使ってる。
ボコにまたがって現在北上中。急ぎなのでムスタディオ達はゴーグに置いてきた。
ああ……やっと世界に平和が訪れたというのに何をしてるんだろうあの人は。
そりゃ僕だってディリータとオヴェリア様の事を聞いてショックだったよ。
だからって余計に事態を悪くするような事をしに行かなくてもいいじゃないか……。
しかもアルマまでココに乗って特攻しちゃってるし……あ、軽い目眩が。
ゴロゴロピッシャ〜ン
……おや? ゼイレキレの滝の方角で雷が……というか、よく見れば爆発まで起きている。
…………………………間違い……なさそうだ……。
ボコ、疲れてるところ悪いけど急いでくれ。あそこにいると思うから。いや、絶対いるから。
「クエッ! クエエエエ〜〜〜〜ッ!!」
ダッシュでゼイレキレに向かうボコ。さらに僕は時魔道士にジョブチェンジしてヘイストをかける。
そして到着した僕が見たものは……!
「あなたの出した召喚獣は全部倒したわよ、おとなしくお縄につきなさい!」
「断る! ディリータに一矢報いるまでは死んでも死にきれん!」
「隊長〜、もう帰りましょうよぉ。それにディリータさんにはもうオヴェリア様が一矢報わせてますって」
「せっかくみんな死んだ事になってるのに、騒ぎなんて起こしたら生きてる事がバレて他のみんなにも迷惑かかりますよ〜」
「だまらっしゃい! 例え袂を離れたとはいえ、オヴェリア様は我が心のラブ・ヴィーナス!」
まさに一触即発。橋の上で片方をメリアドール、もう片方をラヴィアンとアリシアに挟まれたアグリアスさん。
何とか止めようと大声で呼びかけたけど、滝の音にかき消されて声は届かない。
ボコはここまでくるのに疲れ果ててしまい、もう動けない。急いで駆け寄ろうとするも、僕が今いる場所は滝の上だった。
時魔道士になっているため、こんな大きな段差を降りるのは難しい。アビリティチェンジだけにしておけばよかった。


「こうなったら仕方ない。ラヴィアン! アリシア! 全力で殺るわよ!」
「ええ、殺りましょう!」「……お二方、何か『やる』って言葉に黒い殺意を感じるんですけど。まぁいいや、殺ろっか」
殺るな────! 君達は共に戦った仲間だろう? ちょっとは手加減してくれー!
「よかろう、こい! 怒りの業火により燃え上がる我が魂を打ち砕けるのならな!」
「我に合見えし不幸を呪うがよい 星よ降れ! 星天爆撃打!」
「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」
「ぎゃー!」
「ジャンプ! そして脳天直撃セイブザクィーンアターック!」
「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」「ヘッドブレイク!」
「ぎょえー!」
「星天爆撃星天爆撃星天爆撃打打っ打ぁ────────ッ!!!!」
「ヘ────────ッド!」「ブ────レ────イッ!!」『クゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』
「殺〜ら〜れ〜た〜!」
……いや、やりすぎです。特にラヴィアンとアリシア、やけに嬉々としてやってたけど何か恨みでもあるの?
何とか滝を降りて合流して3人を止めたものの、アグリアスさんは意識不明。
しかもアルマは見つからずじまい。ああ……どうすればいいんだろう?
「う、う〜ん……」
あ、アグリアスさん。よかった、目が覚めたんですね?
「……あれ? ここ、どこ? あなたは……誰? むしろ私は誰? ああ……頭が痛い、何も思い出せない」
………………メリアドール、ラヴィアン、アリシア。ちょっとこっち来なさい。






僕の名前はラムザ・ルグリア。ベオルブ家が潰れてしまったので、傭兵時代のように母方の姓を使ってる。
ついこの間まで世界の命運をかけた戦いをしていて、やっと終わって平和に暮らせると思ったのに……何なのだろうこの状況は。
「隊長ー。次はこのリボンつけて下さいよぉ」「このワンピース着てみてよ、絶対似合いますから」「あぁん、アグリアスさん素敵ぃ」
アグリアスー。記憶取り戻し装置八号が完成したから試してみないか?」
「剣を抜きなさいアグリアス! その軟弱な精神を叩き直して上げるわ!」
記憶喪失になったアグリアスさんをおもちゃにしたり実験台にしたりと、滅茶苦茶な毎日がゴーグで繰り広げられている。
アグリアスさんはなぜかしおらしい性格になってしまい、子供のように僕に懐いてくる。
それはそれで嬉しいんだけど、僕としてはやっぱり気高くて強く優しいアグリアスさんが……。
「あーん。ラムザさぁん、助けてくださーい」
ああ、よしよし。みんな、あまりアグリアスさんで遊ばないで下さい。
こんな調子である。
行方不明のアルマも心配だけど、こんなアグリアスさんを放って探しに行く訳には……。
「ただいまー」
買い物に出かけていたラッドとマラークが帰ってきたようだ。
「久しいなラムザ」「やあラムザ君、久し振り」「アグリアスが記憶喪失になったって本当?」
お、オルランドゥ伯にベイオウーフさんにレーゼさん! 無事だったんですね、よかった。おや? オルランドゥ伯が抱えているのは……。
「兄さん、ただいまぁ……」
あ、アルマ!?
「ハッハッハ。実は王都ルザリアで反ディリータ派組織を乗っ取ったアルマを発見してね、私達でこらしめてきたところだ」
ええ!? も、申し訳ありません! 妹には僕からよく言って聞かせますので……。
「いや、もうお仕置きはすんだからかまわんよ」
「も、も、申し訳ありません。もう二度と、決して、命を賭けてあんな真似しません。だからアレだけは、アレだけわぁ〜……」
……オルランドゥ伯。アルマに何を?


「ベオルブ家108の秘伝、お仕置きの章『悶絶地獄巡り精神崩壊寸前ギリギリの刑』に処しただけだよ」
ベオルブ家108の秘伝……?
「うむ。私も昔バルバネスと悪さをして、当時のベオルブ家当主にお仕置きされた事があってな。何度死んだ方がマシと思ったか」
「や、や、やめて。あああ、違う、それおかしいです。死にます。死にます。ああ、空が落ちて……黒すぎます、ヌメヌメと、ご、ごき」
「まぁ後遺症として数日はこのように発作を起こすだろうが……いずれ治るだろう」
「あ、あ、あ、それは食べ物じゃありません。嫌です、堪忍、違う、それはそうやって使う物では……地獄!? HELL!? アジョラー!!」
……あ、あの、『悶絶地獄巡り精神崩壊寸前ギリギリの刑』っていったい何なのですか?
「そうだな、ベオルブの血を継ぐ君には教えねばなるまい。いいか? まず」
いえ、結構です。
「そうか、それは残念だ。ところでアグリアス君が記憶喪失というのは本当かね?」
ええ。こちらにどうぞ。アグリアスさーん、オルランドゥ伯とベイオウーフ、それにレーゼが戻ってきたよ。


「……おじいさん、誰? おじさん、誰? おばちゃん、誰?」
レーゼさん、ブレス吹こうとしないで下さい。ベイオウーフさん、笑ってないで止めてください。
「確かに記憶喪失のようだ。それではバルバネスが記憶喪失になった時に使った、
ベオルブ家108の秘伝『脳天直撃天国巡りショック&ブレイク療法』を」
いえ、結構です。





僕の名前はラムザ・ルグリア。ベオルブ家が潰れてしまったので、傭兵時代のように母方の姓を使ってる。
ベイオウーフとレーゼが戻ってきたおかげで、日に日にアグリアスさん遊びがエスカレートしている。
いじめられては泣いて助けを求めてくるアグリアスさんが可愛いので僕自身まんざらではないのだが、やはり何かが違う。
転機が訪れたのは、アルマから『悶絶地獄巡り精神崩壊寸前ギリギリの刑』の後遺症が抜け、正気に戻ってからだった。
「え? アグリアスさん、また記憶喪失になっちゃったの?」
またって何だ、またって。
「昔オヴェリア様と喧嘩しちゃって、落ち込んでフラフラ歩いてたら崖から落っこちちゃって記憶喪失に」
……ちなみに、その時はどうやって記憶を取り戻したんだい?
「オヴェリア様が泣いて謝りながら抱きついたら鼻血を垂らしながら記憶を取り戻して昇天したわ。
つまりアグリアスさんが嬉しさのあまり昇天しそうな事をやればいいのよ。とゆー事で、兄さん、チューよ」
何故だ妹よ。
「お姫様の呪いを解くのは王子様のキッス。そして兄さんにチューされれば喜びのあまり昇天して記憶を取り戻すはず!」
「なるほどアルマ様グッドアイディーア!」「隊長ー! ラムザ様がチューしてくれるそうです、カモ〜ン」
ラヴィアン、アリシア、いつの間に……。
「なに!? ラムザアグリアスにキス!?」「こりゃ見物するしかないな」「アグリアスさんが女になる瞬間ね!?」
「ふっ、若いな……」「キスくらいでこんなに大騒ぎするとは、みんな子供だねぇ」「あら、私達だってファーストキスの時は……」
って、何でいきなり大集合してるんですか。
ラムザさん、チューって何ですか?」
ああ、記憶喪失の無邪気な瞳が僕のハートを射抜く。これもアグリアスさんの記憶を取り戻すため、覚悟を決めて……ええい!
頬に口づけされたアグリアスさんは、顔を真っ赤にしてうつむいて、モジモジモジモジモジモジ……。記憶を取り戻す気配は無い。
「……ふむ、ほっぺにチューじゃ刺激が足りないみたいね。という事は、すでに以前、何かしてるわね?」
察しのいい妹で兄は悲しい。決戦前夜のキスのおかげで耐性がついてしまったようだ。いったいどうすれば……?
「よーし兄さん、こうなったら最後の手段よ。アグリアスさんを押し倒してセッ」ドスッ


突然みぞおちに拳を叩き込まれてうずくまるアルマ。それを持ち上げるオルランドゥ伯。
「やれやれ、バルバネスに変わって私が躾けてやらんとな。ベオルブ家108の秘伝の中の躾け術をしてくるとしよう」
ベオルブ家っていったい……。というか、ダイスダーク兄さんが父さんを毒殺した本当の理由ってまさか……。

日が暮れてから帰ってきたアルマは、不自然なほど丁寧なお嬢さま言葉を使う淑女になっていた。顔面蒼白だったけれど。
いったいどんな躾をしてきたのかは分からないが、知りたいとも思わない。ベオルブ家108の秘伝など絶えてしまえ。
……と思ったが、少なくとも2つはアルマに伝わってしまった。もしかしたら108の秘伝すべてを体得してしまうかもしれない。
ラムザさん、悩み事ですか?」
あ、アグリアスさん。
「……ごめんなさい、私のせいでみんなに迷惑をかけて……」
いえ、気になさらないで下さい。困った時はお互い様です。今まではアグリアスさんに助けられっぱなしだったんですから。
「私、記憶を失う前はどんな女性だったのでしょう? ラムザさんに迷惑をかけていませんでしたか?」
迷惑だなんて全然…………………………………………………………かけられてませんよ。
「今の不自然な間はいったい?」
あはは、気にしない。
「私、早く昔の事を思い出したいなぁ。ラムザさんと、どんな思い出があったのかしら? もしかしたらもう二度と思い出せないかも……」
……素敵な思い出ばかりですよ。それに、万が一思い出せなかったとしても……これからいっぱい思い出を作ればいいじゃないですか。
記憶を失っていたって、アグリアスさんはアグリアスさんです。僕の気持ちは変わりません。あの時の約束を、今果たします。
アグリアスさん。僕は……あなたの事が、好きです。あなたと共に生き、歳を重ねていきたい。
「らっ……ラムザさん……!?」
僕はアグリアスさんの手を握り、そっと僕の頭上へ導いた。そこにあるのは、跳ね毛。
アグリアスさんの白くてちょっぴり硬い手が、フサフサの跳ね毛を撫でる。その瞬間奇跡が起きた。
「我が生涯に一片の悔い無しぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





涙と鼻血を大量に流したアグリアスさんは三日三晩生死の狭間を彷徨い、目覚めた時にはしっかり記憶を取り戻していた。
それからどうなったかというと……僕達だけの秘密。
けど少しだけヒントを上げるとしたら、僕達はとっても幸せに──。





「わーいわーい、今日はラムザとの結婚式だー! ウェディングドレス着れるぞ、ひゃっほ〜い」
……アグリアスさん、きれいに終わらせようとしてるのにネタバレしないで下さい。



ラムザが行く! 完!







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