氏作。Part16スレより。




雨が、しとしとと降っている。それを眺める女性が一人。


アグリアスさん」
ラムザ?どうした?」
「いえ、僕はどうもしていないのですが、アグリアスさん最近元気無いな、と思って」
「…そう見えるか?」
「はい」
ふぅ、とため息をつくアグリアス
「全く、貴公には敵わないな。隠していたつもりなんだが…オヴェリア様の事で思うところがあってな」
「オヴェリア様…ですか」
「あぁ…オヴェリア様も数奇な運命を辿っておられる。…必ず助ける、例え命に代えても。
 …だが、最近はオヴェリア様を助ける自信が無いのだ。ラムザ、私の剣は貴公の役に立っているか?」
「今更言わなくてもいいんじゃないですか?」
「女は言葉が欲しいものだ」
「わかりました。アグリアスさん、あなたの剣は充分過ぎるほど、隊の役に立っています」
「そうか…だが、貴公は優しい。私に気を使っているのではないか?」
「気を使うのは上に立つ者として当然です。ですが、先ほどの言葉は、本音です。神に誓いますよ」
そう言ったきり、ただ微笑む。
その邪気の無い微笑みは、アグリアスを落ち着かせるのに十分な効果を持っていた。
「本当に、貴公には敵わない。何故、貴公の微笑みは私を落ち着かせるのだろう?…ラムザ、ついでにもう一つ聞いていいか?」
「ええ、なんでもどうぞ」
「貴公は、私を──」
そこまで言ったところで、声が聞こえる。
「おーい、ラムザ、アグ姐さん。飯の時間だぜ」
「ああ、ムスタディオ。今行くよ。アグリアスさん、続きは後でいいですか?」
「あ、あぁ…」
僅かに顔が赤いアグリアス
(今、勢いで何を言おうとした?)
食事に向かいながらも自問していた。


食事も終わり、皆くつろいでいる頃、アグリアスのテントに声を掛けるラムザ
アグリアスさん?よろしいですか?」
「あぁ、入ってくれ、ラムザ
失礼します、と言って入ってくる。
「…で、どうした?ラムザ
「いや…アグリアスさんが聞きたいことって何かな?と思って」
「あぁ、そのことか。ラムザ…貴公は私を、どう思っている?」
とたんに、顔が赤くなるラムザ
「すごいことをさらりと聞きますね」
すごいこと…とわずかに首を傾げていたが、意味に気づくととたんに顔を真っ赤にした。
「ち…違う!私は、その、騎士としてどう思うのか、ということをだな」
「あぁ、そういう意味でしたか。失礼しました」
「あ、当たり前だろう…」
でもちょっとだけ残念そうなアグリアス
ラムザはそれに気づいているのかいないのか。
「騎士として、騎士として…うーん。僕は、『女性』のときのアグリアスさんも、『騎士』のときのアグリアスさんも素敵だと思いますね。
 『女性』のときは柔らかいのに、『騎士』 になると勇ましい。そんなアグリアスさんが、僕は好きですよ」
「か…からかうな、ラムザ
「からかってなんかいません。本心ですよ。それじゃあ、失礼します。おやすみなさい」
テントを出た後、ラムザは大きく息をついた。
「はぁ…僕、なんかすごいこと言っちゃったなぁ」
そう言って自分のテントに向かった。


一方、アグリアス
ラムザラムザラムザが私のことをす、好きだなんて…嬉しい!」
微かな想いが膨らんでいくのを感じていた。


…翌朝
「あ…おはようございます、アグリアスさん」
「おはよう!ラムザ。どうした?眠いのか?だらしないな」
「す…すいません(昨日のことで落ち込んでるかと思ったけど…)」
「さて、御飯食べに行くか、ラムザ(ふふ、いつか言わなきゃね。この想い)」
「そうですね。行きましょう(想われてる?まさかね)」


今日は見事に晴れた。
心も晴れ晴れ、顔も明るいアグリアスだった。