氏作。Part16スレより。


 チュンチュンと小鳥が森の朝を告げて、テントに空いた穴からうっすら朝焼けが見えます。  
おはようございます皆さん、エレーヌです。でもまだ眠いので、おやすみなさい。
「エレーヌ、起きろっ!」
「ひぃぃッ」
 バサッと私の毛布をひっぺがすのはアグリアスさん。なんでこの人と同じテントなんでしょうか。
寝ている人の毛布を剥ぐなんて、人権無視です。
私は断固抵抗の意を示して毛布にかじりつきました。


「こら、起きろエレーヌ。もう朝だぞ」
「…まだ暗いじゃないですかっ、おやすみなさい」
「お前は朝食の支度があるだろうが、起きろ!」
「お腹へってないですっ、おやすみなさい」
「私は減ってるんだ、早くしろ!」
「…ひょっとしてお料理できないんですか」
「くだらん事をいうな、炊事は新人の仕事だといっているだろうが」
「だって…私より新人がいるじゃないですか」
「うりぼうに炊事ができるかッ、寝ぼけるな!」
「でも、あの子今日食べるんでしょう…?」
「あぁ、もう!いい加減にしないと服ごとひっぺがすぞ!」
「いやっ、やめてください。大きな声だしますよ」
「ばっ、馬鹿!いいから起きろっ!」
「うー……アグリアスさん、なんでそんなに早起きなんです」
「だらしないやつだな。いいか、昔から『早起きは3ギルの徳』といってな。規則正しい生活習慣は
健全な身体だけでなく、健全な精神をも養うというわけだ。それだけでなく」
「ぐー」


 でも結局アグリアスさんには勝てません。
こんなやりとりも、アグリアスさんが静かになったら危険信号です。
そのまま寝てると冷水をかけられた上に鞭で引っ叩かれますから、わたしはこのへんで渋々毛布をぬけだします。
毎朝こんなことの繰り返しなわけです。


 ところが。
今朝は珍しく早起きしてみれば、隣のアグリアスさんはこれまた珍しくお寝坊です。
大口を開けて、むにゃむにゃ寝言をいっています。
「…んー…恥ずかしがることなど…ないだろう……ほら……うふふ……」
まぁー、普段人にあんなことをしておいて、何でしょうかこの有り様は。まくらに抱き着いたりして。
どんな夢を見てるんだか、すんごい幸せそうな顔…、腹立たしいったらありません。
そういえば早起きは3ギルの徳だそうですね、それならさっそく起こしてあげないと。
わたしはこそこそとアグリアスさんの毛布に潜り込みました。

「それっ、こちょこちょこちょー」
「ひっ!?あっわっ、ラムッ………な、エッエレーヌ!?」
「朝ですよー、こちょこちょ」
「こ、こら…あはははひゃ、やめ…!」
「ほらほらほら」
「わひゃひゃひゃひゃひゃ…やめろっ、苦し…ひ…」
「こちょこちょこちょこちょこちょ」
「き…貴様、おこっ……ひぃっ、あはははあひゃひゃ!」
「起きないとやめませんよー、こちょこちょ」
「く…あ、やめ……てへひゃひゃはははひぃ、い、息…がっ……ひひはひゃひゃ…たす…けっ」
「こちょこちょこちょこちょこちょ」
「あひゃひゃひゃひゃはゃひゃ…!お、おね……がっ」
「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」
「あははははははははははははははははは…………っ……」
「こちょこちょ…………あれ」
 まーた寝てしまいました、しょうがない人ですね。あ、そうだご飯作らないと。

 
 あれっ?アグリアスさんの上に数字が……。……しーらない。






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