氏作。★FINAL FANTASY 壱〜壱拾&拾壱エロパロ小説スレより。



 ランベリーの東端、国境にほど近い山裾に、名前もない村がある。
 五十年戦争当時に砦が築かれたが、幸いにして戦場になることもなく、戦が終わると同時に
ゆるやかに寂れていって、今は牛とチョコボを飼う農家が点在するだけの、静かな村である。
 その平和な寒村の片隅に、ルグリアという名の一家が暮らしていた。


「ネス、母様の邪魔をしちゃいけないよ」
「お手伝いしてるんだよう」

 獅子戦争が終わってしばらくたった頃、ふらりとやってきて空き家を借り、そのままチョコボ
飼い始めた。何か事情を持っているらしいが、今の時勢では珍しくもなく、詮索するような者は
この村にはいない。

「ネス、洗濯物が汚れてしまうでしょう。あっちへ行って、労八に遊んでもらっておいで」
「はーい。労八、登りっこしよう!」
「了解シマシタ、バルバネス様」

 夫婦二人、子供二人のほかに、彼らは自分で動く奇妙な鉄のかたまりを連れてきた。
呑気な村人もさすがにこれには驚いたが、石組みの修理から水路掘りまで実によく働き、
従順で力持ちで、いくらか愛敬のあるこの丸っこい機械の巨人に、やがて慣れていった。

 ぱん、と小気味よい音がして、しわ一つなく張られたシーツが物干しに掛けられる。陽光に
目を細めつつ、腰に手を当てて満足げに洗濯物を眺めるこの若い母親が、つい数年前までは
血なまぐさい戦塵のただ中で剣をふるっていたと言っても、あまり信じる者はいなかった。
その夫にいたっては村の男達の中で一番腕相撲が弱く、笑い話の種にさえされていたもの
である。ただ去年、ジュラエイビスの大群が村を襲った時、赤チョコボを駆ってほとんど
二人と一体だけでそのすべてを撃退してからというもの、この夫婦に対する評価は多少
変わった。
 穏やかそのものといった顔で庭先の椅子に腰掛け、焼き栗をむいている若い父親の名は、
ラムザ。その妻の名は、アグリアスといった。


「“粉砕”シマス。バルバネス様、危険デスカラ離レテクダサイ」
 ボカン、という破砕音とともに、目の前にあった巨大なミノタウロスの頭蓋骨が粉々に
なった。数日前に、牧場を荒らしていたのをラムザが仕留めたのである。
「すごい! 労八、すごーい!」
「ドウイタシマシテ」
「ネス、骨のかけらを集めておいて。あとで粉にひいて畑にまくのよ」
「はーい」
 幼い少年が搗き鉢をとりに物置へ走っていく横で、労働八号は続いて大きな背骨、腰骨、
昨日畑で掘り起こした切り株、割れて使えなくなった石臼、と次から次へ“粉砕”していく。
そのたび飛び上がるような音が響きわたるが、隣家は半マイルも離れているし、耳慣れた
音なので気にする者もない。彼らが来て以来、この村の者が粗大ゴミの処分に困ったことはない。
「父様、おやつはまあだ?」
 ラムザの座る椅子の背を駆けのぼって、肩へ飛びついた者がある。父とお揃いのくせっ毛を
ぴょこん、とのぞかせて、利発そうな笑顔を浮かべる。
ティータ、後ろから飛びついては危ないよ」
「へへへ、ごめんなさい」
 今年七つになる長女はティータ、一つ違いの弟はバルバネスという。二人とも元気でかしこく、
ご近所にも好かれ、近在の同年代の子らの中でも一目おかれている。自慢の子供達である。

 一見、絵に描いたように幸せな家庭。
 だが、世の中の家族の多くがそうであるように、彼らもまた、ささやかな問題を内にかかえて
いた。


「本日ノ昼間作業ハスベテ完了シマシタ、奥様」
「ご苦労様、休んでちょうだい。本当に、お前は役に立つわね」
 粉砕された粗大ゴミ達をきちんと分別し終えた労働八号が物干しの所まできて報告すると、
巨大な鋼鉄の頭をにこにことアグリアスが撫でてやった。無口でよく働く労働八号は、奥様の
お気に入りである。
「……」
 その撫でている手を、ラムザはなんとなく面白くなさそうに眺めている。
「父様、怒ってる?」
「えっ!?」
 いつのまにか肩から下りて前に回ったティータが、不安そうに父を見上げていた。
「そ、そんなことはないよ」


 亭主ラムザは、ちょっぴりやきもち焼きだったのである。


「でも、ご機嫌の悪そうなお顔」
「父様は怒ってなんかいないよ。怒ることなんか何もないからね」
 半分は自分に言い聞かせつつ、焼き栗の入った笊をわきへ置いて、ティータを膝の上へ
抱き上げる。大好きな父の膝の上で嬉しそうにしながらも、まだ少し不安げな娘をなだめる
ように、
「ほら、おやつの栗がむけてるよ。あーん」
 一つつまんで口に入れてやると、ティータはようやく安心したらしい。まだ熱い焼き栗を
ほふ、ほふと頬をふくらませてほおばっている娘を見ているうちに、ラムザにちょっとした
いたずら心が芽生えた。
「ほらティータ、もう一つとってごらん」
 もう一つ栗をつまみ、自分の口にくわえると、ティータの方へ顔を突き出したのである。
「ふふふ。父様、んー」
「んー」
 いくらか恥ずかしそうに、でも嬉しそうに。ティータは小さな口をあけ、餌をもらう雛鳥の
ように、父の口から焼き栗をくわえ取った。その時、唇がすこし触れたかもしれないし、
触れなかったかもしれない。いずれにせよ、それを見ている者にはどうでもいいことだった。
 その時、彼の妻はもはや労働八号の方など見てはいなかった。彼はそのことに気付く
べきであった。



 何か冷気に似たものを感じてラムザがそちらを向いたときは、もう遅かった。
 ミノタウロスの骨を集め終え、ほめてもらおうとトコトコ駆け寄ってきたバルバネスの
笑顔が消えた。母の全身にみなぎる何かを感じとったのである。
「………労八」
 ぱちり、と指が鳴った。
「ハイ。バルバネス様、ティータ様、今日ハトテモヨイオ天気デス。労八トオ散歩ニ行キマショウ」
「うん! 労八、マスのいる川へいこう」空気を鋭敏に察したバルバネスが、すばやく
労働八号の肩に飛び乗る。
「わたしも行く! 父様もいっしょに行く?」同じく肩へ飛び乗りつつ、優しいティータは
助け船を出した。
「そ、そうだね、僕も」思わず腰を浮かせかけるのへ、
「父様は母様とお留守番だ。………少し話したいこともある」
 ベヒーモスの足音のような声がすべてを圧し潰した。
「行ッテマイリマス」
 木戸を出る直前、労働八号はラムザの方を振り返り、まるで死者を悼むように、光る眼を
二、三度、ちかちかと瞬かせた。
 地獄の門が落ちるような音を立てて、粗末な木戸が閉じられた。

 妻アグリアスは、夫に輪をかけてやきもち焼きだったのである。






「………………ラムザ
 子供達を散歩に出してから、アグリアスが初めて口にした言葉がそれだった。
「は、はいっ」
 答えるラムザの声は頼りなくふるえている。
 場所は寝室。粗末だが清潔なベッドに、ラムザは服をすべて脱いで転がされ、その両脚の
間にそそり立つものを、こちらは普通に服を着たアグリアスが握りしめている。一言も発せぬ
妻にただただ威圧されて、ラムザはこの部屋へ追い立てられ、服を脱がされ、ベッドに
押し倒され、そしてすでに口で一回発射させられたところである。
「お前はそんなに、この私が不満か」
 天井に向かって隆々と弧を描くラムザのものを、アグリアスの白い指が上下する。空いている
もう一方の手がチョッキの組み紐をほどき、しゅる、と衣擦れの音をさせて脱ぎ捨てた。
「ふ、不満なんてそんな」
「年端もいかぬ実の娘にあんな破廉恥なことをするほどに、私では不満か」
 その下のシャツの襟紐もほどいて、首もとをぐい、と引き下げる。ゆたかな胸元があらわになる。
「破廉恥って、あれぐらいで」
「あれぐらいで?」
 燃え立つような瞳がラムザを睨み据える。同時にペニスの根元をぎりぎりと締められて、
ラムザは呻いた。
「あう、だ、第一あれは」
「あれは?」
 貴女が労八ばっかりかまうから、ちょっとした仕返しです……などとは言えない。子供じみた
やきもちだと自分でもわかっているし、それ以前に、今のこの人が言い訳など聞いてくれる
はずがない。
「……反省の色がないようだな」
 ラムザの沈黙を別の意味にとったのか、アグリアスの声がすごみを増した。首まわりをさらに
引っぱると、広がった襟元から巨きな乳房がふたつ、今にもこぼれ落ちそうにはみ出てくる。
ラムザが一瞬、今の状況も忘れて息を呑む。その表情をちらりと確認すると、アグリアス
せり出した乳房でラムザの袋を押しつぶすように胸を押しつけ、ラムザの先端を赤い唇に
ふくんだ。


「ううっ……!」
 たまらずラムザが、さっきとは違う呻きを上げる。あたたかい口の中で、濡れた舌が絡みついて
くる。おそろしく的確に弱点を突いてくる愛撫に、ついさっき限界を迎えたばかりである。射精の
興奮が残る敏感な粘膜を、アグリアスの舌が容赦なくしごき上げ、二度目の限界を搾り出してゆく。
「あ、あう、アグ、アグリアス、さん、アグリアスさん、あ、あっ、ああ…ッ!」
 睾丸から根元にかけて押し当てられた柔らかい肉が、こまかく揺れて絶え間ない快楽を
送り込んでくる。弱点も急所も、すべてを知り尽くした愛撫に、しょせん耐えられるはずはない。
たちまちラムザは情けない声を上げ、びくり、びくりと口内へそそぎ込まれる二杯目の甘露を、
アグリアスはのどを鳴らして飲み干した。
「ふう……ッ」
 口元をぬぐって立ち上がり、シャツに手をかけて一気に脱ぎ捨てる。うっすらと上気して
汗ばんだ、迫力のある乳房がぶるん、と躍り出た。
「……まだ反省しないか……?」
「は、反省してます、から……」
 立て続けの射精で甘く惚けた頭で、ぼんやりとラムザは目の前に立ちはだかる乳房を……
もとい、妻を見上げる。瞋恚と、それから別の何かで燃えさかる炎のような瞳を見て、ラムザ
今の言葉が質問ではなかったことを理解した。
 ボリュームのある一対の肉が下りてきて、ラムザをゆっくりと押し包んだ。



「はぅ、はっ……ふっ……」
「ぁう……あ、あ………」
 どれだけ時間が経ったのか。いや、外は明るいから、大した時間はたっていないはず
なのだが、すでに時間の感覚さえラムザの中ではおかしくなりつつあった。
 白い、重い肉体が、ラムザの上で跳ねている。
 あれから胸の間で一回、さらに口と指でもう一回登りつめさせられた。その後、こうして
アグリアスの中に収められて、それからいったい何回果てたか、頭が焼き付いたように
なってよく覚えていない。
「う……う、あっ…………!」
 うねるような肉の愛撫の中で、底無しの穴に吸い込まれるような感覚が頭の中に生まれ、
無意識に、赦しを乞うように手を上げつつ、ラムザは何度目かわからぬ精をアグリアス
中へ放った。
「ん、ふっ……ふ、ふふ……また、出ているな……?」
 上気した頬にうっすら汗をうかべたアグリアスが微笑む。腹筋を動かしながら腰を小刻みに
ゆすると、こくん、こくん……と、奥へ奥へうながすように中のひだが動く。まるでアグリアスが、
膣でラムザの精液を飲んでいるように思えて、たった今力つきたはずのものが、強制的に
ふたたび立ち上がるのを、ラムザは朦朧とした頭で感じた。
「ふ、ふ…ほら……疲れたら、私のを吸えば、元気が出るのだろう……?」
 アグリアスが上体を前に傾けると、ゆさり、と釣鐘型に形をかえて、雄大な乳房がラムザ
目の前に垂れ下がってくる。むっちりと脂の詰まった、たわわな重みを感じさせてゆれる
その先端へ、ラムザはほとんど本能的に舌をのばしていた。
「んっ……」
 敏感な部分に吸い付かれて、アグリアスが小さく声を上げる。
 獅子戦争の陰で戦っていた当時から、ラムザ隊の女達の羨望の的であった形よく張り出した
乳房は、張りも丸みも少しも失わぬまま、子供二人に乳を与えてますます豊かになった。
その二人を生み育てた腹には、さすがに昔のような引き締まった腹筋は見えないものの、
わずかのたるみもなく美しくくびれている。くびれの下に続く尻は、元々安産型であったところへ
ひときわ脂が乗って、どっしりと重い肉の丘を形づくり、しゃぶりつきたいようなむっちりとした
太ももへとつながっている。
 アグリアス・ルグリア、29歳。若々しくも熟れきった肉体である。


 その肢体と美貌に惹きよせられた男達の数は、決して少なくはない。巧みな誘惑や、真摯な
告白、時にはけしからぬ暴行に及ぼうとした男もいたが、そのことごとくをアグリアス
礼儀正しく、かつ取り付く島もなくはねのけてきた。ラムザ以外の男に、この身体を髪の毛
一筋だって好きにさせる気はないのだ。
 それなのに。私はこんなにラムザだけが好きなのに、それなのにラムザは。
 乳飲み子のようにアグリアスの胸をしゃぶり続けるラムザの顔にのしかかり、胸で押しつぶす。
太ももをよじるようにして腰を締めると、中でラムザのものが小刻みにふるえ始めた。胸元から
上がるくぐもった呻きを聞きながらしばし腰を振ると、やがて弱々しくラムザが跳ね、温かい
ものがとくり、と腹の中に注がれるのをアグリアスは感じた。
 たっぷりと余韻を味わってから、体を起こし、腰を浮かせる。つながった部分の隙間から、
白くにごった粘液が驚くほど沢山あふれ出てきた。どれだけ搾り取ったか、自分でもよく
覚えていないが、その間にアグリアス自身も何度かは絶頂を迎えている。頭の中に、薄い
ヴェールがかけられたようになっている。
「あ……ぐりあ……さん、も……許し…て……」
 胸から解放されたラムザが、かすれた声で切れ切れに呟いた。いったん抜いたから、もう
終わるものと思ったらしい。そうはいくものか。
「……まだ、こっちを満足させてもらっていないぞ……」
 浮かせた腰をふたたび落とし、力無く垂れたラムザのものに、尻たぶを熱っぽくこすりつけた。
ラムザが死刑台の階段を登り終えた囚人のような顔になる。それを見下ろして、アグリアス
嫣然とほほえんでみせた。
「こんなにしたのは……私をこんな身体にしたのは、ラムザなのだからな……? 責任は、
とってもらうぞ……」
 そう、すべてはラムザが悪いのである。アグリアスは泣きそうな顔になったラムザの頬に
顔をよせ、舐めるようなキスをした。



 ラムザアグリアスがお互いを憎からず思っていることに気付き始めたとき、二人はすでに
獅子戦争の影に渦巻くこの世ならぬ戦雲のまっただ中にいた。それから最後の戦いが終わり、
聖石と教会を巡るすべてのことに片がつくまで、およそ二年。その間思いを交わすどころか、
手を握ったことさえろくになかった。戦いの中でそれぞれに大切なものをかかえ、恋などに
かまける余裕がなかったとはいえ、つのり続ける思いが、少なくとも肉体的には一切報われる
ことなく、それだけの歳月が過ぎたのである。
 すべてが終わった後、ラムザが晴れてアグリアスに求婚し、一も二もなくアグリアス
承諾して、異端者狩りの手もゆるやかなこの寒村にようやく落ち着いてから。若い二人の
溜まりに溜まっていた恋情が爆発したのは、無理からぬことであった。
 昼夜を分かたず、寸暇を惜しんで、寝食を忘れて、二人は愛し合った。ベッドから一歩も
出ずに一日が過ぎたこともあったが、ベッドの外でも愛し合うことを覚えてからはそんなことも
なくなった。台所で、居間で、納屋で、茂みの中で、滝の裏で、チョコボの上で、人間二人が
共有できるありとあらゆる場所と時間が、二人の愛の褥になった。
 二人は星座の相性だけでなく、体の相性も最高だった。そしてラムザは生来絶倫の上、
傭兵時代にガフガリオンにみっちり女を教えられ、性豪と呼んでいいほどの精力とテクニックを
身につけていた。愛情と劣情のほとばしるままに、そのテクニックを残らずそそぎ込んで
アグリアスの体を開発しまくり、色事のいの字も知らなかった彼女に腰の振り方、胸の
使い方、口や尻での愉しみ方を教え込んだのはラムザである。
 アグリアスもまた、ラムザの熱意によく応えた。ラムザの教えることをあまさず吸収し、
よりラムザを満足させようと研鑽に励んだ。アグリアスラムザ以外の男を知らない。
知りたいとも思わない。ただラムザ一人のための技術を磨き、肉体を磨き、女を磨いた。
あふれんばかりの愛情を、アグリアスもまたそういう形で表したのである。


 その結果、どうなったか。ことベッドの中に関し、アグリアスは隅から隅までラムザ好みに
開発され尽くした、ラムザにとって完璧な女となった。否、完璧を通りこし、ラムザにとって
絶対的な破壊力を発揮する、対ラムザ究極兵器と化したのである。
 お互いが相手を思いやり、高めあうように愛し合ううちはいい。お互いの体は相手にとって
最高の愛と快楽の泉となり、至上の満足をもたらしてくれる。だが、ひとたびアグリアス
思いやりを捨て、ただ愛する人を責め上げ、搾り取るためにその肉体をふるったらどうなるか。
 ラムザが最初にそれを思い知ったのは、アルマが遊びに来て、久々に兄と同じベッドで
眠りたい、とだだをこねた翌晩のことだった。結局そのだだは何によらず奥手なアグリアス
燃え上がらせるためのアルマの策略で、その意味では大いに功を奏したのであるが、
その報いとしてラムザは半日ベッドから起きられない状態になった。
 子供を二人産んでさすがに沈静化したとはいえ、二人の交歓は今でも週に三回を下回る
ことはない。そしてアグリアスの肉体の、ラムザに対する威力も、増しこそすれ少しも
衰えてはいなかった。


「ん…………」
 うなだれたラムザ自身にそっと手を添えて持ち上げ、ぶら下がる袋をしゃぶって、さらに
その下ですぼまった入り口を、舌先でつつく。
 ラムザの尻が可愛らしくふるえ、入り口がきゅうっと一層すぼまった。尻たぶを押し広げて
その中心に口づけし、優しく、だが容赦なく、舌でこじ開けていく。
「あ……あ…あ…………っ!」
 かすれた声が上がる。そのたびヒク、ヒクと入り口が締まるのを心地よく感じながら、
より深く舌を差し入れ、ラムザの腸壁を愛撫する。
「そ……そこ、は……あっ」
 舌をいっぱいに伸ばし、やや右上に曲げたあたりに、それはある。わずかにふくらんだ
しこりを尖らせた舌の先でくすぐってやると、右手でゆっくりとなで回していたラムザのものが、
たちまち力強く立ち上がった。このままその場所をえぐり回して発射させてやってもいいのだが、
ひとまず口を離す。わざとラムザに見えるように、舌なめずりをしてやった。

「いく、ぞ………んっ……!」
 後ろに、本来男を受け入れるためのものではない穴に、熱いラムザがゆっくりと押し入って
くる。切なげな息を吐きつつアグリアスが尻を沈めてゆくと、膣とはまた違う、入り口で
食いちぎるような締めつけに、ラムザも弱々しくうめいた。
 初めてそこを試したいと、ラムザが言い出したのはいつだったろうか。最初は死ぬほど
恥ずかしかったのを覚えているが、それから何度も何度も経験を重ねて、今ではすっかり
ラムザを愛するための器官となっている。
「ほら……ほら………ほら…………!」
 締めつけたまま尻を前後左右に振ると、たちまちラムザの声が甲高く浮き上がる。手をのばし、
厚い胸板の上に立ち上がった乳首をひねり潰すようにつまむと、悲鳴のような声とともに、
子宮とは違う腹の中へラムザが流れ込んできた。
 力を失ったラムザのものを収めたまま、ぐるりと体をひねる。背面騎乗位の体勢になって
身をこごめ、片手で袋をもみほぐし、もう片方の指をラムザの穴にねじり込んだ。声ともいえない
かすれた息を背後に聞きながら、アグリアスはさらに二回、後ろの穴でラムザを味わった。

 ラムザの腰の神経はまともな働きを失っていた。時折、分厚い雲の奥に稲妻が光るような
感覚があり、自分が達したことがわかる。快楽も、痛みもすでに通り越し、ただ熱っぽい
かたまりのようなものがそこにあった。
 その熱が、急に冷たい風に吹かれた。自分のものが解放されて空気にふれたのだと、
一拍おいて理解した。だが、まだ終わったわけではない、ともわかっていた。
 一連の交歓の最後には必ず正常な場所で愛し合うことを、アグリアスは好んだ。尻や胸や
あらゆるところを責め立てて、何度もの絶頂で息も絶え絶えになり、もう登りつめたくないと
懇願するほどになっていても、最後には膣の中で、互いに果てなければ承知しないのだった。
 今は息が絶えかけているのはこちらの方である。力を失った自分のものがゆっくりと
アグリアスの中へ導き入れられるのを、どこか遠くの出来事のように感じる。慣れ親しんだ、
だが少しも飽きない魔法のような肉のひだが自分をつつんで動き出すと、もう何も残って
いないのに何かがこみ上げてきて、自分がレモンの絞り滓になったようで苦しい。


 目がかすんで、前がよく見えない。視界をいっぱいに覆ってきらきら揺れているのは、
たぶんアグリアスの髪だろう。美しい金色の髪を撫でたいが、手を上げる力もろくに残って
いない。
ラムザ………ラムザ……!」
 アグリアスの声が聞こえる。自分がなぜこんなことになっているのか、頭が朦朧として
よく思い出せなかった。ただアグリアスの怒った顔だけが、意識の奥に残っている。
「ラム、……ラムザっ…………」
 声の調子が、今までと少し違う。アグリアスも限界が近いのだと、ラムザは経験から察した。
肩に手がそえられ、胸板に柔らかいものが押しつけられている。騎乗位から体を倒して、
ラムザを抱きしめているのだ。そうだ、もうすぐ終わってくれる。終わってくれれば、
解放される……
 頬に、ぱたぱたと熱いものがふりかかった。何だろう、と思った途端、


「愛してる、ラムザ………愛している…………!」


 涙と快楽でくしゃくしゃになったアグリアスの顔が、目の前にあった。
 それはアグリアスの本心、絶頂の寸前でほころびた理性の隙間から、こぼれ出てきた
一番素直なアグリアスの気持ちだった。やきもちを焼いたのも、こんなにラムザを責めたのも、
労八を必要以上に可愛がってラムザをやきもきさせたことさえ、すべてがその気持ちから
出たことだった。
「…アグリアスさんッ……!!」
 そのことを悟った瞬間、動かなかったはずの手に急激に力が戻り、ラムザは思いきり
アグリアスを抱き締め、舌をからめて唇を吸った。麻痺していた腰に鮮烈な感覚が走り、
爆発とともに、あれだけの射精をした後でどこに残っていたかと思うような量の精液を、
アグリアスの中へ叩き込んだ。
 それに呼応して、アグリアスの熱い肉体が大きく震えるのを感じながら、最後の力を
使い果たした腕が、ぱたりとベッドの上に落ちた。






 夕方、手桶いっぱいのマスを土産に、バルバネスとティータ、労働八号が帰宅すると、
「おかえり、ティータ、ネス、労八」
「お帰り……」
 やけに艶やかに肌を火照らせた母と、対照的に幽鬼のごとく生気の抜けた父が出迎えた。
「父様、どうしたの?」
「はは、何でもない、何でもないよ……」
「た、たくさんマスが捕れたのね! ティータ、台所へ運んでおいてちょうだい。ネス、労八と
納屋へいって、油をさして磨いてあげなさい。すぐに晩ご飯にするからね」
 なぜか追い立てるように、二人と一台を出て行かせ、自分もティータの後を追って台所へ
向かう間際に、母は父の耳元に顔を寄せ、顔を赤らめてささやいた。
「その、今日は少しやりすぎた。すまない。お詫びに、夕食は精のつくものを作るから」
 椅子から立ち上がる力もない父親は、それを聞いて弱々しく、だが幸せそうに微笑んで、
愛する妻の頬にそっとキスをした。



 ランベリーの東端、国境にほど近い山裾の寒村に、ルグリアという名の一家が暮らしている。
 世の中の家族の多くがそうであるように、彼らはささやかな問題をかかえつつも、
けっこう幸せに日々を過ごしている。



End