氏作。Part12スレより。


「……ふむふむ、私は巨蟹1日生まれだから、相性が良いのは
天蠍のオルランドゥ伯、双魚のアリシア、ラファ、レーゼ殿か。
伯と相性が良いのはなんとなく嬉しいが、アリシアと相性が良いのは
当然だな。何しろ私たちは長い付き合いなのだし」
 宿の一室で、アグリアスは宿に借りた星座相性の本を開いていた。
夕食までの時間潰しに読むにはちょうど良い本に思えたのだ。隊の人間の
星座一覧も、前にラムザが作っていたものを借りて来てある。
「対して相性が悪いのは、天秤のムスタディオ、ベイオウーフ殿か。
 ムスタディオとは何となく気が合わないと思ったのはそのせいかな。
 ベイオウーフ殿は、そもそもレーゼ殿以外の女には見向きもされない
 から、私と相性が悪くても不思議はないが」
 折しも、アグリアスの部屋の窓の外を、レーゼの肩を抱いたベイオ
ウーフが通りすぎてゆくところだった。こちらは夕食までの時間を散
策にあてているらしい。
「それから、白羊も相性が悪くて……ボコと、ラヴィアン?」


 ちょうど夕食の準備ができたと告げに来たラヴィアンは、自分の名を
叫ばれたので、アグリアスのそばに寄って来た。そしてアグリアス
手にしている本を覗き込む。
「何かご用ですか? あら、星座相性を調べておられたんですね」
「いやその、ラヴィアン、私とお前は相性が悪かったのだな」
「あら、気付いておられなかったのですか? 私にかけるケアルの効きが
 悪いと悩んでおられた時に、星座相性のことを考えておられたのだとばかり」
「う、む……そのう、そこまでは考えていなくて。すまぬ」
「いえ、お気になさらないでください。それこそ、長いおつきあいですもの。
 わかっていますわ」
『何を』わかっているのか、聞くのは怖い。アグリアスは黙って次の項目の頁を繰った。


「磨羯の女性とは相性が最悪で、男性とは最高なのか」
「一番相性が良かったのはどなたとです?」
 磨羯のメンバーの名を見た瞬間に、アグリアスは自分の頬が紅潮したのがわかった。
「ど、どうやらラッドらしい。一緒に出撃した事がないから気付かなかった」
「ラッド? あら、誰か他にもラッドと同じ星座の人がいなかったかしら」
「そ、そうか? そうかな」
「確かに誰かと一緒だったような気がします。その表にはないのですか?」
「い、いや、その、そそ、そうだ、食事が出来たのだったな。早く行こう。
 この宿の料理は評判だというし。冷めたらまずいだろう」
アグリアス様…」



 ラヴィアンが、ラッドとラムザが同じ星座はずだと口にしなかったのは、
さすがに『わかっている』部下だけのことはあるのだった。


                        Fine